『刻ミ続ケル視線』
少女が暗闇の中、何かが落ちる音を聞いている。身体の感覚が曖昧になってしまうほどに深い闇。
耳だけが少女の感覚になっていた。
落ちる音に混ざる人々の声。理解は出来ない音、何かが破壊される音、悲しみと絶叫だけの音。数多に存在する音が落ち、それが次第に聞こえなくなっていく。
積み重なる音は新しい音に潰され、死を迎える様に消える。
私は――
何故、此処に居るのだろうか――?
遠い昔すぎて忘れたのか、それとも―― 私が生まれた場所が此処なのかも。
記憶を探ってみても、この音しか思い出せない。
数え切れないほど行った溜息が出る。
突然、私は初めての感覚に襲われる。
暗闇をゆっくりと浸食してくる青い光。
その動きを見て、私は不安になった。しかし、その光の動きは、音が死を迎える時に似ていた。
次第に広がる青い光。
慣れない目がゆっくりと捉えたモノは、巨大な砂時計。
その大きさに圧倒されていると、鼓膜を揺らす音。
その音は、魔具『刻ミ続ケル視線』と教えてくれた。
砂時計に近づき、触れる。
中で落ちる砂は、とある世界の、とある人物が見ている世界。その視線の先が砂粒の様に斬り抜かれたモノだった。
音が聞こえなくなるというのは――
この世界が終わった瞬間――
周囲は青い光で包まれている。
光を受けた砂時計がゆっくり浮遊し始める。
それを見上げる私の肩が叩かれる。
小さく、少し不安が伝わる衝撃に全てを理解した。
ゆっくりと振り返る
「はじめまして、次の私」
金色の長い髪。
緑の瞳。
小さな身体。
白いワンピースから伸びる四肢には魔力文字が刻まれている。
明滅する文字と私の命を使って、砂時計が一回転した。
私の命は消える。
アノ人は、私達に観測を任せて消えてしまった。
膨大なデータは何処へ送られているのかは分からない。ただ、私達には新たな目的があった。砂時計で落ちる砂の中に、アノ人に繋がる世界があるかもしれないと。
次の私、アノ人を見つけて。
そして――
殺して――




