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彼女たちと自分たち

【他の五大神はそうではないということか?】


【当たり前だ。元々お前らの味方の『光』は今回もお前らを助けるだろうが、残りの三柱はお前らに対してはっきり否定的だぜ】


 どうしてかという質問はあえてしなかった。


 ボクたちは摂理を超越して神となり、邪毒神として戻ってきた。邪毒神となった時点で容認し難いということだろう。


 しかもボクたちの……正確にはこちらのアルカの目的はこの世界のためではない。いくら繰り返しても悲劇の運命から逃れられないテリアを救うことだけ。そしてそのためなら世界に害を与えることも躊躇わない。


 ……今さらの話だが、実際に五大神に先に喧嘩を売って戦いまで起こしたこともあったのだ。


 始祖はボクに近づくとボクの肩にポンと手を置いた。


【ぶっちゃけオレもお前らに対して手放しで肯定的ってわけじゃねぇが、それでも哀れに思う気持ちはあるんだよ。お前の言う通り、オレが発揮した戦力はオレ自身の力だけで、五大神の力は使わなかった。だが他のやつらは違うだろうな。お前らを本気の戦力で阻む奴らもいるんじゃねぇか】


【構わぬ。ボクたちが負けることはありえぬ】


 奴らの力については既に知っている。五人の勇者の伝説は有名だったし、ボクたちは実際に奴らと戦ったこともあるからな。……当時はなぜ無駄な戦いを挑むのかとアルカを叱ったものだが。


 始祖はボクの自信に満ちた言葉を聞くとニヤリと笑った。


【いい根性だ。まぁ、頑張ってみろよ。オレはお前らを積極的に助ける気はねぇが、邪魔をしねぇ言い訳くらいはできたからな】


【ふん。言うまでもあるまい】


 始祖を置いて惑星に戻った。


 始祖との戦いは時間にすれば刹那の出来事に過ぎず、惑星に戻るのも瞬間移動と変わらない。だから惑星で起きたことはあまりないだろう。


 少なくともアルカのやつが話を少しは進めておいてくれていることを願うべきだな。




 * * *




【合意は終わったか?】


『私』と融合し、気勢で決意を叫んだ直後だった。


 どこからかもう一人のジェリアお姉さんが現れた。


『凍てついた深淵の暴君』。『私』が最初に存在していた世界のジェリアお姉さん。『火』の五大神と戦っていたはずだけど、と思った瞬間に別の考えが浮かんだ。


 すでに『火』との戦いは終わっているはずだ。ジェリアお姉さんが勝つことはすでに予想された結果だったし、神の戦いにかかる時間なんて一瞬に過ぎないのだから。


 ……これは『私』の判断だ。まだ自我が完全に融合していないため、他人のもののように感じられてはいるけど。


「今来ました?」


【いや、戦いは随分前に終わった。来たら重要な瞬間のようだったから状況を見ていただけだ】


「邪毒神が陰険に偵察でもしたのか?」


 こっちのジェリアお姉さんが突き放すように言った。すると『ジェリア』お姉さんは嘲笑うように口角を上げた。


【重要な時には察して行動するものだ。君にはそれくらいの常識もないのか?】


 次に『ジェリア』お姉さんは腕を組んで、一つ一つ吟味するように私を見た。


【ふむ。融合は上手くいったようだな。正直ボクは本当に可能なのか半信半疑だったが、結果を見れば認めざるを得ないな】


「私が言ったでしょう。お互いの合意以外には何の問題もないって」


 これも『私』の答え。


 自分でありながら自分ではない自我が共存するのは実に奇妙な感覚だった。でも別に不快ではなかった。これも私自身だからだろうかな。


【それで? 予定通り行くのか?】


『ジェリア』お姉さんが目を鋭くして尋ねた。


 予定通り――その意味もまた『私』の記憶の中にあった。今の私のように、他の邪毒神たちもみなこの世界の存在たち――攻略対象者たちと合一するのかということだ。


「もちろんです。そのために始めたんですもの」


【……ふむ】


『ジェリア』お姉さんはジェリアお姉さんの方を見て、何か悩みがあるような顔で腕を組んだ。


 ジェリアお姉さんがその様子から何かを感じ取ったように声をかけた。


「何だ? 今のアルカのように残りも融合するということではないのか? 成功を断言できない理由でもあるのか?」


【いや、融合自体は成功するだろう。原理的には『主人』がやったことと変わりはないからな。ただ……融合後が問題だ】


「融合後?」


 ジェリアお姉さんは理解できずに眉をひそめた。


 しかし私はそれが何を意味するのかすぐに気づいた。それが私なのか『私』なのかはよくわからないけど。


「……お互いが反発することを懸念しているんですね」


【反発ならまだましだ。再び分離もできないまま互いに矛盾した感情がぶつかり合った末に精神が崩壊しても不思議ではない】


 ジェリアお姉さんは説明しろとばかりに眉を上げた。


『ジェリア』お姉さんはため息をつくと指を一本立てた。


【忘れているようだが、ボクらと貴様らの間には致命的な違いが一つある。テリア・マイティ・オステノヴァに対する感情だ】


「テリアに対する?」


 ジェリアお姉さんは一瞬理解できずに聞き返した。しかし答えが返ってくるよりも先に、ジェリアお姉さん自身が気づいて目を見開いた。


『ジェリア』お姉さんの言葉が続いた。


【気づいたようだな。そうだ。ボクらはアルカを助けるためという一念で人間の枠を捨て去り神座に上った。だがそうしたからといって憎しみが消えるわけではない。いや、むしろ神となったがゆえにより強い形でボクらの中に居座ってしまったのだ】


 お姉様は元々みんなの敵だった。


 すべての人の弱点を突き、利用できるだけ利用し、哀れな命と心を踏みにじり蹂躙した。『バルセイ』とは、それの原本となった『私』の人生とはまさにそのお姉様の悪行を償っていく苦行の道だった。


 その中でも攻略対象者たちは最も大きな被害を受けた人たち。つまりお姉様の被害者たちなのだ。


 一方でこの世界の攻略対象者たちはみなお姉様を格別に大切にしている。お姉様の努力と心根を認め受け入れた人たちばかりだ。


 ……そりゃあ衝突するわけね、これは。

読んでくださってありがとうございます!

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