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03 寮母


 ここに来てからフナエさんは大忙しなのです。


 なにせ今、我が家で暮らしているのは女性ばかりが9人。


 同じ敷地に住んでいるミスキさんたち4人も、ほぼ同居しているようなもの。


 つまりは、お年頃乙女12人暮らしの寮母さん。


 もちろん家事は分担制で、みんながそれぞれ出来ることをやっちゃおうなのですが、フナエさんにはマネージャーのお仕事までお願いしているわけで。



「ネルコさん、アルセリア王国のシルメイア王妃から、例の件はいつ頃になるのか早急に返事を、とのことでしたが」


「了解でありますっ。 大至急御連絡いたしますっ」


 ネルコが、すっ飛んで行きましたよ。



「アイネさん、お城でのセシエリアさんの講演についての王城メイド組合へのお返事が、まだのようですが」


「すみませんっ、急いで連絡してみますっ」


 アイネが、大慌てですね。



「皆さん何かとお忙しいのは理解しておりますが、物事を成す際にはもう少し余裕を見ていただかないと……」


 ごめんなさい、フナエさん。


 せっかく来ていただいたのに、こんな感じで。



「私がこうだと、せっかく皆さんが頑張って建てたお屋敷なのに、安らげないのではないのかしら」


 とんでもないですっ、みんながフナエさんに甘え過ぎちゃってご迷惑なんじゃないかと。



「あら、甘えてくれるうちが華、なのかしら、ね」


 フナエさん、くすりと微笑みましたよ。


 いいなあ、大人の雰囲気。


 あの癒しマイスターリノアさんに勝るとも劣らない癒し感。


 怒ると怖いところもそっくりですね。



「何でしょうか、モノカさん」


 うひゃっ、読心スキルでもお持ちなのでしょうか。


 もしやこれが、素敵に年齢を重ねた大人の女性だけが所持しているという必殺技『フェミニンテレパス』



「あら、おねだりですか」


 うひゃんっ、ハグられましたっ。


 あかん、これこそがリノアさんに匹敵する柔らか凶器にして癒しの必殺技『フェミニンハグ』


 これがフェミニンヒエラルキー上位の実力者の異能、私ごときではいかんともしがたし……



「またモノカがハグられてぴくぴくしてるね。 どうもフナエさんのモノカハグ率の高さは異常なような気がするのだが」


「ハグには、ハグされる側の気持ち良さだけではなく、ハグする側の気持ち良さというものもあるのですよ。 相性問題、私にはとても良く分かりますわ」


「確かに、クロ先生をハグしている時のササエさんの表情は、見ているこちらも幸せになっちゃうほど、ですね」


「あら、ハルミスタさんにハグされているネルコさんの表情も、とても素敵ですよ」


「いいえ、あの素敵ハグはもう夫のアランさんのモノ、ですからね」


「つまりネルコ君は、もっとフナエさんに構って欲しくて問題を起こしているってことなのかな」


「叱られてばかりだから作戦失敗ですね」



 フナエさんの素敵ハグで意識朦朧、聞こえてくるのはみんなの噂話。


 つまりはフナエさん加入は大成功ってことなのかな。



 ぎゅっ


 はふん。



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