能力を応用する方法
お姉様の剣に流れる力もまた間違いなく神のもの。その力が無数の魔力の月を弾き飛ばした。しかし一つ一つ打ち払うたびにお姉様の体に傷が増えていき、お姉様の動きが微妙に遅くなった。
お姉様は防御を止めずに眉をひそめた。
【……面白い方式ね】
お姉様の刃に流れる魔力の気配が変わった。周囲を覆った魔力の月がどんな力を持っているか看破した……というより、体で体験しているから簡単に分かったんだろう。
原理は極めて簡単だ。私の権能そのものが込められた魔力で、過去という時間の中に刻まれた経験を現在に再び蘇らせるだけ。傷や疲労のような否定的なものになることもあるし、正反対の肯定的な何かになることもある。
お姉様自身が経験してきた傷はもちろん、外部から全く違う誰かの経験を注入することも可能よ。
【面白いだけじゃないんですよ】
すぐさま突進して剣を振るった。お姉様もすぐに剣術で私を迎えた。瞬く間に刃と刃が絶え間なくぶつかり合う斬り合いが繰り広げられた。
しかし魔力の月はまだ健在で、月の群れと剣が同時に浴びせられる攻勢がお姉様を追い詰めた。お姉様は感嘆するほどの技量と力で対処したけれど、完全に防ぎきれずに少しずつ傷を負っていった。
しかしお姉様は〈五行陣・金〉の金色と極光技の燦爛たるオーロラ色が混ざり合った眼光を放ちながら、冷静に私を見つめていた。
【私に過去を再び付与するだけでなく、噴き出した魔力にも消滅の過去を上書きして無力化するなんて。それに、それを神にも通じるほどに磨き上げるなんて、さすが尋常じゃない能力ね】
【平然と品評しながら受け止めるお姉様ほどじゃないんですよ!】
そう叫びながら剣を上から下へ力いっぱい振り下ろした。お姉様はそれもまた剣を上げて防いだが、耐えて防御する力がさっきより弱くなったのが感じられた。
そのまま力を込めて押し込みながら、言葉と意志をお姉様にぶつけた。
【お姉様はいつまで他の人たちを傷つけるだけなんですか?そうやって方式を変えながら他人を傷つけるのがお姉様の趣味だったんですか?】
わざと感情を込めてお姉様に強くぶつけた。
非難しようとする気? ある。正直ないわけがないじゃない。でも単にそれだけのためにこんな言葉を吐いたのは当然違った。
お姉様は眉をひそめることもせず、ただ一度小さく弱く鼻で笑った。
【あなたこそいつまで同じ言葉ばかり繰り返すつもり? 今更言葉で説得できる状況だと思っているの?】
【勘違いがひどいですね。これは説得じゃありません。ただの腹いせです。お姉様みたいなバカにはもう言葉が通じないってことくらい私もよく分かってます】
【それなら本当に意味もなく言葉を並べただけじゃないかしら?】
お姉様は言葉の内容よりも、その行為自体が不快だというように今になって眉をひそめた。
そんな話をしている間も戦いは続いていた。私は続けて押し込み、お姉様はそれを防いで受け流しながら守勢に追い込まれた状況がそのまま。
それが改めて疑念を呼び起こした。
お姉様は堅く固まっていた。その頑固さもそうだけれど、戦闘自体もただ壁を立てて耐えるだけのような感じだった。権能もただ攻撃を吸い込んで防御的に使うだけで、今の守勢を覆そうとする苦心が全く窺えなかった。
諦めたのでなければ、お姉様が勝利への歩みを諦めるはずがない。そしてお姉様が諦めるはずもない。それなのにああしているということは何か他の企みがあるということだろう。
そう考えながらも、隙を与えないために攻撃を浴びせていた最中だった。
――テリア式邪術〈驕慢の視線〉
お姉様の眼光に漆黒の光が混ざった。同時にお姉様に続けて浴びせられていたすべての魔力の軌道が曲がった。
気配も、兆候もなかった。それなのにただ私の魔力が自ら意志でも持ったかのように勝手に動いてお姉様を逸れていった。
突然の変化に私の対応が一瞬遅れてしまった。
――極拳流〈一点極進〉
厚い魔力を纏った拳が私の腹に炸裂した。
【こんな……!?】
神の身体構造は生物体とは違う。だから腹部を攻撃されたからといって特別にダメージが強いということはないけれど……急激な変化に慌てたせいで対応が少し遅れた。
それでも権能でもう一度攻勢を復活させたけれど、今度はさっきと違った。お姉様は何もしていないのにすべての攻撃がお姉様を逸れてしまった。
お姉様は意味もなく人間のように首を傾けてほぐす仕草をした。
【解釈するのに骨が折れたわ。でももう十分よ】
【一体何を……!】
【確かにあなたの言う通り権能を使う熟練度はあなたの方が上よ。でもだからといって突破口がないわけではないのよ】
もちろんそれは私も分かっている。お姉様ならどうにか方法を見つけて突破すると信じていたから。だからお姉様が使いそうな手段を事前に想定して備えておいた。
でも今のこれはちょっと……いや、かなり予想外だった。
【あなたの権能は結局未来を見ることができない力だから。こんな方法を想像はできなかったでしょね】
その言葉を聞いて、お姉様の瞳に宿っている力を感じた。そこでようやく私はどうなっているのか気づいた。
お姉様の力は私とは違う方向で時間を扱う権能。そうだとしても現在と未来を完全に操作することは不可能だ。権能でなくても神には元々そんな力があるけれど、それはあくまで世界の中の存在たちに影響を与える程度の力に過ぎない。
しかしお姉様はその力を人間のレベルに格下げした〈五行陣・金〉と〈驕慢の視線〉に、時間を統制する自分の権能を加えて逆に神の力すら自由に操作できる力に変えたのだ。
遅くなって申し訳ございません。それでも今日中には必ず更新したくて今でも完遂いたしました。
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