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『少年ノナイフ』『少女ノナイフ』

 荒廃した世界。貧富の差はいつの間にか消え、人間はただ争うことしか考えなくなった。世界から色が失われていき、灰色と黒が占める。

 更なる絶望で世界は塗り潰され、この世界は終わりに向かっていた。

 その中、少年が旅をしていた。

 旅の理由。この世界から逃げる。

 世界を移動する唯一の方法が、世界の中心に存在する『白亜の神殿』に辿り着くことが必要。

 更なる絶望によって起きた、人が突然に獣となってしまう『獣化する病』が流行していた。

 世界が混沌としている中、旅の途中で少女出会う。

 警戒しつつも話をすると、同じ目的で旅をしていることを知った。それからは、自然と互いに助け合いながら『白亜の神殿』へ旅を続けた。

一人で旅を続けるよりも、二人の方が危険度は下がる。いざとなれば裏切ってもいいと考えていた。



 旅が長くなれば長くなるほど、現地で手に入れられる食料も少なくなり、持っていた保存食も減っていく。身体はやせ細り、服もボロボロになっていく。

 四季の移り変わりも土地によって違い、その急激な変化に身体は更に疲弊していく。

 全てが薄汚れた中で、目だけは変わらなかった。

 狂気を宿し、道なき道を二人は歩き続ける。



 二人が唯一使える武器。

 成人男性が使っても大きすぎるナイフ。

 少年が持っている方は、柄が古い木で作られていた。どういう仕組みになっているのかは分からないが、柄の中心部分が崩れていて、その中には小さな輝きがあった。光によって崩れている木が固定され、柄として機能していた。

 少女の方は、少年とは逆の仕組みだった。小さな木から伸びる枝が光を固定している。

 大きすぎる武器を上手く使い、襲い掛かって来るケモノを斬り倒していく。

 

 ケモノは様々な形をしていた。

 四足歩行するモノや、翼を持っているモノや、何個も顔を持ったモノ。仲間の死体を武器にするモノ、巨大なモノ。

 少年と少女は協力しあい、確実にケモノを殺していった。

 戦っている最中、ケモノはリカイ出来ない言葉で叫んでいる。

 二人には全くその言葉がリカイ出来ないので、ただの咆哮程度にしか考えていなかった。

 旅は続いていく。その間にどれだけのケモノを殺したのか、もう二人には分からなかった。

 最初の頃は、血が付いた服は洗っていた。身体も洗っていた。

 それも次第に気にならなくなった。



 長い旅の終着点。

 小高い丘から見下ろすと、『白亜の神殿』を見つけた。

 想像通り、美しく、周囲には常に陽光が存在し、光に照らされる川の両岸には、色鮮やかに咲く花が見えた。

 少年が走り出す。それを追うように少女も走り出す。

 転がるように駆け下りていく。まるで、自分達が殺してきたケモノの様に。

乱暴に身体を動かし、美しいと思ったモノを壊していることなど微塵も考えずに駆けていく。

『白亜の神殿』に着いた時には、二人とも呼吸を整えることしか出来なかった。

 全身から噴き上がる汗。

 身体に染みついていたケモノの血の匂いが蘇ってくる。

 嫌な臭いがゆっくりと消えていく。不思議に思い、少年は、少女の方を見る。

 同じことを思っていたのか、目が合う。その原因を探るように建物の方を見る。

『白亜の神殿』の入り口から光。

 血の匂が吸われるのに合わせて、更に伸びて来る光。二人の視界は強い明るさに支配された。

 光に引き上げられる記憶。

 記憶の中にある音がゆっくりと、ゆっくりと変化していく。


 理カ――

 理カイ――

 理解――


「あああああああああああああ」


「いやあああああああああああ」


 絶叫。

 自分達が殺したていたのは、『獣化する病』によって変わってしまった人間だった。

 少年と少女が見たことがある、病に侵された人とはあまりにも姿も形も違ったので気づけなかった。

 全ての咆哮が理解出来る言葉になる。

 次の瞬間、少年の首が刎ねられる。後ろに立っていたのは少女だった。

 少年の首から流れ出る血が、神殿に向かって流れていく。

 少女の方は、四肢からゆっくりと神殿と同じ材質に変えられていき、全身が変化すると同時に崩れた。

 二つの命が消え、しばらくすると『白亜の神殿』の柱に魔力文字が浮かび上がる。

 巨大な柱が伸びあがっていく。

 神殿から生まれる声。その狂った声に、血に残っていた少年の意識が反応する。

 神殿は、天を目指していた。自分をこんな醜い場所へ堕とした存在に復讐するために。

 怨嗟の声が世界中に響き渡る。


 自分達は、ただ利用されていた――

 気づいたところで何も出来ない。再び薄れゆく意識の中、光に飲まれていった。



 

 ―――消えた世界からの残滓。

 可能性を失い、滅ぶだけの世界と繋がりが生まれる。それはただのエネルギーとして利用されるだけ存在。



 少年と少女は、神殿を守る兵士として戦っていた。

 身体を獣に変える新人類が現れたことで、この世界は混沌と化していた。

 この世界で唯一残った信仰。

 身体に対して大き過ぎるナイフを上手く使い、戦う。




『少年ノナイフ』と『少女ノナイフ』は『白亜の神殿』の為に命を狩る。全ては創造主の願いを叶えるために。


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