仕上げの次に
僕という個人がどうなるかは確実ではない。もし耐えられなければ、人間としての僕は死ぬことになるだろう。
しかし神である僕がこの世界に完全な力を持って降臨し、その力がアルカお嬢様の助けになるのなら。結果的にテリアお嬢様を救う道につながる。
僕自身がどうなるかとは別に、それだけが遂行されれば目的は達成されるのだ。そうであれば躊躇う理由はない。
僕の判断と決意を確認し、『僕』の口元に薄い微笑みが浮かんだ。
【やはり僕か。そういうところは全く変わっていないね】
「そうだ。だから時間を無駄にするなよ」
僕も別に死にたいとか、自分の死に何の感情もないわけではない。
しかしたとえその可能性を覚悟してでも、お嬢様を救うという目標の優先順位の方が高いだけだ。
それを成し遂げられるのなら、僕の命程度は賭けてもいい。死ぬと確実に決まったわけでもないし、むしろアルカお嬢様の選択なら無事に終わる可能性の方が大きいしね。ジェリア様もそう見えたし。
手を伸ばすと、ついに『僕』も手を伸ばして僕の手を握った。力を込めて一度しっかりと握手した後、私たちの上に幻影の力が一瞬降り立った。
カーテンのように垂れ下がった力が引いた後、その場には一つの肉体だけが残った。
「……不思議な感覚だね」
そう言ったのが僕なのか『僕』なのかは自分でも区別がつきにくかった。同じ目標と方向性を持っているもう一人の自分とはいえ、異なる自我が混ざって自己の境界があいまいになった感覚はあまり愉快ではなかった。
もちろん、その程度の理由は歩みを止める理由にはならない。
自我はまだ分離していたが、魔力は驚くほど滑らかに融合した。まるで水がたまった湖にさらに水を注ぎ込んだだけのように。肉体全体に僕のものでありながら僕のものではない超越者の力が隙間なく満ちた。
目の前には『僕』の、いや僕の幻影がまだ広がっていた。しかし僕の目が認識する光景は変わった。幻影と魔力、それが構成した世界とそれを容認した世界の本質が手に取るように感じられた。
刹那の瞬間に得た理解と決意が、行動の重みを変えた。
「行くか」
今回の言葉は僕と『僕』、どちらも異論なく同時に吐き出した宣言だった。
* * *
私が最後か。
目の前の光景だけでなく、視覚的には隠れている全ての状況を魔力で俯瞰しながら感じた。私にも変化の時が来たことを。
正面で私と同じ姿の誰かが私を静かに見つめていた。それは間違いなく『私』。かつて私だったが、バルメリア王家の後継者という立場を投げ捨て、より広い場所へと進んだ存在だった。
「君もアルカさんに引かれてここまで来たのかね?」
【既に分かり切っていることをわざわざ質問として口にするとは。未熟さが如実に表れているね】
ひねくれて人を嘲笑う態度は間違いなく私だな。
そんな無駄な自己確信を経る私に、『私』は無言で結界の糸を伸ばした。その糸が私の左手に絡まった。
【不満はあるのかね?】
「……指摘したり聞きたいことは様々あるが、今のような急を要する状況で優先するほどではないだろう」
【意外ね。お前はテリアさんをそこまで大切に思っていないようだったけどね】
確かに私は他の人たちに比べれば感情的に強い動機を持っているわけではない。それほどテリアさんと親しかったわけでもないし、彼女に恩義があったわけでもないから。
だからといって理由がないわけではない。
「この国の王子として、この国に彼女が必要な人物だと私が判断したからだ」
相手はもう一人の私自身。ならばわざわざ長々と説明しなくても、これだけで私の考えをすべて理解できるだろう。
予想通り『私』は頷いた。
【よろしい。では早速始めよう】
左手に絡まった結界の糸を通して魔力が流れ込んできた。
まるで二つの精巧な時計が一つの機械として再構成されるような感覚。すでに異論なく決定された統合は単なる過程に過ぎず、魔力の流れは効率的で簡潔だった。
どんな衝突も、どんな混乱もなかった。自我と精神の統合は不完全だったが、今は完璧に一つになる必要までは無いだろう。むしろ今の状態でそのまま一つになれば精神が不安定になるはずだ。
冷静で合理的なように振る舞っているが、『私』もまたテリアさんを憎んでいた存在。当然私とは致命的な意見の相違がある。むしろテリアさんを他の人たちほど感情的に大切に思っていない私が軽率にあの感情に混ざってしまえば飲み込まれる可能性もある。
そのため効率的に、必要な部分だけを一致させた。
全ての過程が完了した後、私は無言で目を上げた。人間の目には見えなかったが、超越者となった今ははっきりと見えた。天の彼方、宇宙のどこかで世界を壊しても余りある力を相手にぶつけ合いながら戦っている神々の姿が。
「送り出すのは私の役目だべ」
他の者たちも自力であそこまで行くことはできる。
しかし結界と空間を司る私ほど効率的に移動させることはできないし、彼らには明確な戦略もない。
唇を一度舐め、しばし戦場の状況を把握した後――私たちをどこに投下すれば良いかすぐに判断し、空間を開いて私たち自身を発射した。
***
来た。
惑星の方から巨大な魔力の波動が広がり、それに反応するように『境界』の魔力が大きく乱れるのが感じられた。
怒ったようね。まぁ、そうなるでしょ。
召喚は終わった。融合も全て無事に終わった。そして残りの人々も全て『軍団長』の力でここに転送された。
攻略対象者五名に『光』まで加えた六名。これで五大神三名より二倍という数的優位が完成した。世界のバックアップを受ける五大神は単純に数的優位程度で倒せる存在ではないけど、この程度ならようやく対等に刃を交えることができる。
そして私がその頭数に含まれていない理由は簡単だった。
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