始祖と末裔
魔力にて爆発するため酸素など必要ない花火が宇宙空間を華麗に彩った。
爆炎が幾重にも重なり増幅された末に、もう一つの太陽となったかのような光景。しかしその中で神の炎を何ともなく耐え抜く魔力の気配を確かに感じた。
【アルケンノヴァのご子孫でいらっしゃいますか】
声が響き渡った直後。太陽のように燃え盛っていた炎が、内部から爆発した力の嵐によって瞬く間に散った。
その中から現れたのは傷一つない『鍛冶』の姿。彼女を守り砕けたと思われる兵器の破片が周囲に舞っていたが、彼女自身には攻撃が届いてもいないようだ。
まぁ、たかがこの程度で大きな打撃を受けるほどの存在なら、アルカがあんな苦労をしなかっただろう。
【よくもアルカに剣を向けたね。このリディアが許すと思った? たとえ始祖であろうとも許さないんだから】
私の宣言とともに、感情たっぷり混じった赤い魔力が渦巻いた。
私の存在理由はただ一つ。アルカを守ること。
たとえ彼女が救おうとする対象が私が最も憎む存在だとしても、だから私が彼女を正しく助けられないとしても。アルカに敵対する者を排除することくらいはいくらでもできる。
……たとえそれがあのろくでもない女を救う道につながってしまうとしても、目をそらして耐えればどうにかなるだろう。
一方『鍛冶』は無言で鋭い眼差しだけを私の方へ向けた。その眼差しよりも更に鋭く輝く剣が右手に握られており、周囲に漂っていた魔力が瞬時に無数の兵器を生み出した。
しかしそれよりも更に後ろで、二つの巨大な棺が姿を現した。
――『無限の棺』権能発現〈一象軍団〉
左の棺から剣一振りが、右の棺から槍一振りが飛び出した。
『無限の棺』はアルケンノヴァの始祖武装。本来は入力された設計図に従い、魔力量が許す限り無限に兵器を作り出す能力を持っているが……ただ一つ、無限という名を完全に逆行する権能を持っている。
それがまさに〈一象軍団〉――軍団を成すことができるほどの兵器を一振りに凝縮した究極の一つを作り出す能力。
一つを作り出すだけでも莫大な力と集中が必要だ。恐らくこの世界にいる人間の私はまだあの境地に到達してもいないだろう。そもそも武装を扱う能力だけで言えば、神である今の私でさえ二振りを一度に作り出し扱うことはできない。
それを両側の棺から一つずつなんて、さすが『無限の棺』の元の主人と言うべきか。まぁ、私はできないというよりそもそも別の方に特化したため修練する理由がなかったことに近いけれど。
『鍛冶』がさっきから握っていた剣に今作られた究極の剣が吸収されて融合し、槍は空いていた左手に握られた。
もちろん私もただ見物しているわけではなかった。
――『アーマリー・ウィング』権能発現〈太陽の翼〉
私の背中に展開されたのは八つの鋼鉄の柱が一対の翼を成した集合体。
外見では『無限の棺』が細くなったような柱で構成されたこれは、実際に『無限の棺』が変形されたものが正解だ。私の『アーマリー・キット』と『無限の棺』が融合した固有武装だから。
その鋼鉄の翼が円形の陣を成し魔力を噴き出した。そうして構成された術式から様々な素材と『結火世界』の赤い宝石で構成された長銃の部隊が作り出された。
始祖と末裔。
個人の能力も違えば、血統の力を使う方法も違うけど――アルケンノヴァの真髄を備えたという点では違いのない私たちは、誰が先ということもなく互いに向かって飛びかかった。
最初に火を噴いたのは私の長銃部隊。
一発一発が神の眷属さえ瞬殺できる魔弾が弾幕を成すほど撒き散らされた。そしてそのすべてが互いに共鳴し巨大な魔力場を形成した。
〈一象軍団〉とは異なる方法で力を一つに集中する形。それが巨大な爆撃となって注がれた。
『鍛冶』は左手に持った槍を振るった。巨大かつ鋭い力が熱炎の魔力場を一撃で破壊した。その余波が突進中の私にまで届いた。
【ふん!】
剣を振るって魔力波を払い除けた。しかしその後に続くように接近してきた『鍛冶』が剣撃を放った。私は剣で防御態勢を取ると同時に、再び魔弾を浴びせて共鳴術式を形成した。
一振りに驚異的な力を凝縮した剣と槍の攻勢を、無数の魔弾の共鳴が生み出した増幅で受け止める。そして共鳴術式で増幅された剣撃が光線となって注がれたのを二振りの究極が連続して受け流した。
兵器と魔力が衝突し、爆発より強烈な波動が戦場を満たした。
激突が幾重にも重なる中、目の前で弾ける魔力の火花が徐々に私の闘志を煽った。
アルカの敵へ向かって湧き上がっていた憤怒が徐々に巨大化し、方向性のなく燃え盛る炎そのものとなった。
戦闘の興奮。敵を倒そうとする闘志。仇への怒り。そのすべてが剣と魔力の激しさとなって噴き出した。
テリアへの憎しみも、今この瞬間だけは後回しになった。
憎しみを込めて剣を振るい、目の前で爆発する魔力に刺激されてさらに怒りを燃やす否定の循環。実に久しぶりに訪れた直接戦闘の高揚感が昔の興奮を蘇らせた。
躊躇なく『鍛冶』へ向かって飛び込みながら、すべてを消し去る勢いで熱炎を炸裂させた。
* * *
これが神座に上った後裔の力か。
熱い感情と魔力をぶつけてくる相手を正反対の冷静さで受け流しながら、目の前の後裔をじっくりと観察した。
彼女の感情は決して軽くはなかった。いや、むしろ重荷になるほど重く激しかった。そしてその感情をあからさまに露わにするかのように、彼女の魔力もまた狂い暴れていた。
それを受け止めながら心の中で一つの感情が湧き上がった。
……眉をひそめさせる感情が。
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