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前に進もうとする歩み

 今はそんなことよりも。


「新たに神となりし者をここに呼び寄せたのには理由があるんでしょうね。何のためかしら」


 彼が答えたのは昇天した者をここへ誘導する仕組みについてだ。そう作った理由までは聞けなかった。わざわざそんな構造で設計したということは、きっと目的があるのだろう。


 パルガマインは自分の前に広げられた書類の一つを手に取った。そして目でそれをじっと見つめながら口だけを動かした。


「一つ目はどのような存在なのかを確認するためだよ。そして二つ目はその者の権能を把握するためなんだ。誰であれ、神というのは存在自体で多くの世界に影響を及ぼすからね。各世界を調整する僕としては知っておかなきゃいけないんだ。まぁ、わざわざここに呼ばなくても大抵のことは分かるんだけど……これだけは僕が確実で徹底的なのを好むからそうしているんだよ」


 権能。


 そういえば考えもしていなかった。神の権能というものに何度か触れはしたけれど、そもそも私自身が本当に神の座に就いたのかどうかも少し曖昧な状態だったから。それに神という存在について正確に知っているわけではないので、私自身が何を得たのかもまだ自覚がなかった。


 まだ邪毒の剣の状態のイシリンが声を上げた。


【神……パハールには皆、権能が一つずつあるわ。いいえ、権能こそがパハールの証明というのがより正確な表現ね。あなたもパハールの座に就いた以上、当然あなただけの権能を覚醒したのよ】


「ではテシリタにも権能が生まれたってことかしら」


 ふと気になってそう尋ねた。


 イシリンが答える前にパルガマインが首を横に振った。


「そのテシリタという子はパハールにはなれなかったんだ。そもそもあの子はパハールの眷属となって存在の格が上昇しただけだからね。あの子は下位神(リメンシ)……君の知る概念に例えるなら神ではなく天使に相当する位置なんだ」


 また知らない概念が出てきた。


 正直好奇心が湧き上がったけれど、今はそんなときではないと無理やり押し殺した。どうせここで聞かなくても分かるようになるはずだから。


「権能ですって。ここで実演でもしろってことですの?」


「いや。見るだけでも分かるよ。ただ、それをより正確に分析するためにこれがあるんだ」


 パルガマインはようやく私に視線を戻しながら、自分の手に握った書類を強調するように上げて見せた。


 私に向けられた眼差しにふと感情が宿った。あれは悲しみ……だろうか。


「とりあえず聞くけど、君はそのような権能で良いのかい?」


「申し訳ございませんが、私はまだ私の権能というものが何なのかもよく分かりませんわ」


「自分自身に目を向けてみてよ。少し見つめれば自然と分かるはずだよ。それは君の力であり、パハールの座に就いた以上すぐに分かるはずだからね」


 その言葉を聞いて自分自身を把握するために目を働かせ、……すぐに分かった。私自身の権能だけでなく、神の権能というものの本質について。


 神というのは世界の一般的な法則を超越した存在。単に強大なだけではなく、世界のあらゆる法則から逸脱した力を振るう者を指す。神の座に就くための条件の一つが世界の外へ飛び出すことなのも、そのような本質と繋がっている。


 そして神の権能というのは法則を逸脱した力の証明。


 数多くの世界が存在し、各世界ごとに少しずつ法則が異なる。しかし法則の違いには限度がある。


 神の権能とは、そのすべての世界の法則から逸脱した固有の力。


 こうなってみると理解できた。バリジタの『創造』は単に物を作り出すということが問題なのではない。


 存在しなかった物質とエネルギーをゼロから作り出すこと。時間のすべての過程……誕生、発展、衰退、消滅。どの世界も誕生はただ最初に作られるときだけ行われ、その後は世界の中で完全に新しい物質やエネルギーが新たに創造されることはない。バリジタの『創造』はまさにそれを行うがゆえに神の権能なのだ。


 ……そして、私の権能は。


「かなり人間的な御方ですわね」


 なぜあんな眼差しで大丈夫かと尋ねたのか。その意図を理解すると笑みが浮かんだ。


 しかしパルガマインは相変わらず真剣だった。


「権能は自身の本質と精神が全て調和して誕生するものなんだ。本来なら自分に最も適した能力を覚醒するし、僕だってそれを勝手に変えてあげることはできないんだ。でも神になったばかりの今はまだ存在が不安定なんだ。今ならば一度だけ権能を変えてあげることができるよ」


「お言葉は有り難いですが、遠慮させていただきますわ。既に何をするか決めましたから」


 私の権能が何なのか、それが何であるかを把握した瞬間にすでに前途を決めていた。


 だからこそパルガマインがどんな考えで私にあんな提案をするのかもすぐに分かった。だからこそ彼の提案を受け入れることはできない。


 パルガマインは目を一度閉じてから開いた。再び彼の視線が私に向けられたときには、すでにさっきの感情が消え去り平坦になった後だった。


「君が選んだ道がそれならば、僕が止める道理はないよ。望むようにしていいよ。ただし、それが君の周りの人々が望むことかはよく考えてみてね」


「そんなの考える必要もありませんわ」


 これから私がすべきこと。


 誰にも説明はしていなかってけれど、もし話すとすればきっと反対されるだろう。誰一人として私がそれを犯すのを望まないはずだ。あえて考えてみるまでもない問題なのだ。


 しかし誰も望まないとしても、私は決して止まらない。


 そのためにこの力を得たのだから――そんな確信が私の心に満ちていた。


「……そっか。君の意志がそうならば、せめて隙なく成功して皆のもとへ戻れることを願うよ」


「祈ってくださるついでに直接助けてくださればもっと有り難いのですがね」


「僕が直接出れば、バリジタの奴は向き合う前に逃げ出して隠れてしまうよ」


「まぁ、その程度は予想しましたわ」


 どうせ直接的な助力まで期待してはいなかった。


 体を回した。この場所の主人に背を向けることにて去るという意思を示す行為。出口のようなものは見えなかったけれど、この意思を表すだけで十分に伝わっただろう。

今週末に二回更新すると申し上げましたが、どうやら難しそうです。

時間がなかったわけではありませんが、十四章がほぼ終わりに近づいている今、次の章の詳細なプロットがまだ明確に整理できていません。

プロットを整理する時間がもう少し必要そうなので、週末に予定していた二回更新は少し先送りにさせていただきます。

既存の残っていた回数である二回に加えて、三回の二回更新が残っているものとして処理させていただきます。


読んでくださってありがとうございます!

面白かった! とか、これからも楽しみ! とお考えでしたら!

一個だけでもいいから、☆とブックマークをくだされば嬉しいです! 力になります!

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