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キャラ作成

カーテンを閉め切って暗くなった部屋の中。

 PCの発光とモニターの明かりで微かに部屋の内装が見える。

 棚にはゲームソフトのパッケージやらがびっしりと飾られている。

 床に散らばったゴミに壁際に飾られた萌え萌えしいグッズ。まごうことなきオタク部屋。

 積み上げられたカップ麺の空箱とエナジードリンクの缶がこれまでの戦いの厳しさを物語っている。


 数多のゲームを一緒にやってきた歴戦の戦友の座椅子に座る。中の綿が潰れ切っていて床と硬さがあまり変わらないけど一応座る。気持ちが違うのだ。


 PCの電源をつけて今回のゲームの情報を漁る。

 世界初のフルダイブMMORPG『Incomplete Hero』。

 フルダイブ技術が世界に発表されてから約3年。

 当初は筐体の値段が高く生産数も安定していなかったため、病院といった施設にしか設置されていなかったが、2年前日本のインディー企業の夢のおもちゃ箱が個人向けフルダイブデバイスの『Dream helmet』を発表。

 発表当初の価格は30万円。


 個人向けにしては高額。しかしフルダイブデバイスと見れば当時の平均価格の1000/1以下の価格。

 そんな破格の値段に当初のネットはお祭り騒ぎ。

 詐欺だというものもいれば、これは神からの授けものだというものまで出始めた。

 しかし発表翌日のデバイスお披露目放送をみて黙らずにはいられなかった。


 そんなこんなで初回生産分の10万台は即日売り切れ。生産分を5万台追加するも一瞬で売り切れた。

 そんな夢のデバイスと言えるDream helmetのローンチタイトルがIncomplete Heroである。

 タイトルを翻訳すると不完全な英雄。


 王道のファンタジーにSF要素を加えた世界観が舞台のオンラインゲーム。

 キャッチコピーは『オンラインゲーム全盛期の熱狂を再び』。

 もはやキャッチコピーだけでご飯が食べられるくらいの惹きがある。

 あの血の滾る時代が再びくると考えるだけで興奮する。


 だが、現状判明しているのはこのキャッチコピーと世界観くらいでそれ以外の情報は全くない。

 だけどそれもあと数分で終わりを迎える。

 7月2日12時。あと数分で迎えるこの時刻はIncomplete Heroサービス開始時刻を表していた。


 長年満たされなかった乾き。それを満たしてくれるものを求めて。

 Dream helmetの電源を入れる。

 ふわりと体の感覚が浮く。

 体がだんだん別のものに置き換えられていくのがわかる。

 例えるなら正座した後の体の痺れみたいなのが徐々に全身に広がっていく感覚。

 最初に手足、次に下腹部から胴体。最後に頭。数分間痺れを感じた後に体の感覚が戻ってくる。


『身体スキャンが完了しました』

 その音声とともに周りの景色が変わる。

 さっきまでは真っ暗の場所だったのにホテルに一室のような場所になる。

『ユーザールームへようこそ!

 チュートリアルを表示しますか?』

 目の前にデカデカと現れたUIにはそう書かれている。


 YESのボタンを押すとさらにウィンドウが出てきて状況を説明される。

『このエリアはユーザールームといってDream helmetに初めから入っているソフトウェアです。

 現在の内装は初期プリセットをロードしていますが、自分でカスタマイズすることも可能です。

 またプリセット自体をSSDに入れていてロードすればそのプリセットを読み込めます』

 カスタマイズメニューを開いて家具などを見ればなかなかの品揃えだった。中には畑や発電所などもありこれだけでも遊べそうなほどだ。

『このエリアは基本的にはオフラインですが、メニューで設定していただくとオンライン状態にもできます

 ユーザールームのチュートリアルは以上です』

 そうしてチュートリアルが終わる。自分の部屋みたいに使ったり溜まり場としても使えそうだ。


 しかし今はIncomplete Heroにログインしなければ……。

 そんな使命感とともに画面端にあったボタンを押してメニューを呼び出す。そして目的のアイコンをダブルタップする。

 こんなところの操作方法はあまり変わらないんだなと思う。

 まぁ慣れてる人が多すぎて帰れないってのがそうなんだろう。

 ログインしたときの感覚を100倍弱くしたような感覚とともに、Incomplete Heroのロゴが出てきてナレーション的なのが語り始める。


 盛大な盛大な物語の導入。だがカットする。残念ながら俺はストーリースキップ勢なのだった。

 3個くらいあったムービを全てスキップするとタイトル画面がドドンと表示される。

 New Gameを選択し、キャラクタークリエイトの画面へと移る。


 Incomplete Heroのキャラクタークリエイトはリアルよりだが少しキャラクターチックな見た目になっている。

 例えるなら加工した写真だろうか。

 だからやろうと思えば萌え萌えな超絶美少女も作れるし、リアル志向の美人も作れる。

 今回俺が作るのは超絶美少女の方。

 イメージするのは常に最強に可愛い自分……。誰にも負けない可愛さと儚さを持った自分。

 髪は白身が買った金髪を大きく二つに分けたロングツインテール。前髪はバングを目にかぶらなところまで伸ばし、後毛をすらりと首元まで伸ばす。

 目の色は左目を透き通った瑠璃色にして黒目を強調し、右目を朱色にする。目尻をキツい印象が出ないほどに持ち上げ少しの凛々しさをだす。

 顔は輪郭をほんの少し丸くして少しの幼さをだし、鼻を少し高くする。口元は若干口角を上げて柔らかい印象に。

 仕上げに左目の下に泣きぼくろをつけて顔は完成。

 身長は153に設定。

 バストサイズは75のBサイズにし、ウェストはあまり細くなりすぎない53。ヒップは少し大きめに77。

 初期装備はフリルが多めの見た目の良いものを選択。


 うんなかなか良いんじゃないだろうか?現状の自分の完璧を作れた気がする。

 キャラクターデザインはこの辺にして次の項目に移る。

 次はステータス振り分けのようだ。しかもこの項目は一度決定すると振り直せないようだ。

 初期ポイントは120ポイント

 現状ではこのゲームの仕様がジョブなのかスキルツリーなのかわからない以上、均等に割り振るのが良いのだろうが、ここは意外性を求めてAGIDEXよりの振りにする。

LV 1

 STR 20

 VIT 1

 AGI 40

 DEX 35

 INT 20

 RST 1

 LUC 10

 STRとINTに少し振っているのは、大抵のゲームで近接ならSTR、魔術系ならINTが装備条件になっていることがあるからだ。

 改めて見返すと耐久を捨てた汎用って感じがする。

 次の項目はジョブの選択だった。

 ジョブ制だったかーと思ったがどうやらこのゲームはジョブ制とスキルツリー制の混合のようだ。

 現状見えるジョブは剣士 騎士 盗賊 神官 魔法使いの5つ。

 剣士は高STR高VITの脳筋。

 騎士は耐久力の高いタンク職。

 盗賊は手数とクリティカルメインのアタッカー。

 新刊は回復とバフの奴隷。

 魔法使いは火力と火力のロマン職。

 まぁ最初に選べるジョブだよねってのが並んでいる。

 この職業は後からでも変更できるみたいなのでステの振り方的に盗賊を選択。


 最後の項目は少し変だった。

 憧れの設定。

 しかも項目を選択するのではなく文字の入力。これは真面目に答えるかふざけるか迷う項目だ。

 憧れかぁ……。

 そういえば小さい頃に少し憧れていたものがあった……。


 かっこいい主人公。

 どんな敵も必ず倒して最後には可愛い女の子を助ける最強で最高の主人公。

 そんな実現不可能な子供の憧れ。

 不意に思い出したこの気持ちをなくすことはできず思わずテキストボックスに入力する。

 かっこいい主人公。

 その文字を見るとなんだか我ながら馬鹿らしく思えてくる。だけど面白いと思った。

 だからこのままにした。


 それは無意識の決意だったのかもしれない。

 このゲームでかっこいい主人公になってみせるという。

 オンラインゲームという都合上一人のプレイヤーを持ち上げることはない。ましてや主人公になんてなれやしない。

 でも目指そうと思った。

 それは多分面白いことだから。


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