同じ始まり、違う心
【……ちっ】
結局私は意識を割いた。
『鍛冶』との戦いはそのまま。しかし意識の一部を分けてここではない別の場所へ送った。
かつて生きていた惑星。『軍団長』が召喚術式を完成させているところへ。
もちろん目標とする先は『軍団長』ではない。
心象世界に静かに浮かび上がったのは一つの冷たい心。
実際には激しく燃える太陽のようだったけれど、私の無慈悲な滅亡の太陽の前では氷も同然の微弱な炎。
しかし私にも決して無視できない、かすかだけどあらゆるものより鮮明に刻まれる光――リディア・マスター・アルケンノヴァ、即ちこの世界の人間の私。
彼女と私の心が魔力にて繋がったのだ。
「これって……?」
【アルカがしつこく頼むからね】
心象世界の姿は……あえて描写する意味がないほど、視界に見えるあらゆる場所に炎が溢れていた。火に関連する神である私にはまさにふさわしい光景だろう。
その中で人間の私は小さな蝋燭も同然の存在だった。それにもかかわらず私の激しい炎に巻き込まれることなく堂々と立っていた。
私を見る表情はどこか妙だった。
【もう分かってるみたいだね。アルカが何を望んでるかって】
「全部聞いちゃった。テリアを救いに行くには、あなたたちと融合してあなたたちの力を完全に発揮できるようにしなきゃいけないって」
始めから苛立ちが込み上げてくるね。
その女の名前を聞いた途端、心象世界の炎が荒々しくなった。人間の私はその勢いに驚いて後ろに下がったけれど、そもそも世界全体の火が同じように燃えていたため逃げ場はなかった。
まったく。面倒くさいね。
正直、本当に、とッッッても気が進まなかったけれど、ひとまず感情を抑えて心象を静めた。すると人間の私は安堵したように溜息をついた。
【ふん。この程度で尻込みする癖に受け入れられるのかな?】
反発心を込めて嘲りを送った。
しかし人間の私は眉をひそめながらも堂々と私を睨み返した。
「あなたこそリディアを受け入れられるの? それができないから今まで迷惑かけてきたんでしょ?」
奴はそう言いながら突然自分の心を露わにした。
心象世界であるため、まるで絵の具をぶちまけるように感情と記憶が広がった。温かく穏やかな記憶と心。しかしそれは私が最も受け入れたくなかった存在に向けられていた。
信頼。信用。友への愛情。私がアルカに対して持っていたすべてのものが、向けてはならない者へ向けられていた。
私は一気に強い拒絶感を覚えた。
いや、拒絶感という言葉では足りなかった。それは嫌悪だった。私の人生を粉々に砕いた者への感情が、どんな理由であれ私の中に流れ込むこと自体が耐えられなかった。まるで毒が流れるように、体内のすべての細胞が反発した。
【……予想はしてたけど、やっぱり汚らわしいね。見てるだけで吐き気がする】
怒りが湧き上がった。私の心象世界にあの汚らわしい汚染物が流れ込むだけでも不快だった。今すぐにでもこの繋がりを断ち切りたかった。
その気持ちを何とか何とか抑えている私に、奴がゆっくりと先に言葉をかけた。
「覚えてる? ネスティが倒れた日」
その声は静かだったけど、深かった。まるでずっと昔から準備してきた言葉のように。
その言葉に重みを感じたのは奴がそれほど重く考えているからだろうか、それとも私がそう感じているからだろうか。おそらく両方だろう。
「彼女の手を握って、もう一度立ち上がってって何度も頼んだ。それ以外何もできなかった。でも何の役にも立たなかった。一瞬たりともあの夜を忘れたことないよ。今でもはっきりと覚えてる」
……息を飲んだ。
それは私にもある記憶。引き裂きたいほど辛い過去の一ページだったけれど、どうしても手をつけられないほど大切な瞬間でもあった。
人間の私は落ち着いて私を見つめながら言葉を続けた。
「あの夜がリディアたちの……私たちの始まりだった。終わりがないと思われた絶望の始まりだった。その深淵からあなたを救い出してくれたのはアルカで……リディアを救ってくれたのはテリアだけだよ」
続けて頭の中に鮮明に描かれた。
遠い昔、いつか忘れられるだろうと思っていた記憶。しかし一瞬たりとも忘れることはできなかった。
冷たい部屋、差し出せなかった手。そして、果てしなく遠ざかっていったネスティの存在。すべて馴染みのあるその感覚。
ネスティの体がだんだん冷たくなっていったあの夜、私は何もできなかった。ただ彼女の手を握って果てしなく泣いただけ。その涙が乾ききったとき、魂まで干からび空虚だったあの瞬間。
何も言えなかった。その記憶は私の根本の一つであり……私の目の前にいるあのバカにも同じように残っているということを知っていたのだから。
しかし……苦痛の重さは違った。絶対的に違った。
【あなたは……あの時救ってくれる人に出会えたでしょ。手を差し伸べてくれる人に。リディアは違った。リディアは……もっと長い間闇の中に一人でいた】
私は込み上げてくる感情を抑えながら言った。競争でもなんでもないけど、そう言わずにはいられなかった。奴の言葉を受け入れてしまえば、決して受容したくない記憶と感情まで吸収してしまうのだから。
言わなくても感情は伝わった。私の絶望、私の苦痛、私が歩んできた果てしない闇の中の日々。人間の私が十二歳であの女に出会ったのとは違い、私は十九歳になるまで自分を蝕む罪悪感と憎しみの中で生きていた。
私たちは出発点は同じかもしれないけれど、歩んできた道の長さと深さが完全に違っていた。
それにもかかわらず、奴が差し出す感情は……不思議なほど私に似ていた。苦痛の大きさは違っても、その構造と本質は悲しいほど似ていた。
読んでくださってありがとうございます!
面白かった! とか、これからも楽しみ! とお考えでしたら!
一個だけでもいいから、☆とブックマークをくだされば嬉しいです! 力になります!




