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『魔導書』編 『殺人ノ門』

 誰もが視線を持ち、その終点が見たいモノになる。始まりと終わりには幾つかの『殺人ノ門』が存在する。

 その門は『魔導書』、この世界ではそう呼ばれている。

 通常に存在する『魔導書』は可視出来る。しかし、この『殺人ノ門』真逆だった。



 空にはこの世に未練がある魂が波の様に形を作り、地上へ落ちて来ているが、それは強力な魔力によって防がれている。とある『魔導書』に寄生され、この現象を防ぐためだけに存在している女性が大きく口を開き、何か叫んでいる様な姿で空を睨んでいる。

 元々は豪奢な衣装だったに違いない。髪もそうだろう――

 上流階級の女性を、数える程度しか見た事が無い俺でも分かる。

 身体の一部、衣装、金色と白で彩られた物は血と泥で汚れている。両翼の様に寄生する『魔導書』は開いたページから、文字が液体に戻り、噴き出している。その液体が後方で描いているのは、女性の罪だった。

 決して良い趣味とは言えない行為を限りなく続け、最後には命も奪っている。それだけの事をしてしまえば、この世界に対して贖罪をしなければならない。そう判断され、この世界の為に命を使っている。

 通行人はその光景を見慣れているのか、当たり前の事として見ているのか、俺には判断出来ない。

 隣国では内戦が長期化し、先の見えない戦いが続いている。望まぬ死によって未練が残り、この世界から離れられないでいる。全ての元凶がこの国であると知っているから――

 俺の恋人に罪を被せ、『魔導書』の使用者に堕とした。

 憎しみの炎が強くなる。


「さあ……そのまま意識を視線の先に集中して……」

 少女に囁かれる。


「何も無い、見えているのは貴方が憎い光景。でも……ゆっくりと、そう、ゆっくりと見えて来る……ほら、来た。この世界を変える力が……」


 何も無い空間に浮かび上がったのは死体で作られた門。絡み合う肉から触手の様に生える手が握るペン、新たな殺人方法を書き込んでいく。

 黒い液体が意思を持ち、本の形を保っている。生暖かい『魔導書』を掴みながら、視線を落とすと、波紋が起きる。ゆっくりと少女が顔を出す。濡れることなく、白い肌と黒い髪は汚れていない。閉じることが無い両目と、俺の視線が合う。


「貴方には資格があった……誰でも手に入れられるモノではない力と権利が。望むままに、思いつくままに、ルールを気にせずに新しいページを増やして」

 少女は笑みを浮かべ、再び黒い液体の中に沈んでいった。

 

 ――どれだけの悪意を煮詰めたらあんな表情が出来るんだ?

 背中に嫌な汗が浮かぶ。

 空が崩壊する音の中、俺は恋人へ近づく。力無く倒れる身体を腕で受け止め、抱き締める。

 背後で浮遊する『魔導書』の『殺人ノ門』が、ゆっくりと開き、閉じ込めていた人肉を吐き出す。血色が良く、新鮮な見た目をしているが、酷い腐敗臭。際限無く吐き出される肉が山積みなり、そこへ向かって魂の波が落ちる。

 肉と魂が繋がり、一つの意思が生まれる。それは『殺人ノ門』に記録されている殺人方法を実践する。


 瘦せ細った身体がゆっくりと以前の形に戻っていく。併せて全身に刻み込まれる文字。それらは『殺人ノ門』に使われている文字だった。

 抱き締めていた恋人の骨を折りながら小さく丸めていく。丁度良いサイズになったところで、口を大きく開け、ソレを飲み込む。

 ゴクリ、と大きな音を立て、しばらしくて息を吐く。


 ――殺していこうか。なあ―――    愛しているよ。


 少し離れた場所で逃げ惑っていた女性に向かって飛び出す。距離を縮めると同時に身体を縮め、恐怖で大きく開いた口に飛び込み、内部で元の姿に戻る。

 爆発する様に死んだ女性の頭部を拾い上げ、伸ばした舌の先で目玉を掬い取り、口に運ぶ。口内で転がし、血で濡れた髪をかき上げ、全裸の俺達は両腕を広げ、手当たり次第に殺していった。


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