05 第一試合
第一試合は、リリシアさん対シスカさん。
優秀な騎士としていろいろと比較されていたという因縁の組み合わせですね。
「よろしくお願いします」
「こちらこそ、です」
スタジアムのバルコニーで皆さんが観戦しております。
ロイさん一家、アランさん一家、ミスキさんご家族、カミス一家、そしてモノカ邸一同。
闘技場には審判はおりません。
防御結界でブロックされたダメージが一定量を越えたと判定されると、勝負が決まります。
実況はネルコ、解説はアリシエラさんです。
そして実況のネルコの一声、
『第一試合、始めっ』
試合、開始ですっ。
「ふんっ」
開始早々のシスカさんの連撃を、リリシアさんが華麗にかわしました。
シスカさんの片手剣は伝説級の秘宝、いかにリリシアさんの家宝の鎧でも直撃はまずいでしょう。
「ふっ」
リリシアさんの愛剣『バストネイシア』の強撃をシスカさんが剣で防御。
あの業物の細剣を自在に操り相手の攻撃をいなしながら、体勢が崩れたところにとどめの突きを叩き込むのがリリシアさんのスタイル。
しかしシスカさんの体幹の強さ、容易に姿勢を乱しません。
お互い間合いをとってのにらみ合い。
っていうか、おふたりとも微笑んでおられますよ。
「楽しくてたまらんっ」
「私もですっ」
リリシアさん、突進!
シスカさんは真っ向から受けましたっ。
数度の激しい打ち合いの末、共に後退したふたり、
しばしの、静寂。
「ここまで、か」
シスカさんのつぶやき。
スタジアムの壁面に備え付けられた魔導掲示板の表示は……
『勝者、リリシア』
どうやら僅差でリリシアさんの勝利。
「実戦と試合の差、だな」
リリシアさん、とても充実した表情。
「リリシアさんが愛剣と積み重ねてきた絆の勝利、ですね」
シスカさんも、満足げな笑顔。
シスカさんの片手剣『守り手の片翼』は、守護対象を守るためなら途方もない付与効果が出せる伝説級の秘宝。
つまり、このような形式での試合では伝説級の力を発揮出来ないのだそうです。
「また、後日」
「鍛錬の成果をぶつけ合いましょう」
おふたり、がっちりと握手。
闘技場内、拍手喝采です。
「全然実況の声が聞こえてこなかったよ、ネルコ」
「無理ですよぅ、あんなに早くてあんなにスゴいのなんて」
ネルコ、泣きが入っております。
まあ、後で記録映像をみんなで観るので。
「私、いらない子じゃないですかっ」
何事も修練あるのみだよ、ネルコ。