罪と心
罪人は幸せになってはならない、という極論まで言うつもりはない。
だけど、きちんとした罪の償いすらせずに自分の幸せだけを追求するのはまた別の罪であり……何よりも、その対象が自分である時点で客観的な視点で見るのは難しかった。
際限なく寛容であれ、際限なく厳格であれ。元々人間ってのは自分自身に冷静になりづらいものだからな。
【罪を償うだって? そんなくだらないことをなんで私が考えなきゃいけないの?】
『アルカ』は怒気を露わにし、まるで血を吐くかのように吐き出した。
実際に血が出たわけじゃないけれど……血のように濃い感情が手に取るようにわかった。
【人間の法は一番重い罪の報いを死刑って決めてるでしょ? だったらあなたはもう十分にその代価を払ったんだ。私が無限に繰り返したあのひどい失敗の回数が、つまりあなたが死んだ回数でもあるんだもの!】
「その死の一つ一つを全て私の罪の報いとして規定するのなら」
まるで感情が壁となって私を押しつぶすような強烈さ。それを前にしても私が平然としていられたのは超然としていたからではなかった。
決してそれに負けないほど強烈な感情を、私もまた吐き出していたからだった。
「その繰り返しの間に私が犯した全てのことも私の罪として計算しなければならないものよ!!」
こうして声を荒げたのはどれくらいぶりだろうか。
いや、戦闘の興奮や気合い以外に純粋に感情をぶつけるためだけの叫びは生まれて初めてかもしれない。私のすべての前世を通しても。
『バルセイ』のテリアだった頃は世界に対する怒りを死ぬまで暗く静かに表すだけだった。神崎ミヤコだった頃は過魂症のせいで体のすべての機能が壊れていて声を荒げるという行為自体が不可能だった。
今の生は……どうだったかしら。良いことも悪いこともたくさんあったけれど、少なくとも今ほど感情が激しく燃え上がったことはなかった。敵を憎み、打倒の意志を高めるときでさえ、これほどまでに高揚することはなかった。
我に返ってみれば、私は無意識のうちに『アルカ』の胸ぐらを掴んでいた。
「人間の刑罰の上限が死であるのは、それが最大の罰だからじゃないのよ。法で規定できる刑罰が無限ではないし、刑罰よりも世に放っておいてはいけない場合もあるからなの」
言葉一つ一つを『アルカ』の頭と胸に叩きつけるような勢いで吐き出す。
「あなたから見れば私が死という形で罪から目を逸らす人間に見えたのかしら? 数多くの人々を死に至らしめ、数多くの人々に悲しみと絶望を与えておいて、一人だけ楽に逃げ出す人間に見えたってこと!?」
【じゃあ、あなたが受けた苦痛と絶望は何だった!?】
『アルカ』は私の手を乱暴に振り払うと、逆に私の胸ぐらを掴んだ。
振り払う時も、胸ぐらを乱暴に掴む時も神の力なら私を吹き飛ばしても不思議ではなかっただろう。しかし実際にそうはならなかった。私への配慮で手加減をしたのか、それとも何か別の理由があるのかはわからないけど……私にぶつかってくる感情だけはそれとは別に激しかった。
【時間を繰り返すたびにあなたの痛みは積み重なっていった。時間を巻き戻せば体の記憶は消えるけど、その魂に残った傷は絶対に消えない。それは結局行動として現れるんだもの】
「それで? 私の傷が始まったのは八歳の時からだったわ。でもその頃まで戻ることはできなかったんでしょ?」
私の胸ぐらを掴んでいる手を強く握りしめて引き剥がしながら、魂と頭の確信に満ちて吐き出した。
半分は論理など無い、魂に刻まれた記憶が私にかすかに教えてくれた通りに。そして残りの半分は『アルカ』と『バルセイ』について考えていけば到達できる領域だった。
『アルカ』が私に見せる愛情と執念が嘘でないのなら、私の悲劇が始まる時点まで時間を巻き戻すというのは簡単な選択じゃないはず。そこまで戻ってすべてを変えられるなら完璧だろうけど、そうできなかったであろうことは少し考えればわかった。
基本的に『バルセイ』で行動を選択できたのは主人公のアルカだけ。アルカ一人の行動の変化によって未来がそこまで多様に変化したのは素晴らしいことだけれど……言い換えれば、いくら繰り返してもアルカの行動なしに他の人々の変化を引き出すのは不可能だった。
さらに『アルカ』は言った。最初は人間のまま『隠された島の主人』と契約して時間を巻き戻したって。借りた権能では自分自身の行動しか変えられなかっただろうということは容易に想像できた。
ならば……不慮の事故で私が誤解を受け、皆の嫌悪と憎しみを背負う状況の中で、私よりも幼かったアルカが違う行動をしたところで、果たして何を変えられただろうか。
最初から諦めていたのか、それとも幼少期まで巻き戻してみて無駄だと気づいて調整したのかはわからない。しかし『バルセイ』ではストーリーが始まるその瞬間までの過去はいつも同じだった。
ということは結局、私が傷ついて落ちていく間の時間は繰り返されず、すでに落ちて悪行を働いていた時間が繰り返されただけということだろう。
もちろんそうでなくても、私が受けた苦痛と絶望が繰り返され積み重なっていったという言い訳なんかで私の罪を希釈することはできない。被害者になったという事実が加害者に変貌する免罪符にはなり得ないのだから。
そして何よりも――。
「私を虐げた者たちへの復讐はすでに私の手ですべて済ませたわ。その後の悪行なんてまさに私の一方的な加害でしかないのよ」
オステノヴァの血統を継ぐ謀略と暗躍。自分自身の才能と努力で積み上げた体の武力。そのすべてを持っていた中ボスの私が、過去自分を虐待した者たちをそのまま放っておく? バカバカしい話だ。当然、私の近くにいようと他の場所に去っていようと、全員探し出して最後の一人まで凄惨に拷問して殺した。当事者だけでなく何の関係もない周囲の人間への過剰な復讐まで、実に抜かりなくやらかしたのだ。
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