それぞれの視線
剣先で舞う『光』の権能。
三名の五大神を相手にしても、あたしの剣と光は有効だった。指揮棒のように振るわれた剣が光の線を描き出しながら、敵対するすべての魔力を払いのけ、奴らの接近を一歩たりとも許さなかった。
だがそれも完璧ではなかった。
戦場を切り裂く光輝が一瞬揺らいだ。あたしのミスではない。あたしを倒そうとする奴らの魔力が、本来すべてを制圧し支配したはずの権能に隙間を作り出したからだった。
『境界』の結界はあたしの力を徹底的に弱めることに集中し、『幻惑』が生み出した幻影は神の目さえ欺く巧妙さと徹底さで力の向かう先を分散させ、その分散された力を『鍛冶』の兵器が叩き落としていた。
一対一であれば一つ一つが大きな脅威にはならなかっただろう障害たち。あるいはあたしが五大神としての全力を使えたなら、三人相手でも完璧に防げただろう。
けど今のあたしではこの三人を相手に完璧に防ぎきることはできない。
もちろん最初から分かっていた事実で、だからこそより一層精神を研ぎ澄まして戦場のあらゆる状況に対応しようとしていたけれど――。
「!」
発生するのとほぼ同時に気づいた。
視界の端で鋭く研ぎ澄まされた軌跡が一つ光った。『鍛冶』の武具だった。
彼女がずっと待っていたであろう瞬間。攻勢を防ぎながらあたしの力が揺らぐその刹那を、ずっと狙っていたのだろう。
数多の兵器を即席で作り出し操りながらも、後ろで常に鍛え続けてきた一振り。兵器を遠隔操作するだけで『鍛冶』自身は息を潜めて待ちながら、たった一振りの剣を鍛え魔力を凝縮し、最も効果的な瞬間に最も集中した力を噴き出すために。
強烈な光が一筋の剣閃となって戦場を横切った。
あたしの剣の軌跡を弾き返し、光の流れを正面から切り裂き、一瞬にしてあたしの脇をかすめて過ぎ去った。
【しまっ……!】
広がっていた光の刃の一部が『鍛冶』を切ったけど、彼女は浅い傷など意に介さず、力と速度で瞬く間に防御線を突破した。
そしてそのままアルカに向かって突進した。
すぐさま剣を振るった。だがその瞬間『境界』の力があたしの速度を鈍化させ、『幻惑』が弾丸のような勢いで放った分身が剣を阻んだ。分身自体は一撃で粉砕されたけれど、その時すでに『鍛冶』はさらに遠くへ行ってしまった後だった。
【ちっ!】
もちろんこういう状況に備えた保険はあったけれど、こんなに早く使うことになるとは思わなかった。
あたしは急いで術式の起動のために魔力を展開し――。
* * *
わたくしは機会を逃さなかった。
手に握っているのは一振りの剣のみ。
華やかな装飾も流麗な曲線も全くない剣。商品として出せば余りにも単調で単純すぎて人気がないだろう。
しかし無駄なものを全て排除した分、剣としての威力は確かだった。
【ふぅっ!】
わたくしたちの攻勢を受け止めていた『光』の力がわずかに揺らいだ瞬間、その隙を全力で突いた。わたくしの力の精髄が込められた剣と共に突進しながら、一撃で一気に道を切り開いた。
神眼で睨みつける先は唯一つ。世界の秩序に穴を開ける邪毒神――アルカ・マイティ・オステノヴァ。
彼女は以前からわたくしたちが注視していた存在だった。
……彼女の目的が何かは知っている。
その目的自体に異議はない。しかしそれを為す手段として勝手に時間を繰り返させながら平行世界を量産し、そのすべての世界に悲劇を起こしたまま放置した。そして今になって世界に穴を開け、複数の邪毒神を召喚しようとしている。
平行世界が増えても五大神は増えない。ただ唯一の存在であるわたくしたちがそのすべての世界を同時に管轄するだけ。特に仕事が増えること自体は構わないが、わたくしたちの力がそのすべての世界に分散されることが問題だった。
力が分散されるほど、当然一つの世界を司る力は落ちる。今も正直負担がぎりぎりのレベルで、ここからさらに増えでもしたらわたくしたちの力が持ちこたえられずに崩壊する可能性もある。そうなればそのすべての世界が危険にさらされる。
アルカがバリジタを止められないわたくしたちを恨むのは分かっている。しかし――端的に言えば、彼女の蛮行によってわたくしたちが弱くなったことこそがバリジタと敵対できない最大の原因なのだ。
もはや一人のために世界の秩序と存立そのものを脅かす行為を放置することはできない。
『光』の阻止線を一気に突破し、さらに猛烈に疾走した。
しかし突進する間にも、わたくしの心のどこかに『光』の言葉が残っていた。
『あたしたちが何を守ろうとして立ち上がったのか、あの最初の日にあたしたちが見たものがその頭の中に残っているのかしら?』
世界はその中で生きるすべての存在の盾。世界が崩れればその中のすべてのものが終末を迎える。だから世界を守ることはすなわちすべての人を守ることだ。
……しかし見る視野が大きくなりすぎた後、小さな者たちの苦痛に鈍くなってしまったのも、否定できない事実だ。
そして『光』は愚かではない。アルカの蛮行がどんな事態を引き起こしたのか分かっていながら助けているということは、何か方法があるということではないだろうか。
そんな考えがわたくしの魔力をほんの少し、一瞬だけ鈍くした瞬間――突進していたわたくしの目の前で爆裂した閃光が弾けた。
* * *
隙間が割れ、長い間見ていなかった光が目に注ぎ込んだ。
もちろん私にとっては感慨も何もない光景に過ぎなかった。
私が睨みつけているのはあくまでも敵。私が爆殺すべきもの、我がアルカに刃を向ける屑どもだけだ。
【――死ね!】
振るった剣に従い、太陽より強烈な光と炎が走った。それが銀色の閃光を迎撃した。
もちろんこの程度は挨拶に過ぎない。せいぜい突進を阻止する程度の効果しかない。
そのため躊躇なく銃を抜き、瞬間的に出せるすべての魔力を込めて撃ちまくった。
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