第2話「それは、ネオンの大切な人」
キャメロット城に戻ったネオンは、とある部屋を目指す…
黄昏の廃城キャメロット。ここは人々から、そう呼ばれている。しかし、中はまさに典型的なお城といった様子で、様々な装飾が施されており、豪華絢爛な作りになっている。…城の中からでも所々朽ちている様子が伺える事を除いては、だが。
「あっネオーーーンっ♪帰ったのね!これ見てみて〜っ♪」
とててて〜っと駆け寄ってきて、そうネオンに声をかけたのは、リスの女性だった。獣人ではあるが、リスの原型そのものな体型をしている。
「…ミラ、また無駄遣いしたのか?城の財宝は無限では無いのだが…」
そうネオンは咎める。目の前のリスの女性は、ドレスを手にしながらクルクルと楽しそうに回転している。
「もぉぉーー!なんでそこでドレス似合うね〜とか言えないかなぁぁっ!」
ぷんすか怒る、ミラと呼ばれたリスの女性。
ミラ・グィネビリアン。別名、グゥイネヴィア。
それが彼女の名前であり、そして、ネオンの妻でもあった。ネオンもミラも女性であるが、この世界では同性婚は特に珍しいものでは無いのである。
「毎度毎度、浪費されると困るのだ。財宝が減る代わりに、ミラの洋服や宝石ばかりが増えてゆく…はぁ…」
つい、ネオンの口からため息が出てしまう。正直、ミラの浪費癖さえ無ければ、その分の金銭を人助けや都の復興などに少しは回せるのが本音である。
「はぁ!?アタシがオシャレしたりするのがいけないって言うの〜!?」
「いや、そうでは無い。そうでは無いのだ。ただ限度というものが…」
「あーーーもうっ!!その堅苦しい喋り方、アタシの前ではやめてって何回も言わせないでよっ!!」
最後の一言で、ネオンはシュンとしてしまう。王の威厳を保つためとしての語り口調だが、その中身はまだ少女。
「…ごめん、ミラ。私が悪かったわ…」
完全に意気消沈している。今の一連のやり取りから、どうやらネオンはミラの尻に敷かれているようだ。そして、本来のネオンの喋り方は、こうである。
「あのね?アタシ、一言褒めて貰いたかっただけなの。」
手に持ったドレスを、自身の体に当ててみる。褒められるのを待つかのように、ネオンを見つめながら。
「…とっても可愛いわ、ミラ。よく似合ってる。」
仕方なくでは無い。ちゃんと、本心からそう思って感想を述べるネオン。
「ふふん♪最初から、そー言ってくれたらいーのっ!」
満足したのだろう。ミラはそのまま、とててて〜っと何処かへ走り去って行った。
「…部屋に向かうか…」
ネオンは再び、とある部屋へと向かって行った…
「ボクがここに戻って来るの、久しぶりだなぁ〜!」
城の前には、そんな独り言を元気に発する人物がいた。