初戦闘
何度か経験した感覚を味わう。
シーンチェンジやエリアチェンジのときのロードみたいなものなんだろう。
目を開ける。
強い日差しで少し目が眩む。こんな感覚も再現しているのかと少し感心してしまう。
まず最初に見えたものは噴水だった。
大きな噴水。これが外国の観光地なんだよと言われても気づかないほど立派な噴水。
そしてそれにぴったりの異国の街並み。
肌に感じる空気と聞こえてくる喧騒が自分が知らない場所に来たんだとわからせる。
どうやら俺は街の広場的な場所にスポーンしたようだ。
ちらほらと他のプレイヤーがいるのがわかる。たぶんキョロキョロしてるやつがプレイヤーだろう。
まだログインしている人は少ないらしく、人の量はまちまちだ。
大量にインしてくる前に広場を離れる。
広場から離れるとチュートリアルウィンドウが出てくる。
チュートリアルではメニューの出し方やアイテムの装備の仕方といった初歩的なものから、街や周辺の情報などの攻略に必要な情報を教えてくれた。
ウィンドウを閉じてこれからやることを整理する。
とりあえず外に出て狩りだろうか?
フィールドに向かいながら持っているアイテムを確認する。
まず、身につけている装備は、鉄の短剣と麻の衣服、皮の靴のみ。
『・鉄の短剣
STR3 DEX5
*鉄でできた短剣。刃はついているが切れ味は悪い』
『・麻の衣服
VIT1
*麻でできた衣服』
『・皮の靴<br />
AGI3
*皮でできた靴。靴底が薄く耐久性がない』
持っていたアイテムは傷薬x5 クッキーx5 水x5。
『・傷薬
300HPを60秒かけて回復
*薬草を潰しただけの簡易的な傷薬』
『・クッキー
食糧ゲージを20回復
*袋に入ったタイプのクッキー。1袋5枚入り』
『・水
水分ゲージを20回復
*少しカルキくさい水道水』
傷薬はHPリジェネでクッキーと水は食料品だろう。
食糧ゲージと水ゲージは一定値を下回るとダメージと最大HPにデバフがかかる仕様らしい。
逆に良好な状態を維持し続けるとMPリジェネバフや各種耐性がつく。
ただし食べすぎるとデブる。なかなかに現実志向なようだ。
食糧水分ゲージともに最大値は100で、何もしていなくても食糧は1時間に10%、水は1時間に30%ずつ減るらしい。無論行動をしていると減りは早くなる。
こまめな水分補給と適度な食事を要求される健康志向なゲームだ。
装備類はステータスがどういう風に関わってくるかがわからないので、今のところなんとも言えない。
クッキーを出してみる。
巾着袋みたいなのに5枚くらい入っている。試しに一つ食べてみる。
コンビニのクッキーというよりはかんかんに入ったお高めのクッキーって感じがする。
甘くて美味しいけど口がパサパサになるあのクッキーだ。
アイスティーが欲しくなる。
そんなこんなでフィールドに出る。
ひとつ食べたクッキーの袋は再びアイテムポーチに入れた。耐久値制の食料品のようだ。
見渡す限りに草が生い茂る草原。
少し遠くの方を見れば、序盤の雑魚敵の定番種スライムやツノの生えたウサギたちが闊歩している。
すでにフィールドにたどり着いて狩りをしている人たちもいるようで、そこらじゅうから雄叫びやら悲鳴やらが聞こえてくる。
たぶんこの辺りが街を出てすぐの狩場なのだろう。
だが、俺はあえてここを無視し奥へ進む。
少し歩くと右上に赤いマークと共に『適正レベル以上のフィールドです』と出てくる。
なるほど、確かにさっきまでいた場所とは雰囲気が少し違う。
最初の平原は明るい雰囲気だったが、ここは少しじめっとしていて、薄暗い。
辺りに注意しながら進んでいく。
途中、赤色のスライムや動くキノコなどを見けてたが距離が遠くてすぐ見失ってしまった。
またいないかと目を凝らして辺りを見ると、洞窟を発見する。
外見はいかにも洞窟といった様子。
入り口には丸石がかまくらのように丸く積み上げられていて、その真ん中に出入り口のような穴がある。
近づいて少し耳を傾けると中から話し声のようなものが聞こえる。
内容は聞き取れないが、声から察するに中にいるのは4人。
少し体を出して入り口を覗く。
思った通り中にいたは4人で、大柄な男が2人に細身の男が2人。
風貌は小汚く、見るからに見方ではない印象。
もしかしたら味方NPCかもという心配もあるが、とりあえず攻撃を仕掛けてみることにした。
あたりで2、3個小石を拾って洞窟内に投げ込む。
「うわ、なんだ!?」
「ぐぇ!」
中の男たちが怯んでいる隙に中に駆け込む。
最初に目についた男に向かって体が動く。
怯んでいる男の懐に潜り込み首に手を回す。
ガッチリと掴み逆上がりの要領で飛び上がる。
グギィっと骨のねじれる音がなる。いくら巨漢の首でも人一人分の体重の力が加わった捻りには耐えられなかったようだ。
男の首は子供の遊んだ後のソフビ人形ののようにあらぬ方向にねじれていた。
そして男の腰にぶら下がっていたブロードソードを引き抜く。
周囲を確認する。
残りの人数は3人。
味方の武器に当たらないような間合いで包囲されている。
言葉はない。
威嚇するような大声も糾弾するような声も。
殺意。ただの殺意。
ただ純粋なる殺し合い。威嚇や駆け引きは必要ない本能の領域。
誰かの汗の落ちる音。
号令など必要ない。その微かな音が始まりの合図となる。
飛びかかってくる者。
弓を引く者、何かを唱える者。
様々な方法で殺しに来る。
奇声とともに飛びかかってくる者の胸元に剣を刺し弓矢への盾とする。
男の胸から矢が3本生える。あの一瞬で3本も射ったのかと驚く。
男を盾にしていなかったら死んでいただろう。
背筋がヒヤリとする。
この体で人一人を持ち上げられるのは、ステータスによる補正なんだろう。
そう分析しながら弓使いを持っていた死体ごと剣で突き刺す。
何かを唱えていた男が『ファイアアロー』と叫ぶ。
魔法。
現実にはない法則。空想上の法則。
どこからともなく現れた火の矢はさっきの弓矢以上の速度で俺に向かってくる。
首を捻って避けると魔法使いの顔が絶望に染まる。
シューターゲームでも同じだが頭っていうのは狙われやすい。狙うだけの価値があるからだ。
それゆえ予測しやすいし外しやすい。
だからよほど自信でもない限り初弾は胴体に向けることが多い。
この魔法使いは自信があったのかそれとも素人なのか。
それはどうでも良いことだ。
腰に刺さっていたナイフを魔法使いに向かって投げる。
狙うのは頭ではなく胴体。
狙いは命中。真っ直ぐ飛んだナイフが魔法使いの腹に深々と突き刺さる。
「ぐあぁ!!」
悲鳴をあげている隙に落ちていた矢を魔法使いの顔に突き刺す。
断末魔とともに激しい痙攣。
改めて部屋を見渡す。
首があらぬ方向に曲がった男、二人重なって剣が刺さっている死体、頭を矢が貫通している死体。
息をしているものはいないが、念のためにもう一度づつ剣で刺していく。
地味に二人を串刺しにした剣を引く抜くのが大変だった。
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