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ある日突然 ある親子の1週間  作者: 春原 恵志
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出発 みゆき

 みゆきは依然として校庭にいた。

 生徒はクラス別に集合したままで担任がそれぞれのクラス単位についている。かといって何か指示があるわけでもない。ただ、待機しろということと校舎内や寮には入室禁止と言うだけである。学校が言うには二次被害の恐れがあるということみたいだ。幸いその後、余震はなく、生徒たちも落ち着きを取り戻しつつあった。

 一人の男子生徒が担任に質問していた。

「先生。いつまでこうしてるんですか?」

「今、進藤先生が救助依頼をしている。もう少し待ちなさい」

「救助って、病院に連れて行ったほうが早いよ」

 生徒たちからだんだんと不満がでる。それにはみゆきも同意する。

 ただ、けが人も何名かいて、養護の先生が治療していた。それでも命にかかわるような大けがの生徒は居ないみたいだった。みゆきのスマホは依然としてつながらない。他の生徒たちも同じようだ。

 そういえば、お父さんとの電話が切れる前にかあさんがどうとか言っていたな。あれは何だったんだろう、確か、わかったことがある・・・とか言っていた、実際、何がわかったのか。それは気になる。

 そこへ若い先生、電話で連絡するように頼まれた進藤先生が戻って来た。若い割にはちょっと走っただけなのにゼイゼイしている。まったくこいつは運動不足だな。

「救急車を要請しましたが、市内も混乱していて、到着は、いつになるかわからないようです」

 これで生徒たちはいっせいに不満を述べる。

「えー、なんだよ。じゃあ、どうすりゃいいんだよ」

 みゆきは思う。だから、先生が病院に連れて行った方が早いのに。

 さて私はどうすればいいのか、寮にも学校にも入れないし、このまま校庭にいて何になるのか、意味がないと思う。気は乗らないけど結局はおとうさんの所に行くしかないのかもしれない。

 そんな中、ふと気がつく。周囲の天候がおかしい。さっきまでいい天気だったのに、天候不順なのか、まわりが急に暗くなってきた。それも急に変わって来た。夕焼けでもないのに空も赤くなってきた。そして、風が強くなってきたではないか。この天候の変化には他の生徒たちも気が付いたようで、

「なんか、雲行きが怪しくないか。雨でも降るのかな」

 すると、さらに風が強くなったと思ったら、それは風などというレベルではなかった。唐突に強風が襲ってきた。これには生徒たちが悲鳴をあげる。いまや台風なみの暴風がふきだした。今までも台風を経験したことはないけど、これは爆風に近い気がする。

 みゆきは飛ばされる。さらに色々なものが風と一緒に飛んでくる。

 生徒たちから悲鳴が上がる。とにかく逃げようと、みゆきは校庭から雨風をしのげそうな場所を探す。校庭わきにクラブの部室棟がある。20m以上の長さで鉄筋で作られており、風をしのぐことは出来そうだ。

 今や校庭は大騒ぎである。みんながいっせいに逃げ出す。風による落下物も多く、生徒たちに激突している。悲鳴が至る所からあがっている。みゆきは風に逆らいながら這うようにしてようやく、部室わきに隠れることができた。

 そこには何人かの生徒が同じように逃げてきていた。みんな九死に一生という感じで、話あっている。

「どうなってるんだ。何がどうなってるんだよ」

 血相を変えて男の子が叫んでいる。まさにパニックだ。みんなが口々に騒ぎ立てている。

 確かに地震で、こんなことになるのは聞いたことがない。もっとも今までこれほど、大きな地震にあったこともないが、東日本地震の時にも同じようなことがあったとは聞いていない。でも、ひょっとすると地震の後に嵐が起こるものなのかもしれない。

 強風に飛ばされたいろいろなものが降ってきて、さらにけがをした生徒が出たみたいだ。

 地震の被害よりも、強風の被害の方がひどいみたいで、校庭はガレキの山となっている。

 この嵐は数分で終わったが、天候は変わらず、雲行きは怪しい。いつ、再び、嵐が来るのか分からない状況に思えた。このまま、ここにいても仕方がない。ついにみゆきは決心した。おとうさんの所に行こう。

 それで付近にいる先生、生徒に気づかれないように、逃げることにした。

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