『破壊サレタ剣』
とある国で、誰もがこの剣を求めて戦った。その争いでどれだけの血が流れたか分からない。戦乱により国土は血で濡れ、疫病、魑魅魍魎、亡霊により、残された国民の命を脅かす状況が長く続く。それでも争いは続いた。その行為の先に必ず幸せがあると信じられていた。そして、その話を信じる根拠があった。それはとある女性の存在。現在は戦から離れているが『戦女神』と呼ばれた者。だからこそ、彼女の言葉に重みがあった。そして、信じるだけの価値があった。
唐突に東の大陸から来た深紅の『巫女』によって『戦女神』は殺された。大幣で首を刎ねられて。演説を行っていた広場には静寂が生まれる。純白で、金色の装飾がされた鎧。白い肌、陽光に照らされ輝く金髪。強い意思を持つ青い瞳と誰にでも向けられる優しい笑み。その全てが断ち切られた。衝撃的な出来事は続く、死体から流れ出る血が黒く変化。次の瞬間にありえない量の血が溢れ出し、その中から『三本の刀身が美しく絡み合った剣』が現れた。誰かが言う。あれが本当の剣だと。争いは激化する。突然現れた『巫女』は冷めた笑みを浮かべて去っていく。
此処の住人はどんな剣でもいいのだ。
人を殺す理由を与えてくれるモノがあれば。
剣は再び破壊され、穢れを蓄積して新たな剣に移る。
この国は数か月後に滅んだ。