『呪イノ手甲』
とある国には美しく、強い姫達がいました。
長女の名は〇〇〇 美しい宮殿に施されている彫刻を大剣に取りつけた様な、滅茶苦茶な形をした武器を使います。真紅のドレスに、一切乱れない笑み。炎の様に鮮烈な色の髪色。
次女の名は〇△〇 清らかな河の流れを穂先に付けた槍。輝く美しいドレスを着て、何モノにも動じない冷徹な視線を与える。青く、全てを癒し、死を近づける髪色。
三女の名は〇△△ 霊験ある山を切り取った様な斧を持っている。緑がかかった金髪と、美しい森林の色合いのドレスを着ている。
四女のリザだけは手甲だった。防具しかない。黒いドレスに華奢な身体。
寝不足気味の顔色にボブヘアー。黒髪は前髪が少し長すぎて目が隠れている。
明らかに他の姉達とは違って陰気な雰囲気。普通なら美しい姉達から虐げられる。しかし、そんなありきりたりの現実は無かった。
皆、リザを味方に付けようと画策していた。
そこに本当の愛情が存在していたのかは分からない。でも、心地良い優しさは永遠に続いて欲しいと、リザは思った――
呪い
美しい姫達には決して解呪出来ない、強力な呪いがあった。
それは、姉妹からの攻撃は全て一撃死。決して逃れられない呪い。
『姫を決める戦い』
この戦いが始まってしまえば、逃げられない死が訪れる。
姫を確実に決め、その後に遺恨が無いシステムとして優秀だった。
ただ、今回はイレギュラーが存在していた。四女のリザの存在。
彼女は、姉達の攻撃を必ず防ぐことが出来る力を持っていた。
戦いが始まる。
長女、次女、三女、この戦いに勝利する自信があった。
全員、リザを味方につけたと思っていた。
各々が考えられる最大の攻撃を放つ。ただ、攻撃の向きと違う視線。
三つの確信を受けたリザは笑みを浮かべる。
黒いドレスが舞い上がる。
空中で逆さになったリザ。手甲を付けた腕が放つ凶悪な手刀で、姉達の首が刎ねられる。そのままの体勢で受け取り、一回転して着地。
抱えている首へ微笑み、優しく抱き締める。
「やっと静かになった……。何も話さない姉様達が好き」
「本当に綺麗な顔。大好き……」
「姉様達、この国は私が滅ぼしておくよ……」
手甲から生まれた小さな暗闇に、三つの首が飲み込まれていく。
「この国は汚い。汚いから汚い殺し方、壊し方をしてあげる」
「アハハハ、アハハハ……」
『呪イノ手甲』
血族を必ず殺す魔具として存在し、身に着けた者の命を必ず守る呪いを持ちながら、過去、現在、未来を関係無く彷徨い続けている。




