『時ト時ヲ繋グ銃弾』
この世界を変える。
死に満ちた世界を変える。
願望、願望、願望。
数多の命を積み上げ、届いた願い。
一人の青年が右腕を水平に上げている。
常に立ち上っている黒煙で空は曇っていた。全ての空気を汚す腐敗臭。命が尽きる際の絶望。この世に存在する者達に等しく圧しかかっていた。
魔力によって作られた甲冑は既に右腕しか残っていない。
上半身の半分を失い、足も失った。片目も潰れている。普通なら既に命が尽きていてもおかしくない状態だが、意識がはっきりしている様子。何故なら、青年の仲間が既に動かなくなった身体で、尽きる命を使って身体を支えていた。
魔力と最後の希望で支えられた青年の指が、ゆっくりとトリガーに添えられる。
青白い光を放つオートマチック拳銃。
獣に合わせた照門。目に魔力が集中し、右腕の位置が修正されていく。
全てを変える瞬間。
青年の指がトリガーを引いた。
飛び出した銃弾が、刻まれた『魔力文字』と反応して巨大化。
獣はそれに対し、あらゆる攻撃を放った。満身創痍のため、出来る限りの攻撃をした。しかし、それらは全て消滅する。
獣に着弾。
魔力と回転エネルギーにより硬く覆われていた体毛を焼き、皮膚へ到達。
『皮膚』それは外界と隔てる境。時間の流れは通常。見ている視点はその世界の住人。
絶望から歓喜。
可能性が生まれた瞬間。
時間が生まれた瞬間。
『肉』世界の住人がわずかに知っている可能性がある。数多の攻撃によって切断された筋肉が再生を繰り返し、それを阻止しようとした人々の亡骸、魂の残骸が存在する。
墓場に一筋の光が走る。
『骨』古の時代。強者が身丈を越える武器を使い、命を魔力に変えて戦い、命を奪うところまで追いつめる。
『根源』古の時代。一つの存在が到達。この獣の存在の意味を知り、絶望する。
しかし、この世界には繋がりある。前者が必ず引き寄せる、相反する存在。
歓喜。
青年の歓喜の絶叫を受け止めた世界。
この戦いで生き残った者達の子孫が数世代過ごした世界は突如破壊される。
穏やかな日常を壊す様に、命を刈り取られる様な咆哮が響き渡る。
獣の動きを止めていた『時ト時ヲ繋グ銃弾』が動き出す。
時が戻る様に、『根源』から『骨』そして『肉』。最後に『皮膚』。
この世界を蹂躙するには十分過ぎる神の獣。七色に輝く四つの翼。神々しい黄金の毛に包まれた四足の破壊者は、燃え滾る赤い目で世界を睨み、咆哮する。
封印に使われた『時ト時ヲ繋グ銃弾』が傷口から抜け出し、消える。
再びこの世界に現れるには歓喜が満たされ、もう一度、絶望を受け入れなければならない。
人と獣の戦いは続く。
減ることが無い人間。
消えることが無い獣。
意味を考えることすら無意味な世界で繰り返される歴史。
戦いが存在することで価値が見出される世界。
神は――
この戦いに飽きていない。




