第3話「それは、聖杯」
ネオンが辿り着いたのは、城の宝物庫。
「エクステンド・レリック…穢れし惨湖アヴァロンで、魔剣エクスカリバーから水の魔力を借り受けしチカラ…汝は、まだこの私に、その瞳を拓き、その身体で示す事は赦されぬと言うのか…?」
ネオンが手にし、語りかけたのは、聖遺物…聖杯だった。聖杯ではあるのだが、その形状は鞘に納められた剣である。
「我が身に眠る、水竜リヴァイアサン・オーラ…この世界に恵の雨を降らせるためにも、私は…」
そう呟いた後、その手に持つ剣を抜刀しようとする。しかし、ビクともしない。
「やはり、振り抜く事は出来ない、か…」
ネオンはこれまで、幾度もその聖杯の剣を振り抜こうと試みてきたが、結局一度も振り抜く事は出来なかった。
「さて、ここで問題です。」
そう、声が聞こえた。マーリンだ。気が付けばネオンの居る宝物庫の入り口に立っていた。
「…マーリン。本当に神出鬼没だな、お前は。先程ミラに宜しくと言っていたのは何だったんだ?」
「ですから、こうして来たのですよ。話をするために。」
「はぁ…本気でミラに中身の無い話をするために来たのか?呆れて何も言えんぞ。」
「いえいえ、話があるのは…また別の方です。」
「…別の方?」
ふと、ネオンは城内の雰囲気に気を張り巡らせる…少し、妙な違和感を感じ取る。
「しばらく、グゥイネヴィア王妃とは話せなくなるかもしれませんからね。さて、私はこの入り口で、問題を出そうとしました。その内容ですが、今この城内には、とあるイレギュラーが発生しようとしています。それは一体何でしょ〜か!もし当てる事が出来たのなら、素敵なマーリンさん人形をあげましょう。」
「要らないんだけど…」
冗談混じりだが、実際何かが起こる予兆がネオンの身体を身震いさせる。
「イレギュラー…いや、何だ…?この身が震える事など滅多に無い筈の私にとって、この感覚は…マーリン、それは、私にとって重要性が高いものか?」
「それは、もちろん。」
ゆっくり頷くマーリン。普段はテキトーな態度をしているが、実際この人物の言う事は外れた試しが無い。
「マーリン、もう一つ聞くが、これは必要となる事か?」
「それは、ネオンさん次第ですかね。」
「…その問題に、答えはあるか?」
「それは、まだ分かりませんね。」
ネオンは、まだ抜く事の出来ない剣を携えて、マーリンとすれ違うように宝物庫を出てゆく。
「…分かった。その答え、私がこの目で確かめるとしよう。」
ネオンは、違和感が強く感じられる方へと城内を移動していった。




