第一プレイヤー発見
「すみませーん!って何この地獄絵図!?」
声のする方向には一人の少女がいた。
「あ!もしかしてプレイヤーさんですか?」
この状況で普通に声をかけてくるあたり頭のおかしいタイプのゲーマーだろう。
「この状況すごいですねー。一人でやったんです?てかっめっちゃキャラ可愛い!」
「プレイヤーだよ。キャラかわいいでしょ?自信作なの」
キャラクリを褒められて少しいい気分になる。
容姿を褒められて喜ぶ女の子の気持ちってこんな感じなんだろうな。
「ペナルティとかないんですか?経験値とかはどのくらいなんですか?」
「ペナルティは今んとこわからない。経験値は今確認するからちょっと待って」
LV 16
STR 40
VIT 9
AGI 104
DEX 83
INT 36
RST 17
LUC 26
BUFF:殺人衝動Ⅱ 名声Ⅰ
『・殺人衝動
レベルに応じて 人型特攻+5% 評判-5
*人を殺すたびに人殺しが上手くなっていく』
『・名声
レベルに応じて 評判+5
*善きことをした報酬』
「んーと経験値はレベル16上がってるから美味しそう。ただ悪評ってデバフがペナみたい」
「なるほどぉ。NPC狩りで経験値稼ぐのもありかな?あとドロップとかってどうなってるんです?」
「割とありなんじゃない?ただこういう感じのポップポイントがどのくらいあって、どのくらいで復活するのかってのが問題。ドロップ品は死体残ってるから多分直接ルートだと思う」
「おぉいい情報ゲットだぜ。ってかあれ漁るんですか……」
男の懐漁るだけでも嫌なのにそれに血みどろというトッピングが乗っている。
「そういえばNPCキラーって殺すとなんかあります?」
「こいつら多分敵モブ判定だから賞金システムとかあっても、今の俺にはかかってないと思うぞ?強いてメリットあげるなら経験値くらい?」
「うっわしょぼくね?」
「それよりドロップアイテム半分あげるから漁るの手伝ってくんね?」
少女の顔がすごいことになる。
きっと彼女の中では汚いものを触る不快感ともらえるアイテムを天秤にかけているのだろう。
「うーん手伝いますからいいのくださいね?」
◇
鉄の剣x2を手に入れた!
ボロい弓を手に入れた!
鉄の矢x10を手に入れた!
安価な魔導書を手に入れた!
皮の胸当てを手に入れた!
皮のズボンを手に入れた!
ローブを手に入れた!
17000Gを手に入れた!
頭の中でそんなログが流れる。
収穫としてはなかなかではないだろうか?
「戦闘せずにこの戦利品。おいしいです〜」
「まぁ剥ぎ取るのとか超めんどかったけどね」
アイテムを収集し終えるのに10分くらいかかった。
「そのうち解体だけしかしない解体寄生とか生まれそうですね」
「キャンプ待機勢の次の居場所はここだったか……」
世界中の子供たちよどうかそうはならないでくれ。
まぁこのゲーム18歳以上向けだから子供いないんだけど。
「んじゃ分配どうしよっか。お金は半分にするとしてなんか欲しい武器とかある?」
「剣欲しい剣!二刀流したい!スターバーストしたい!」
わかる。とりあえず憧れるよね。
「んじゃさっき使ってた剣とこの剣あげる。他になんかいる?」
血塗れの剣とボロい剣を渡す。どっちもひでぇなこれ。
「うーんプレイヤーさんは防具とかいらないんですか?っていうか名前なんですか?」
「ステ振りの時耐久捨てたから辛くなるまではいらないかな。それに可愛くないし。名前は……そういえばキャラ作成の時名前決めた?」
「やったー!防具だー!でもちょっと汗臭そう……。そういえば決めてませんね……何にしようかな……?」
「あ、けどローブおしゃれだからローブ欲しい。名前は適当に付けていいよ」
「ん〜じゃあルリザクロちゃんで。あ、じゃ私にも名前つけてよ」
「えぇー。シフォンとか?」
「シフォン……シフォン……。ちなみに理由は?」
「今食べたいから。軽めのクリーム乗せたやつを食べたい」
「わお適当。んでもそれでいいや」
いいのか。
「んじゃシフォンさんさいなら」
「名付けからの別れはや!」
「だって狩り行きたいやん?」
「なるほどね?私も行きたい」
シフォンも同じこと考えていた。るい友ってやつだろうか?
「あ、それならパーティー組みせん?」
「ちなみに何レベル?」
「3」
「え、やだ」
「なんで!?ひどい><」
「だってレベル低いじゃん……」
「たしかに。あ、でもでもさっきみたいにルート手伝えますよ!」
「貴様解体規制になるつもりか!?」
「ほらほらぁさっきみたいな作業を一人でやると効率落ちますよ〜?」
「ぐぬぬ……」
しぶしぶパーティーを組んだ。
■
そんなこんなでさっきみたいな洞窟を探している道中。
「そういえばクッキー食べた?」
「クッキー?初期アイテムのやつです?」
「そそ。折り菓子のクッキーみたいでおいしいよ」
「まじですか」
シフォンは早速クッキを取り出して食べている。
「ふぉんとでふねーふぉんびにのうへのほうにある……んくクッキーの味がしますー」
「咀嚼して飲み込むのに何となくエロスを感じるけど食べながら話すのはやめようね」
「ふぁーい」
たぶん聞いてないんだろう。
「はーおいしかった」
「それはよかった」
満面の笑みを浮かべるシフォンに癒される。これがたとえネカマであっても癒される。
むしろネカマの方が癒されるまである。
「それより、咀嚼して飲み込むののどこがエロいんです?」
いらんところだけバッチリ聞いてたみたい。
「んくとかいうおととか喉の動き」
「わーおあぶのーまーる。ってあそこなんかありません?」
「ほんとだ」
距離にして300メートルほど先に少し大きな洞窟が見える。
慎重に近づいて入り口の周りを確認する。
「さっきのやつと違ってなんか鉱山の入り口っぽいね」
「たしかに……ってそこみてくださいよ」
シフォンが指差す方向には石板のようなものがあった。
「なんだこれ?」
試しにペタペタと触れてみる。
すると目の前にインターフェースが浮かび上がってくる。
『TIPS ダンジョンについて
ダンジョンに挑戦する際、入り口付近の石板に触れることでインスタンスダンジョンを生成できる。
触れずにそのまま入った場合はパブリックダンジョンとなる』
『・枯れた鉱山 推奨レベル8〜20
ルームを作成しますか? YES NO 』
「あーこのゲームダンジョンで鍵部屋作れるんですね」
「っぽい。横殴り気にしないでいいってのはでかいかも」
「そもそもこのゲーム横あるんですかね?」
「さぁ?とりあえず鍵つけずに入ってみようぜ」
「りょーかい」
『*用語解説
・横殴り
モンスターと戦っている最中に、自分とは仲間でもない無関係の人がそのモンスターに攻撃する事。
EXPやドロップアイテムの分配システム等の関係で、狩り効率の低下や、気分的な問題でトラブルになりやすい。
・インスタンスダンジョン
パーティーごとに生成されるダンジョン。
狩場の被りがなくなったりするメリットがある』
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