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ある日突然 ある親子の1週間  作者: 春原 恵志
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北沢教授 橘

。13 

内閣府で全体会議が行われたその日の夕方になって、地震の専門家として京大地震災害研究センターの北沢教授からの暫定調査報告が出てきた。橘と清水は早速、オンラインで北沢教授と話をした。

パソコンの画面で見る北沢教授は50歳ぐらいで、およそ研究者然としていない。関西弁を使いどこかのサラリーマン、中間管理職のような雰囲気である。専門的な話でもあり、面識のある気象庁の清水が話を切り出す。

「北沢教授。今日はよろしくお願いします」

「はい、こちらこそ」

「そちらの被害状況はどうですか?」

「京都は高層建築もないからね。神社仏閣は木造建築やから、地震には強いみたいやね。歴史がそれを証明してるやろ。千年前の建物が今も現存してる」

「たしかにそうですね。そちらの震度も5程度だったのですか?」

「そやね。研究所の地震計は震度5弱やった」

「早速ですが、現在までの調査報告をお願いします」

教授の顔が曇る。

「うーん、それやけど、何て言うたらええのかな。簡単に言うと地震とは思えへんのよ。振動の分析結果からも地震の振動とは違うんや。地震の場合、まずP波が発生して、まあ、それにより地震の短期予知が可能になるんやけど。それが今回はまったく無いんですよ」

「どういうことですか?」

「地震の振動はね、まず、初期微動が発生し、その後、主揺動が起きるんですよ。地震が来る前に微妙な揺れを感じるやろ?その後どかんと来る」

「そうですね。確かに前触れみたいなものを感じますね」

「今回それがなく、いきなり主揺動が起きとる」

「どういうことですか」

「考えられる中で一番近いのは、隕石の落下やな」

「隕石ですか?そんな大きな衝撃を発生させることが出来るんですか?」

「ああ、1908年にロシアで隕石落下が起きてるんやけど。ツングースカ大爆発って聞いたことあるかな。これは大気中で隕石が爆破して、地震が記録されたんやけど。ただ、これと比較しても今回ほどの大規模になると過去に例がないね」

「そんな巨大な隕石であれば、落下する際に観測可能ではないですか」

「そのとおりなんや。少なくとも大気圏の突入時点ではなんらかの軌跡があるはずなんや。それが全く観測されとらへん」

「震源地に痕跡はあったのですか?」

「震源地はお台場辺りになるね。あと、爆風の中心地も同じ箇所やから、隕石落下を疑ったんや。痕跡があるかどうかは海底を調べるしかないね」

「ほかに考えられる要因はありますか?」

「過去になかったまったく新しい自然現象かな。有史以来起こってなかった現象が今回、初めて発生したということかな。前振りなしにいきなり噴火と地震が起こったとかね。まあ、これはありえへんと思う、確率としては低いものやろうけど。また、可能性でいえば、近いのは核爆発かな。地下核実験。それも相当大きな核爆弾を使えば似たような状況になるかもしれへんな。もっとも、これは放射能が発生するから、現在のところ、そういった痕跡はあれへんから、違うと思うけど」

「そうですか・・・」

橘も何を聞いていいのかさえわからない。教授が話を続ける。

「あとね、不思議なのは、現地に設置されていた地震計の類から、情報が取れてないことなんや。地震の衝撃で破壊されたのは間違いないんやけど、今の地震計は通信機能を持ってるからね。破壊前に短時間でも何らかの信号検出がされてないとおかしいんや、それがまったくないんやね」

「どういうことでしょうか?」

「わからへんな。官民あわせて、都内にたくさんの地震計があるけど、全部信号が取れてへんらしい。今回の調査結果もちょっと離れた場所にあった地震計からのデータになるんや」

3人共、黙ってしまう。橘が思い出したように話をする。

「わかりました。今後はどういった調査になるんでしょうか?」

「先ほどの東京湾の調査が最優先やね。正確な位置はこっちから教えられるけど、潜水できるかね」

「わかりました。当たってみます。北沢先生、隕石の可能性もあるとのことでしたので、そう言った分野での専門家をご存じないですか?」

「隕石か・・・東京大学の先生がそういった研究されとったな、東京やから生存は厳しいかもな。そうや、阪大の寺沢先生が隕石の研究やってはったかもしれんな。面識がないんで紹介はできへんけど」

「わかりました。どうもありがとうございました」


オンライン会議後、清水と橘が話をする。

「やはり、教授も清水さんの話と同じ結果だったね」

「ますます、謎が深まります」

「地震計からデータが取れなかったのはなんでだろう?」

「これは推測ですが、地震発生から機器が破壊される時間が極端に短かったのではないかと思います。つまり、測定する時間がまったく取れなかったということです」

「なるほど、そういうことか。でもそんなことあるのかい?」

「普通はありえませんね」

「あと、海底の探査となると、どこが出来るんだろう?」

「自衛隊か、海上保安庁か、海底になると民間の調査機関になるのかな?私も知見がないですね」

「そうですか?気象庁は管轄外ですか?」

「そうです。気象に関係ないので」

「そういや、そうだな。色々当たるしかないな」

「寺沢先生は私が当たってみますね」

「はい、よろしく頼みます」

橘の仕事は盛りだくさんである。



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