『束縛ノ音色』
この世界に存在する全てに響く音色。
いつからそこに存在し、誰が演奏したのか分からないバイオリン。
弦と弦の隙間、そこに存在するのは戦禍によって壊れた世界。とある世界を切り取った小さな世界。
愛を表現する音色は小さな世界に更なる悲劇を生む。
悲しみを表現する音色は演奏者の周囲に疫病を流行らせる。
演奏しなければ、演奏者は異形に刃物で肉を削がれる。
この魔具に選ばれたら逃げられない。束縛という譜面が脳内で溢れ、演奏し続ける。
絶望する演奏者は男でありながら非常に中性的で、同性、異性から非常に愛された。
苦悩と絶望。僅かな希望を刈り取れた時の悲しみと虚無。
四季折々よりも鮮やかな感情の変化は永遠に見ていたくなるモノだった。
他の魔具とは違い、敵に攻撃することは難しい。出来ても鈍器に使う程度。
だが――所有者には愛情を持って束縛し、ありとあらゆる痛みを与える。
別世界に存在する演奏会場。
観客は演奏者に痛みを与えることしか考えない。
豪華絢爛の装飾の上には異形の体液が滴っている。
嫌な臭いで充満するこの空間には美しい音色。
演奏者は絶叫しすぎて咽が潰れている。それでも此処から逃げたいという強い思いを音色で表現しているが、新たな痛みを作る結果となる。
創作意欲が沸く音色に異形らはうっとりとしていた。




