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意志とまた別の応用

 ……笑いが出た。


 力の強さと弱さなんて少しも気にならなかった。それよりも失笑させたのは、お姉様の権能が持つアイロニーだった。


【呆れますね】


【何が?】


 お姉様の眉が上下した。


 明確な不快感の表現。私の言葉が何を指すのかを悟ったのか、あるいはただの予感のようなものに過ぎないのかは分からないけど……明白な挑発を吐き出すつもりだから、どちらでも私には関係なかった。


 お姉様を強く睨みつけながら言葉を吐いた。


【過去にばかり埋もれて未来を捨ててしまったお姉様が、過去を飲み込んで未来を弄る力を使っているのが私は呆れ果てます】


【……ふむ。否定はできないわね】


 お姉様は意外にも苦笑いと共にあっさりと認めた。


 しかし次の瞬間、眼差しがより強い敵意と明確な拒絶の意思を露わにした。


【けれど、どんな力を持っているかはそれほど意味がないわ。力だの権能だのというものは結局手足と同じよ。誰も手足の動きと存在意義にいちいち意味を付与しようとはしないでしょ?】


 お姉様の声と刃が同時に私を貫いた。


【っ!?】


 剣も魔力も動くのが見えなかった。ただ言葉を終える瞬間に刃が私の体に食い込んだだけ。驚きながらも瞬間的に退いたけれど、既に刃が胸を深く斬り裂いた後だった。


 お姉様は踊るような足運びで動き始めた。


【この力にどのような意味があり、それをあなたがどう思うかは関係ないわ。私にとって重要なのは、この力が私にどんな可能性を与えるかということだけだから。そして私に必要な可能性はただ一つだけよ】


 一文字一文字を発音する度に、それが合図になったかのように体のあちこちに傷が増えていった。剣を振るうのが見えもしないのに刃が続けて私を斬っていた。


 未来を操作する力と時間を呑み込む権能の組み合わせ。剣を振るって来るという過程を吹き飛ばして、既に剣が私の体に侵入した瞬間から時間が流れるようにしたのだ。いくらお姉様でも神を相手に過程を完全に省略して結果だけを残すのは不可能だけど、この程度だけでも相当な力だった。


 しかし決定的な脅威と言うほどではない。誰よりもお姉様自身がそれをよく知っていた。


【そろそろ退場の時間ね】


 空間が再び閉じ始めた。お姉様が再び私を牢獄世界から排除しようとしているのだ。


【退場する時が来たらします。お姉様を連れてね!】


 剣を横に強く一度振るった。私を牢獄世界から追放しようとした力が粉砕された。そして返す剣に魔力と心を力一杯込めた。


 お姉様はそれを軽く受け止めたけれど、その瞬間私の力が爆発するように膨れ上がった。


 ――神法〈時間操作〉


 噴き出したのは時間を操作する権能の最も基本的な力。今この場でできることといえば順序を少し混ぜて捻じる程度しかない。本来なら。


 しかしそんな基本的なもので終わらせるほど間抜けじゃないよ、私は。


 視界に映る空間が歪みながら奇妙な光を放った。実際に時空間が歪曲されてもいたけど、それ以上に私の神眼が目に見えないものまで全て捉えていた。


 それはお姉様が権能によって見通し捻じっている現実の流れだった。


 その流れに魔力の手を伸ばして、無理やり私が望む方向に再び捻じ曲げるイメージで干渉した。


 お姉様はすぐに気づいて再び干渉してきた。


【なに、私の領域で正面勝負をするつもりかしら?】


 蔑視するのではなかったけど、自信が感じられる口調だった。それも当然だろう。私の権能は過去に偏重しているから。時間操作という共通分母を借りてお姉様の力に干渉しようとしても、力の本質から劣勢でしかない。


 もちろん私はバカじゃない。


【まさか】


 ――神法〈全ての光を燃やす松明〉


 お姉様が支配する時間の流れのあちこちに異質な光が混じり込んだ。


 同時に周辺に展開されたのは無数の色彩の魔力。一つ一つが強大な魔力でもあったけれど、感じられる気配が全て違った。


 お姉様はそれが何なのかを見て取って眉をひそめた。


【これは……】


【懐かしいでしょう? お姉様が捨ててしまったものたちです】


 お姉様には見慣れていながらもどこか見慣れない部分があるだろう。


 お姉様が分析する前に私の方が先に魔力をぶちまけた。それぞれの力が宿った魔力がお姉様に殺到し、お姉様はそれら全てを神力が込められた斬撃で払いのけようとした。


 しかし浴びせられた魔力の怒涛はお姉様の防御すら突破した。


【くっ……!】


 色とりどりの魔力が様々な気配を帯びて輝くのは『万魔掌握』でよく見せていたものと同じ。その中に込められた力が神力すら突破するほどだということだけを除けば。


 お姉様はすぐに正体を悟って舌打ちした。


【なかなか面白い応用をするわね……!】


【本来の力に権能を接合するのはお姉様だけの権利じゃありませんから!】


 色とりどりに輝く魔力の一部は両手の剣に込め、残りは矢のように撒き散らした。お姉様は権能と剣術で防御を試みたが、私の弾幕は威力が減衰するだけで消えはしなかった。


 ぼろぼろになった防御の魔力を突き破り、剣を前面に押し立てたまま突撃した。そして純粋に刃が届くほどの距離で魔力を解放した。


 ――神法〈結火の太陽〉


 時間の魔力の中で生まれたのは、時間とは何の関係もない別個の魔力。


『太陽』――リディアお姉さんの権能だった。

更新時間が遅くなって申し訳ありません。そして昨日更新できなくて申し訳ありません。

会社が忙しい時期のせいで続けて予想外に時間を奪われることが発生し、私の力量不足で適時に処理できなかったせいで執筆も遅くなってしまいました……。


今後なるべく更新を欠かさないよう努力いたしますが、しきりに用事が生じて容易ではありませんね。

今週末は更新を休みはしませんが、一日二回更新はできそうにありません。

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