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02 真


 犯人は即、お縄となりました。


 予想通りの、ネルコ。


 まあ、あんなのを所持しているのは、ねぇ。



 ただいまネルコ私室にて、フナエさんがマンツーマンでお説教中。


 これはフォロー不可、っていうか私も被害者なので。


「趣味をとやかく言いたくはないのですが、居間に持ち込むのはちょっと……」


 ノルシェの言い分、ごもっとも。


 今回ばかりは、猛省してもらわねば。


 あんなのをマクラやハルシャちゃんが見ちゃったら、シャレにならんですからね。



 あー、へろへろになったネルコが、居間に来ましたよ。


「モノカ、ちょっといいですか」


 謝罪ですか、いいでしょう。


 居間の空気もアレですし、私の部屋ででも。



「仕事だったんですよぅ」


 部屋に入るなりネルコの泣きそうな声が。



「カードの第二弾分のネタがどうしても足りなくてですね」


 ははぁ、なるほど。



 冒険者絵姿カード、通称ボケモノカード。


 著名な冒険者たちをデータ化してバトルさせるという、いわゆる対戦型トレーディングカードです。


 始まりは違法な著作権侵害モノだったのですが、製作した裏組織は壊滅しまして、今では国家公認の正式な娯楽としてリスタート。



 ネルコはアドバイザーとして深く関わっているのです。


 っていうか、あれの中身はまるごとネルコひとりで作っちゃったようなもんなんですがね。


 で、大好評につき追加ブースターパックが数回販売されて、いよいよ第二弾発売、の予定なのですが、肝心のネルコがネタ切れで青息吐息と。



「今回は冒険者だけじゃなくて悪党たちも大暴れ、のはずだったのですが」


 えーと、悪党どもは確かに犯罪者だけど、こっちの世界では悪党に人権は?



「ちゃんと司法官本部から許可をいただいております。 更生不可と判断された犯罪者の資料をお預かりしまして、もちろん本名などいろいろとボカしてはおりますが、カードデータ化の参考には充分かと思ったのです」


 それで何が問題なの?



「降りてこないんですよ」


 ?



「冒険者さんたちは活躍っぷりとかがさまざまな角度から語られまくっているのでイメージが捉えやすいのですが、犯罪者は秘匿されている情報が多すぎてイメージが湧いてこないのですっ」


 それで、アレ?



「アッチ系違法創作の犯罪者なら、創作物を読めば理解出来るかと」


 でも、居間で読むのはヤリ過ぎだよ。 そもそもにゃんこ本を使わなくたって。



「衆人環視の中でイケない事をするタイプの犯罪者だったもので、つい……」


 とりあえず、二度とやっちゃ駄目だよ。



「反省しております。 フナエさん、超怖いです」


 やらかした事の反省ももちろんだけど、あの優しいフナエさんを怒らせちゃったことも、ね。



「海より深く反省しております」


 で、仕事は間に合いそうなの?



「とりあえず形には成ったのですが、なにかひと味足りない、というかなんというか……」


 クリエイターのこだわりってやつだね。



「第一弾があれだけ人気を博すと、第二弾でコケたりしないか怖くて」


 第二弾でネタ切れ気味だと、これ以降も心配だね。



「どうしよう、モノカ。 私、ツァイシャ女王様をがっかりさせたくないよ」


 こればっかりは、ねぇ。


 例えば、著名な冒険者だけに限らず、少しハードルを下げてみるとか。



「それをやるのは線引きが難しいのですよ。 情報量が爆発的に増えちゃって、私が処理出来なくなっちゃいます」


 ゲームバランスを考えると、無茶はできない、と。



「無茶……爆発的……バランス……」


 何か思いついたのかな、ネルコ。



「そっか、最初からバランスなんて無視しちゃえば良いんだ」


 ほぇ?



「ちょっと魔導通信機をお借りしますねっ」


 良いけど、誰に?



「アリシエラさんに、お聞きしたいことがっ」



 ネルコがすっ飛んで行っちゃったよ。


 今の活き活きっぷりは駄目駄目モードじゃなくってクリエイターモードのネルコだったから、変なことはしないと思うけど。




 しばらくして、新しいカードゲームが発売されました。


 今までのカードが引き続き使用可能なのですが、システムが一新されまして、武器や防具などの装備カードが大量追加です。


 それと目玉の新システムがもうひとつ、


 本人参加型、とでもいうのでしょうか。



 カード売り場の店先に、絵姿カード魔導印刷機なるものが設置されるようになりました。


 排出されるカードは、世界にただひとつの本人のカード。


 簡易型ステータスチェッカーとマンガちっくイラスト作成機の組み合わせで、結構本人っぽいカードが出来上がります。


 で、パックで売っている武器・防具と組み合わせて、本人がカードバトルに参戦出来る仕様、なのです。


 装備と戦い方次第で、プレイヤー本人のカードが有名冒険者に勝てるのが売り、だそうです。



「ルミの『魔法の盾』、ズルくない? 私の全力の一撃が弾かれちゃうんだけど」


「リカは直接攻撃関係に全振りだからね。 少しは魔法にも気を配らなきゃ」


「『プリンセスドレス』装備のマクラちゃんが可愛すぎるっ、くんかくんか」


 ミスキさんちの三人娘にも大好評、なのです。



 えーと、マヤさんがアレになっちゃってるのは、お着替え機能ですね。


 お気に入りの冒険者カードに好きな装備カードを組み合わせて、絵姿カード魔導印刷機でオリジナル絵姿色紙を印刷出来る新機能なのです。



「私のUR『武神モノカ、早朝鍛錬の艶姿』に、ついにUR『神槍ゼファー』が装備されましたよ、モノカさんっ」


 おめでとう、ミスキさん。


 URがそんなにいっぱいなんて、引きが強いんですね。



「おこづかいを全投入した甲斐がありましたっ」


 あかん、こっちの世界の人たちには、まだ早かったのかも。



 そんなわけで、真ボケモノカードは大好評です。



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