06 第二試合
第二試合は、ノルシェ対クリス。
ふたりの得意武器を考えると、面白い試合になりそうですね。
「槍対策はモノカとの模擬戦でたっぷりと習熟済みですからねっ、負けませんよっ」
「近接戦無双の真髄、拝見させていただきます」
実況ネルコ、
『第二試合、始めっ』
ネルコも頑張れっ。
最初の一手はやはりノルシェ。
いつも通りの全力突進。
って、ぴたりと止まりましたよ、ノルシェ。
「すごいですねっ」
どうやらクリスの槍の間合いに踏み込めない模様。
このままだと、短剣の間合いの外から槍で削られちゃいますよ、どうするノルシェ。
「ならばっ」
おうっ、ノルシェがふところから取り出したのは短刀『ノルシェル』、つまりは、
「二刀流ですっ」
私との模擬戦でも見せたことの無い『リリシアン』と『ノルシェル』での二刀流、つまりは手数で押し切ると。
そして、私以上のスピードを遺憾無く発揮してクリスを翻弄しておりますよ。
「ヨシッ」
ついにノルシェが槍の間合いをかわして、短剣の間合いに入りました。
相手の死角を巧みに攻める戦法には、さすがのクリスも、
「……!」
ノルシェの一撃がクリスの右腕にクリーンヒット!
この試合の出場者は、身体の各所に魔導具を貼り付けております。
ダメージを負った部所の動きが鈍くなるように魔導具が拘束する仕組み。
つまりクリスの右腕は使用不能にっ。
「うわっ」
なんと、いきなりノルシェが吹っ飛ばされましたっ。
どうやらクリスが左腕のみで振り払った槍に、勝利を確信して油断したノルシェが当たっちゃった模様。
魔導掲示板には、
『勝者、クリス』
かなり派手に吹っ飛んだけど、大丈夫かな、ノルシェ。
「おそれいりましたっ、クリスさんっ」
ノルシェ、笑顔で起き上がってきました。
「最後のひと振りは、右腕の痛みのことを考えると実戦では出来なかったでしょう。 ノルシェさんにふところに入られた私が未熟だったのです」
クリスとノルシェも、がっちりと握手。
場内、大歓声です。
「槍さばきには自信があったのですが、実戦経験豊富な方にはまだまだでした」
勝ったクリスは反省しきり。
「いえいえ、秘蔵の二刀流を見せた私が吹っ飛ばされたのが何よりの証し、ですよっ」
負けたノルシェの方が嬉しそうですね。
「それにしてもアリシエラさんの防御結界はすごいですねっ。 あれだけ吹っ飛ばされても全然平気、ですよっ」
おや、アリシエラさんが何やら思案顔。
「本当はあんなに飛ばされないでダメージは数値のみのはずなんですよっ」
それって、大丈夫?