星座に加えられぬ星
ラジオ大賞投稿作品です。
その星は星座に加えられぬ星だ。
その星が瞬くとき、嵐が吹き鉄砲水が襲い掛かる。故に凶事の星として星座に加えられる事がない。
旧い言葉で運ぶ者と呼ばれる星は荷運びの家畜、騾馬の星でもあるが、死を運ぶ凶星と忌み嫌われている。
年に一度の星舞祭、剣舞師たちは其々に星座を定めて剣舞を捧げ、その祝福を承けて国を栄えさせる。
国一番の剣舞師、剣の冴えは鋭く。舞は流麗。その身は神の如き美丈夫と羨望と嫉妬を一身に集める其の男はマルガナルドという。
「なー、今年もあの凶星に舞を捧げるのかマルガ」
歳の近い男がマルガナルドに問い掛ける。誰もが忌み嫌う凶星に、国一番の剣舞師は毎年必ず舞を捧げていた。
「悪いことは言わない。お前の人気と実績があっても、いい加減あの星に舞を捧げるのは止めたほうがいい。お前を良く思わん者に殺されるぞ」
こうした忠告は良くも悪くも絶えなかったが、それでもマルガナルドは舞を捧げる。
星舞祭、円形闘技場の中央の舞台で剣舞師たちは其々の舞を捧げていく。
祝福の光が降り注ぐ、その荘厳さに観衆は魅せられていく中。マルガナルドの舞には罵声が響き渡る。
如何な国一番の剣舞師とて、いや国一番の剣舞師だからこそ、相応しい星座に舞を捧げるべきである。
そんな怨嗟の中でも、其の舞の美しさは人々から声を奪っていく。
それでも、此の年は遂に国の重鎮たちが差し向けた兵たちが押し寄せた。
「星王陛下より火獅子座に舞を捧げよとの達しがあった筈、無視をするならば、此の場にて切り捨てる」
殺気立つ兵たちに怖じけることもなく、マルガナルドは舞を止めずに言の葉を紡ぐ。
「星の舞は剣舞師がこれと決めた星に捧ぐもの、横槍は無粋というもの」
「運びの星の恩恵を忘れれば、国は立ち行かなくなろう。死を運ぶ凶星は恵みをもたらす吉星でもあると知らぬのか」
マルガナルドは自然の猛威がただ不幸だけをもたらすものでは無いのだと説いて剣を振る。
兵長は罷成らんと兵を舞台に突撃させたが。
刹那のうちに舞台に溢れる光の本流に兵たちは呑まれる。
舞台の中央、星に召されるが如くに空に舞い上がるマルガナルドより翼がひろがると其の姿は忽然と消え失せるのであった。
凶星を失いし其の国は、豊かな大地の恵みもまた、何れ失うことになろう。
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