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ある日突然 ある親子の1週間  作者: 春原 恵志
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大和田信一郎 如月

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午後になって、大和田信一郎が大阪分室に到着した。

伊豆から静岡空港までは警察がパトカーで護衛し、専用機で関空から分室まで来てもらった。

分室に入る大和田氏は78歳だがしっかりとした足取りだった。白髪ではあるが髪もしっかりとあり、歳を感じさせない相変わらずのかくしゃくぶりだった。

如月が握手で迎える。

「大和田さん、お久しぶりです」

「ああ、如月君だったっけ、久しぶりだな」

「はい、また、今回は難役を引き受けて頂き、誠にありがとうございます」

「うん、どこまでやれるか、自信はないがやれるだけはやってみるよ」

「会議室をお取りしましたので、そちらで打ち合わせをお願いします」

「わかった」

会議室には大和田とその秘書である中村氏、分室側は如月と総務課長の坂本、広報担当の阿部が同席した。橘は別件で出かけていた。如月が話す。

「今朝ほど、2回目の震災が起こりました」

「そうらしいな。私はその時間ちょうど飛行機に乗っていたんだ」

「今までとは規模も現象も異なるみたいで、我々も訳が分からない状態です」

「今日の首相就任の際に記者会見もやる手はずだよな。その震災についてもなんらかのコメントがいる」

「はい、わかります。夕刻までに情報をまとめて、あらためて、ご相談させていただきます」

「そうだな。なるべく早めにしてくれ。歳とともに物覚えが悪くなってな。実際、80近いと記憶自体が衰えてくる。認知症の一歩手前だよ」

大和田氏は笑顔で冗談なのか、本気なのか分からない話をする。

「ご家族のほうは、どうなんでしょうか?」

「うん、家内は私と同居していたので助かったが、子供たちは都内にいたので残念だが、期待薄だ。救助も出来ない状態らしいな」

「はい、救助をおこなっていた自衛隊や警察も今回の2回目の震災でさらに被害が出たものと思われます」

「まったくとんでもない事態だな。ここまでの被害は戦争でもなかった。1千万人近くの人間が一瞬にして亡くなるなんて・・・」

 大和田は沈痛な面持ちで顔をしかめる。

「本日の会見用に分かる範囲で数字類はまとめます」

「そうしてくれ。あと、新政府の組閣と今後の進め方だが、今の日本の政党で東京以外に本部があるのは維新ぐらいで、残りはみんな東京だ。みんな無くなってしまった。選挙をやろうにも体制が取れない。その辺の仕組みも新しく考え直してくれ。今までの選挙制度を見直すいい機会だ。議会運営も衆参などといった固定観念を捨てて、新たに考えてもいいかもしれない」

「わかりました。有識者も交えて抜本的に草案を考えてみます」

「それからな、組閣候補の人選を見たが、あれではだめだ」

「はい、どのへんでしょうか?」

「はっきりいうが、もう政治家はいらん。民間から有能な人材を選んでくれ、歳は関係ない。男女も関係ない。とにかく新しいアイデアが必要だ。固定観念にとらわれない。行動力のある人を選んでくれ」

「はい、再考します」

「もう、過去の政治家は死に絶えたんだ。今までの固定観念を捨てようじゃないか」

「はい、了解しました」

大和田の言葉に如月の目が燃えている。

「太平洋戦争後は米国主体で骨組みを作ったが、今度こそ日本主体で新たな政治や社会の骨組みを作りたい」

大和田氏はボケてはいない。如月は確信した。

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― 新着の感想 ―
大和田氏、カッコいいです。現実にもこんな政治家が居たらいいですね。
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