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『嫉妬=怒りの銃』

 僕は貧弱で、何故この世界に生まれたのか分からなかった。

 大抵が暴力で物事が解決される社会で、弱さは残酷で無慈悲な現実を突きつける。それぐらいならいい、死ぬまで搾取されるだけの存在もいる。


 愛のある関係ではなく、ただ、その瞬間にある欲をぶつけられる存在もいる。異性、同性関係無く、凌辱され、見世物にされ、少し気に入られれば未来は奴隷としての生活が始まる。


 何故、貧弱な僕が社会に恐怖しながらも無事に生活出来ているのは、特殊な技術があったから。それは壊れた武器を修復する能力。

 鍛冶屋はいる、それは外見を修復することしか出来ない。僕は武器の核、この世界に生まれる際に得る唯一のモノを修復する。


 どれだけ素晴らしい武器でも、この核を破壊されてしまえば、武器の形を保っていても使い物にならない存在となる。完全に破壊されてしまえば、何も出来ない。

 核の形が歪になった、一部崩れた、それぐらいなら修復は出来る。元に戻した武器は、以前通りに特殊能力を使える様になる。


 僕以外にも、同じ能力を持つ人達はいる。その中でも優劣があり、上位の存在である僕を訪ねる荒くれ者は多い。併せて、この地域で有力者の女性の援助もあり、僕の生活は安定していた。

 ただ、夜の営みは違った。彼女は、僕を抱く。少女の様に喘ぐ僕を見るのが好きで、その姿を見ているだけ満足するサディストだった。



 変わらない日常が過ぎていく。

 ある日、僕の店に血で汚れた布に包まれた物があった。差出人は無く、代わりに魔術文字が滅茶苦茶に書かれていた。

 ――何だコレ?

 と思っている内に腕が伸び、布を外していく。

 中から出て来たのは、漆黒のリボルバータイプの銃。シリンダーには魔術文字で嫉妬と刻まれ、バレル部分には両性具有の人達が絡み合い、殺し合う姿が彫られている。グリップの中心には小さな暗闇。様々な形の口が何かを叫び、消えて、また現れるのを繰り返している。

 

 こんな気味の悪い武器を見たのは初めてだった。早く捨てるなりした方がいい。

 そう思っているのに、覗く。いつも以上に深く覗く。

 暗闇の中心、形が不安定になっている核。

 しばらく見つめる。

 これはこのままがいいのでは――

 平行して現れた考え。これを直したらどうなる――?

 今ある日常、可能性がある未来、この瞬間に選ばされていた。

 僕は―― 後者を選んだ。



 トリガーを引く。銃口から飛び出した銃弾は複数に分かれ、逃げ惑う男達、女達の頭を貫く。この街で生きている人は少ない。

 新しい未来がすぐ傍まで近づいているのに、震えが止まらない。僕は、恐怖で精神が破壊される寸前だった。


 この武器は嫉妬を銃弾に変える。この銃弾に殺された存在は怒りで動く化け物になる。銃の所有者は不死となり、化け物になった存在から狙われる。


 殺したくない、殺したくない。

 嫉妬がシリンダーに溜まれば、トリガーを引いてしまう。

 ああ―― 僕は馬鹿だ。選択なんてしてはいけなかった。あのまま、変わらない日常を何故捨てた。貧弱な僕なのに。

 力強く抱き締め、乱暴に僕を抱く女性を思い出す。少女の様に喘いでいる自分を思い出し、後悔が更に強まる。

 意識と関係無く、再びトリガーが引かれた。

 待っているのは地獄しかなかった。


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