変わったものと目睹
もちろんこれだけでは『鍛冶』の攻撃が少し鈍くなるだけだ。まだ彼女の信念を崩すほどではない。むしろ何百年もの間人間を離れ世界を守りながらも、頭が固まってしまった他の奴らに比べて人間的な躊躇いを保っているのが不思議なことだ。
だからあたしも決意を固めて剣を握り直した。堅くて鋭い剣だったけれど、心に抱いた確信はその剣よりもさらに堅固で鋭利だった。
あたしが守るべき場所はここだ。誰一人としてこの線を越えさせない。
戦い自体に勝てればベスト。しかしそれは現実的に難しい。一方でわたしたちの敗北条件は単にあたしが戦いの中で倒れることではない。
戦いに勝てなくても、アルカの召喚の儀式が邪魔されなければこちらの勝ち。たとえ戦いには負けても、命を懸けてでも介入を防ぐまでのことだ。
だから一人たりともアルカに向かわせない。
【あなたたち皆同じよ。高い場所から見下ろす立場になったからといって、昔の夢と理想をすっかり忘れ去り排斥するようになった今のあなたたちを……かつてのあなたたちが見たらなんと言うかしら?】
三人の五大神は一瞬立ち止まった。
あたしの言葉が彼らの心に起こした波紋は小さい。しかし確実に広がっていくのが感じられた。
それでも彼らは一瞬たじろいだだけで、敵対をやめはしなかった。あたしもそうだろうと思っていたのですでに対応していた。
信念と信念の衝突を象徴するかのように魔力が絶えずぶつかり合い、互いを食い裂こうと暴れまわった。
あいつらも別にアルカを憎んでいるわけじゃない。ただ彼女が『隠された島の主人』の権能を使って行おうとしていることが世界の法則を壊しかねないと考えているから敵対しているだけだ。
一方であたしが見たのは、幾億回もの失敗を経ても姉を救おうとするアルカの意志だった。
状況も場合も行動も違うけれど、アルカを見るたびに……なんとかしてイシリンを救おうともがいていたあたし自身の試行錯誤が目の前にちらついた。
ただ大切な家族を救おうとする子孫に、あたしよりもずっと多くの失敗と絶望を味わってきたあの子に、せめて結果だけは成功を贈りたかった。
その決意を魔力と光で編み上げ、目の前の〝敵〟たちにぶつけた。
* * *
到着したことにも気づかなかった。
『バルセイ』にて攻略対象者という存在に分類されていた私たちはジェリアを除いた全員が集まっていた。状況がどのように展開しているかは把握していたし、私たちがすべきことも明確だった。そのため躊躇いはなかった。
そんな私たちのそばに、いつの間にかジェリアの姿があった。
彼女の気配は静かだった。いつものように冷静で理性的な様子で、戦わないときに使う眼鏡さえそのままだった。普段の彼女と変わった点など何一つなく、見慣れた彼女そのものだった。
しかしその見慣れた姿が不思議なほど馴染みのないものに感じられて、私は何も言えないまま静かに彼女を見つめていた。
外見は以前と同じだった。武装も、表情も、ただ額に生えた角だけが以前よりも少し大きくなっていた。
しかしその角よりも、彼女の視線に何か説明できない違和感を感じた。まるで彼女の中に別の誰かがいて、その誰かが私を見ているかのように。
まるで二つの影が一つの形の上に重なっているような感覚だった。ジェリアは確かに私の知っているあのジェリアだったけれど、同時に何かが……加わった状態。彼女の中で二つの存在が調和して共存していた。
どうなっているのか予想はできたけれど、簡単に質問で確認するのは難しかった。馴染みがなくてそうだったのもあるけど、何よりも……この後に訪れる状況が少し怖くもあった。
遠くから雷のような魔力の振動が微かに感じられた。『光』と五大神たちの戦いが激化していることを知らせる合図だった。遠くで戦っているにもかかわらず、ここにいる私たちにまで感じられるほど巨大な波動だった。
ジェリアの目が一瞬その方向を向いた。
「アルカはすでに邪毒神の召喚を始めた」
ジェリアは口調を落とし、淡々と説明を始めた。
「今までは『光』が阻止してくれているが、恐らく最後まで持ちこたえることはできないだろう。相手は五大神が三体、しかもすべて世界のバックアップを受けているからな。だから『光』の防衛線が破られる前に戦力を補強しなければならぬ」
淡々と状況と必要なことだけを伝える口調。
異質な何かが混ざったとしても、ジェリアはジェリアだった。
淡々としながらも断固としており、その中に躊躇いや不安はなかった。ただすべきことをしっかりと見据え、躊躇うことなく一歩を踏み出すだけ。
その堂々とした態度と自信がいつも羨ましかった。私自身がそんな態度で目の前の絶望を乗り越えられなかったからこそ、なおさら。
しかし……そんな私自身を私の代わりに立ち上がらせてくれたテリアのために前に進もうとしている点では、私もジェリアも全く変わらなかった。そして他の皆も。
ジェリアはふと視線を再び下に向け、私たちの方を向いた。そして少し息を整えた後、少し変わった口調で静かに言った。
「すまない。ボク自身もまだ慣れていなくてな。ともかく……アルカが『ボク』を呼び出したのだ。今はアルカと同じ状態だ」
「アルカと同じ状態って……」
「融合したぞ。邪毒神としてのボク、『隠された島の主人』であるアルカの仲間の『攻略対象者ジェリア』とな」
ジェリアは私たちを一人一人見回しながら言った。
「融合といっても、二つの自我が完全に一つになったわけではない。一つの体に二つの精神が共存する奇妙な感覚だ。何と説明するのは難しいが……一つだけ確かなことがある。今のボクには、あの神々の戦線に飛び込む力があるということだ」
おそらく今は説明のために私たちの友人である人間のジェリアが出てきて話しているんだろうね。
なのにどうしてジェリアの視線がぶれることなく私を貫いているんだろう?
その視線は確かにジェリアのものだったけれど、同時にジェリアだけのものではなかった。
私はその目の中のどこかで、以前一度も見たことのない深さを見た。
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