『姉弟ノ剣』
とある小国に誰もが魅了される美しい姉弟がいた。
人間が望み、理想とする美しさを全て揃えていた二人は、性別問わずに淫らな意識を向けられる。不思議な事に妄想を実行する者はいなかった。むしろ、どれだけ卑猥で淫欲な妄想を出来たかを語り、競い合っていた。
国民全員がその様な妄想をしていれば、嫌でも本人達の耳に入る。
姉弟は嫌な顔をするどころか、今まで以上に国民と接し、そして身体に触れる様になった。隣国との緊張状態が続く中、国内は異常な興奮で包まれる。
この事態を収めようとする体で、国王は姉弟を独占しようと城へ住まわせる。横暴な行為に暴動が起き、姉弟が自由に国内を移動出来る条件と国王の独占は許さない、普通なら考えられない法律が出来た。
姉弟はこの国で誰よりも美しく、一番の自由を得た。
その二人には秘密の行為があった、それは互いを傷つけ合う。
使用される剣は二人の身体から生まれ、二人の身体を少し小さくした物だった。身体の中心に出来た『紫色の魔法陣』を突き破るように現れ、揃えられた両足が柄となる。まだ肉の温かみ感じる剣の上を、『紫色の魔力』が頭部に向かって流れていく。魔力が通り抜けた後から肉は金属と変化していき、同時に生まれた刃には『魔力文字』が明滅を繰り返し、頭部から切先に変わった部分で戻ってくる。小さく輝く文字を見て姉弟は微笑む。この文字の意味は二人しか分からない。
城の最上部、魔力によって空間を歪めて作った純白の空間。姉弟の後ろには、フードを目深に被った髑髏が数百体立っている。話し声は聞き取りづらく、尚且つ骨同士がぶつかる音で雑音が酷い。それでも、姉弟にはしっかりと伝わっているようで、国民を魅了させる視線を周囲に向ける。それに喜ぶ髑髏からの不協和音の中、空間にドアが現れる。血で汚れ、木材は腐っている。金色の装飾だけは綺麗に磨かれていた。ゆっくりと開いたそこから現れたのは若いメイド。生気を感じられない雰囲気だが、顔は笑みを浮かべている。
姉弟が剣を持ち、相手に向かって振るう。
姉の剣が先に当たり、弟の頭部の一部を斬り飛ばす。遅れて姉の頭部も飛ぶ。続くよう肩に剣が落ち、腹部に刺さり、腿を斬る。血と内臓が落ちる音。骨が切断される音。身体のバランスが崩れ、体勢を崩す音。それでも振り続けられる剣。姉弟の身体は斬られ続け、出血死以上の血を流しているのに二人の表情は変わらない。微笑みを浮かべながら斬り続け、視線の高さが地面と同じとなり、剣を振るうことが出来ない状態になる。
血の池の中、姉弟の頭部だけが残り、お互いを見て微笑んでいる。
その光景を見下ろすメイド。
少しの沈黙の後、血の池から伸びた姉弟の腕。握られた剣でメイドが解体される。宙に浮いた血と臓物が豪雨ように降り落ちる。液体が跳ねる音の中、『食事完了です』と少女の声が響く。
再びの沈黙の後、数百体の髑髏が拍手をする。
その音と共に姉弟の身体が修復し、いつも通りの姿に戻ると同時にこの空間は消えた。
姉弟が突然この国を去り、残されたのは二人によく似た剣が二本。
よく似ているだけなので全員が魅了されなかった。しばらくして、この剣を巡って内乱が起きた。争いの理由は姉と弟、どちらが美しいのか。
国内が二分し、争いは長く続いた。その間に隣国に攻められたが、圧倒的な戦力さがある状態でもこの戦に勝つことが出来た。この結果が姉弟の争いに勢いつけた。
そして――
争いは未だに続いていた。失われた命は数知れない。目深にフードを被された遺体が積み上げられ、火葬される。誰が始めたか分からないが、この葬儀後、剣から美しい声が聞こえて来るので続けられている。
メイド姿の女達はいつ始まるか分からない戦いに備え、忙しく動き回っている。




