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ある日突然 ある親子の1週間  作者: 春原 恵志
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悪魔の所業 橘

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 新たな厄災の被害は徐々に明らかになる。地すべりだけではなかった。なんと上空の飛行体に対しても吸引現象を起こしており、多くの飛行体が墜落していた。

 被害の全貌は未だに明らかに出来ていないが、東京都心から離れた関東地方全域で相当数の死者数および建造物の倒壊が起きてしまっていた。

 臨時政府の対応部署である内閣府では、とりあえず原因究明を急ぐ必要性があった。前回の震災の理由も良くわからない状況での対応となり、如何に対処すべきかが全く分からなかったが、打てる手もなく引き続き京大の北沢教授に調査依頼を行うしかなかった。

 今も橘と清水がオンラインで北沢教授と話をしている。清水が話をする。

「北沢先生、先ほど画像を送らせていただきましたが、何かご意見はありますか?」

 オンラインに映った北沢教授はさかんに首をひねる。教授もお手上げと言ったところのようだ。

「いや、びっくりやね。こんなのは見たこともない。通常、地震の後に地すべりが起こることはあるんやけど、今回は地すべりが先に起きてる。いったいなんやろね」

「先生。これほどの広範囲で地すべりが起きることはあるのですか?」

「いや、聞いたことないね、可能性として数キロ単位では発生するかもしれへんが、これは規模が違う。ひとつわかることは画像から分析したんやけど、まず、この現象の中心は震源地と同じところや、これも、自然現象とは思えん理由やね。たぶん、まったく同じ位置やと思う」

「ということは、それこそ新型爆弾でしょうか?」

「うーーん専門外やけど、これは作れんやろ、無理や、絶対に、爆発じゃないし、ここまで広範囲での兵器なんて誰が作れるんや」

「そうですか・・・北沢教授のお知り合いでこういった事象の専門家をご存じないですか?」

「ああ、申し訳ないけど、これを解明できる人間はおらへんのじゃないか?まあ、海外にも知り合いはおるんで情報は流してみるけど。あとね、今回の地すべりは完全な円を描いてる」

「どういうことですか?」

「お台場を中心とした完全な円形で被害が起きとる。まるでコンパスで書いたみたいや」

 この北沢教授の指摘については内閣府の中でも同じ意見が出ていた。まさに完全な円形で発生していた現象だった。

「それこそ、人為的なものじゃないんですか?」

「いや、自然現象にも円を描くものはあるよ。しかし、これは円というか球なのかもしれへん」

「地下で球体の事象が発生したということでしょうか?」

「そやね。どうやって検証したらええのか、考えてはみる」

「了解しました。こちらは機密事項ではないので、情報は世界各国どこに流してもらっても構いません。よろしくお願いします」

「わかった。国内外の知人に情報をながしてみるわ。ちょっと待っとってな」

「よろしくお願いします」

 オンラインを閉じる。橘が聞く。

「清水さん、あなたのほうで他に当たれる人材はいるかな?」

「いやあ、私も北沢先生と同じです。国内にはこれがわかる人はいないと思います。世界的にみてもどうなのかとも思います」

「八方ふさがりか。どうしようもないな。安達君にも意見を聞くか」


 橘は兵器の専門家である安達と打ち合わせをすることにした。安達に内容の確認と分析を依頼した。

 そして2時間後、会議室に清水、安達を交えて画像を見ながら検討会をおこなった。

「もう一度、画像を確認しよう。何度も見てもらって申し訳ないが」

「いえ、大丈夫です」

 橘が衛星画像を最初から再生する。

 小会議室のモニターに画像が流れる。まずは前回の厄災以降の画像である。お台場を中心に東京湾が広くなっているのがわかる。都内は建物が倒壊しており、ガレキの山と化している。

 すると、いきなり広範囲で東京都全体、概ね50~60km圏内でお台場を中心に円を描くように変化が起こる。それはまるで巨大なシャボン玉がいきなり現れ、次の瞬間に割れて無くなるようにも見える。それが60㎞圏内で発生している。そしてその次に地崩れが発生する。お台場を中心とするので、海水が流れ込む形で海が広がっていく。周辺は霞のように煙っている。海の広がりは徐々に進行していく形になる。海が陸地を侵食していく。そしてその侵食自体はゆっくり進んでいる。

「まるでアニメーションですね。実際に起きたこととは思えない」

 清水が率直な印象を話す。しかし、まさにその通りでこれほどの広範囲での現象が瞬時に起こるとそう見えてしまう。清水が続ける。

「やはり震源地に何かがあったのではないでしょうか?」

「そうだな。そうとしか思えない。そいつが反応した。そんな感じだ。何か思いつくものはないか?」

「私が知る限り、こんなことは経験もないし、過去にもなかったと思います」

 橘は先程から真剣な表情で画面を見ている安達に聞く。

「安達君はどうだい?」

「こんな兵器はありえませんよ。爆発現象ではないです。むしろ広範囲に吸引しているみたいに見えます」

「そうだな。なんだろう?」

「物理学的にもこんな現象が起きえるんですかね」

「原因不明か・・・・」

 ここで安達が苦渋の表情で話しだす。

「こんなことが出来るとすれば、それは悪魔の仕業です。人間が出来ることではないです」

「同感だ。こんなこと行為としても人間の出来ることじゃない」

 三人共黙り込む。橘が言う。

「ひとまず、この件は棚上げするしかない。ただ、ここまでの惨事となると日本全体のさらなる政情不安が気になる。もう、すでに収拾がつかない地域もあると聞いている」

「治安維持をしようにも出来る部隊が存在しませんからね」

「そうだな。なんとかしないと」

 とりあえず、原因究明は専門家に期待することにし、政情不安を払拭すべく橘らは臨時政府の組閣作業を優先することにした。


 夕方になって橘が休憩室に行く。そこには手にコーヒーカップを持った安達もいた。

「安達君、お疲れ」

「はい、お疲れ様です」

 橘はベンディングマシンのレギュラーコーヒーのボタンを押す。

「一体、どうなってるんだろうな」

「同感です。訳が分かりません」

「うん、先ほどの安達さんが言った悪魔の所業って話、なんか一番信ぴょう性がある気がする」

「はい、恐ろしいです」安達の表情は若干青ざめてもいる。

「話は変わるけど、君の実績だと自衛隊以外にも選択肢はたくさんあっただろう?」

「そうですね。日本にもそういった軍事の先端技術を必要としている分野はたくさんありました」

 橘はマシンからコーヒーカップを取り、飲みながら話す。

「何か理由があるのかい?」

「兵器というものに嫌気がさしたというところでしょうか?」

「うん」橘はなるほどと思う。

「兵器って簡単にいうと殺傷行為ですよね。そういったものを開発していることが怖くなったというか、納得できなくなったんです。特に近年、無人攻撃機がもう実用化されている。実は開発現場ではもっと進んでいるんです。企業ですから開発競争もあり、敵国よりもさらに上をいく必要がある。核兵器についても秘密裏に開発は進んでいます。そういったことに嫌気がさしたというところです」

「わかる気がする。どこまで行くのかね。止めどないね」

「そうは言っても自衛隊も軍隊ですから、自分がまったく手を引いたというところでもないのですが、間違っても戦争なんてしないようにはしたいです」

「全く同感だ。今回の厄災がそういったものでないことを切望するね」

「はい。そう思います」

 悪魔の所業、するとその悪魔はどこにいるのか、そういったことをだれが出来るのだろうか。

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