ジェリアが残したもの
距離は遠かったけれど、感覚は正確に噛み合った。まるで異なる場所から反対方向に向かって出発した二人が一つの場所で出会うことになったかのように。
「……ジェリアお姉さん」
彼女の名前を短く呼んだ。嬉しくもあり、少し驚きもした。融合を終えたら来てくれると信じてはいたけれど、何も言わずにこんなに早く来てくれるとは思っていなかった。
『暴君』もまたお姉様の被害者であり、お姉様を憎んでいるのは同じだった。私の仲間たちの中では比較的冷静に状況を把握し、私を助けると宣言してくれてはいたけれど、憎しみは単に保留されただけで消えてはいなかった。そのため融合には少し時間がかかるだろうと思っていた。
ずっと無言で私を見つめていたジェリアお姉さんがふと微笑んだ。堂々として自信に満ちた微笑み。お姉様のせいで絶望し怒りを覚えた『暴君』ではなく、こちらのジェリアお姉さんがいつも見せてくれたそれだった。
それを見た途端に『私』が込み上げてきたのを、果たして彼女は知っているだろうか。
ジェリアお姉さんは視線を逸らし、空の上を見つめた。足元の魔力が微かに振動した。凍結した力が静かに凝縮され、次の瞬間それは翼のように広がった。
まるで数千の氷の結晶が光を反射するかのように絢爛な魔力の翼。そして一点の汚れも曇りもなかった。まるでジェリアお姉さんの心構えがこのようであると、断固たる決意に躊躇いなどないと宣言するかのように。
最後まで何も言わなかったけれど……その態度と魔力の気配こそが、ジェリアお姉さんの意思を最も雄大に代弁していた。
ジェリアお姉さんは足元に集まった魔力をたった一度蹴り上げた。彼女の体がそのまま成層圏を超え、惑星の外の宇宙へと飛び上がった。『光』とリディアお姉さんが戦っている戦場へと。
「ありがとうございます」
聞いているかどうかは分からなくても、感謝だけは残しておきたかった。
そしてまた訪れた真の静寂。ジェリアお姉さんが現れた痕跡のせいで、まだ周囲が冷たく沈んでいた。でも私にはむしろ暖かく感じられた。まるでジェリアお姉さんが今私の手を握ってくれているかのようだった。
指先の力を抜きながら一度深呼吸をした。ジェリアお姉さんはあえて言わなくても最善の行動を取ってくれるはず。だから心配する必要はない。このまま次へ向かえばいい。
そう思いながら再び魔力を調整しようとした瞬間だった。今度は全く異なる方向から空間が歪んだ。
呼びかけもなく、前兆もなかった。なのに気配が生まれた。それは私が作った召喚の門ではなかった。そもそも空間の隙間が開いた様子がかなり荒々しかった。私はあんな風には作業しないのに。
その荒々しい空間の隙間からジェリアお姉さんの魔力が感じられた。そして光の粒子がひらひらと舞い散り、大地に降り立つとすぐに膨らみ上がってそれぞれ人間の形を作り上げた。
ケイン王子殿下。ロベル。シド。そしてリディアお姉さん。まだ邪毒神と融合していない攻略対象者全員だった。
どうやら事前の合意などはなかったようで、四人とも混乱している様子だった。しかしケイン王子殿下はすぐに気を取り直し、状況を把握しようと周囲を見渡した。ジェリアお姉さん以上に冷静さと理性を重視する彼らしく、感情を表に出すよりも分析を優先する姿だった。
ロベルは静かに私の視線と合わせた。何が起きたのかまだ把握できていないけど、私のすることを信じて助けてくれるという意志が垣間見えた。
……えっと、あの。四人をここに呼んだのは私がしたことじゃないよ。
どうせ必要なことではあったけれど、ロベルのあんな視線を受けていると何だか照れくさかった。
一方シドお兄さんは最も大きく動揺していて、リディアお姉さんはそんなシドお兄さんを呆れたように見つめながら何か言っていた。相変わらず仲が良さそうだね。
……『私』の仲間である『心臓』と『太陽』はあんな関係ではなかったのに。考えてみればそれもこの世界と時間線だけの特徴でもあった。
それぞれの感情はそれなりに整理がついたようだけれど、逆に私はため息をついた。
「……ジェリアお姉さんったら、勝手にこんなことを……」
非難ではない。小さな驚きももう過ぎ去った。ただ少し呆れただけだった。
ジェリアお姉さんはいつもそうだった。誰よりも冷静に、いつも正確に必要な瞬間に必要なことをやり遂げる人。私にはお姉様と一緒に二人で先に進む姿ばかり見せられて追いかけるのに戸惑うこともあったけれど、逆に『私』は『暴君』のそういった部分に感謝しながら共に走り抜けていく存在だった。
まぁ、こうして何も言わずに核心となる人々をこの場所にぽんと落としてきたのは少し驚いたけどね。
どうせ残りの人々の融合のためには集合する必要はあった。リディアお姉さんの方は『太陽』が戦場に出て戦っているので呼び寄せる必要があるけど、残りの人員はこの場所にいてもらう方が楽だ。召喚を完了するとすぐに次に進めるから。
むしろ私は召喚の儀式を進めるのに忙しかったので、ジェリアお姉さんが一歩先に判断してくれたのがより有り難いことだった。
「みなさん、少々お待ちください。説明はジェリアお姉さんから大まかに聞きましたよね?」
そう言い残して目を閉じた。
今私が最優先すべきことは『外』の友達を呼び寄せること。最初に召喚する対象も既に決めていたので、残るのは手順をそのまま進めるだけだ。
周囲の状況が少し変わったけれど、私の決意は変わらなかった。お姉様を救うために、お姉様のバカなことを止めるために、数億回繰り返してきた意志をもう一度貫くだけ。
いや、その数億回を今こそ終わらせるために今努力しているんだ。
そしてその準備はほぼ終わった――少なくとも次の一人のための道は、ほぼ完成した。
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