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ある日突然 ある親子の1週間  作者: 春原 恵志
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臨時政府 橘

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 如月は臨時政府設立のために奮闘していた。

 これまでも内閣府政策統括官という役職の指示では動けないという官公庁も多く、超法規的な処置であるという説明をすることで、なんとか作業を進めてもらっていた。如月にはその交渉で無駄な時間を要することが我慢ならない状況だった。時間勝負の状況なのに歯がゆくて仕方なかった。

 とにかく、まずは総理大臣を擁立して臨時政府を作らないと話にならない。

 また、こういった状況での総理大臣となると絶対的な国民の支持があり、カリスマ性を持った人物でないとならない。如月は80歳近いが首相経験もあり、いまだに人気の高い大和田浩一郎に候補を絞り、秘密裏に打診を続けていた。

 大和田は高齢とのことで当初は難色を示していたが、未曾有の国難ということで、なんとか出馬の確認を取り、いよいよ、臨時政府発足の最終段階を迎えることが出来た。

 本日、夜にその大和田総理大臣が国民に向かって、就任演説をすることとなった。


 その作業が一段落した段階で如月は休憩室でたたずんでいた。見るからに疲労困憊で睡眠不足の顔をしていた。目のクマがものすごいことになっている。そこに橘も休憩室に来た。橘も同じような顔をしている。熊が二匹いる。

「如月さん、お疲れ様でした。なんとかなりそうですね」

「ああ、なんとかなったよ。さすが大和田さんだ。今の日本を憂いてくれていたよ。二つ返事で了解してくれた。組閣についてはこちらから候補を出して大和田さんが選定してくれることになった」

「そうですか、大和田さんはたしかリタイヤされて伊豆のほうにおられたのですよね」

「そうだ。それで助かった。伊豆はなんとか持ちこたえていたからな」

「今晩、新総理大臣の発表でしたか?」

「うん、とにかく、急いで日本健在ということを国内外に示さないと、国民に不安が募っているからな」

「東京、いや関東がなくなってますから、いまだに本当の話とは思えないです」

「俺もそうなんだ。あえて考えないようにしているところもある」

「被害状況を確認するのにどのくらい時間がかかるのか・・・・」

「状況確認だけで一カ月はかかるだろう、それを集計する人間もいない。まあ、とにかく一歩,一歩だな。間違いなく俺たちの時代では復興は終わらない」

「そうですね」

「原因については、相変わらず不明のようだな」

「地震の要因も不明でしたが、今回の地すべりなどはまったく信じられない現象なんで、専門家も匙を投げている状態です」

「そうらしいな。しかし、なぜ日本なんだろうな。有史以来最悪の被害だよ。ここまでの仕打ちを受ける理由が知りたいぐらいだ」

「はい。確かにひどすぎます」

「ああ、すまない。弱音を吐いてる暇はないな。俺は今日の首相演説の草案を確認してくる」

「はい」

 如月は職場に戻って行く。疲弊する暇もないということか。


 そんななか、橘は娘のことも気になっていたが、留守番サービスでの短いコメントだけでは、まったく状況が分からずじまいだった。仕事をしながら、娘からの連絡を待っていたところ、ようやく、携帯に着信があった。公衆電話からのようだった。

「もしもし、お父さん」

 声を聴いてほっとしたのと、今までの積もり積もった感情が爆発した。

「みゆき、お前、どういうつもりなんだ。父さんがどれほど、心配したのか、」

「ごめん。いま、公衆電話からなんで、あまり話せないけど。そっちにむかってるから」

「お前、携帯はどうしたんだ。まったくつながらないぞ」

「落としたんだよ。詳しいことは会ってから話すから、とにかく心配しないで」

「心配しないでって、お前、今どこにいるんだ」

「今?ああ、淵さん、今どこ、え、多治見?多治見だって」

「多治見って、今、誰と話をしたんだ」

「あ、もう切れる。じゃあね、心配しないで」

 電話が切れた。

 多治見って岐阜の多治見か。あいつ、何をやってるんだ。誰かと一緒にいるみたいだけど。増々、橘の心配の種が増え続けている

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