根源の怒り
【どうして……そう思うった?】
『アルカ』は苦しげに眉をひそめた表情で、辛そうに言った。
三問答の術式を破ろうとしているのだろう。その最中に投げかけた質問は、真剣な問いというよりは時間を稼ぐためのものに近かった。
私は失笑を漏らした。
「あなたの態度を見ただけでも答えは既に明らかよ。それでもあえて避けようとしているのかしら?」
【質問に答えてよ】
「さぁね。理由なんて説明するのも面倒なくらい多いのよ。どうせあなたが何を言おうと私は質問を取り下げるつもりも、判断を変えるつもりもないわ」
私の考えが間違っているのなら、ただ簡単に一言で答えればいい。
私の考えが合っているとしても、それに特別な意味がないのならば同じことだ。
それでもそうできないということは……彼女も分かっているのだ。私の最後の質問が私にとってどんな意味があるのかを。
その事実が私を怒らせた。
「あなたもわかっているんでしょ。この質問が私にとってどれほど重要か。私がなぜこれを確認したいのか。それなのに……私がどう思うかを知りながらそんなことをしでかしたってことかしら?」
その瞬間、閃光と魔力が爆発した。
術式が壊れ、魔力が散り散りになった。『アルカ』がついに三問答の術式を破ったのだ。
答える義務が消え、沈黙の中で強い怒りと戸惑いの混じった眼差しだけが私を睨みつけた。
『アルカ』もこんな形で答えを拒否しても意味がないことくらいは分かっているはずだ。それでも最後まで自分の口で言うのを拒んだのは単なる意地なのか、それともそうせざるを得ない理由があったのか。
どちらにせよ、私が答えを得た以上は無意味だ。
私の顔を見られる鏡は今ないけれど、私の表情がどんなものかははっきりと分かった。
自覚できるほど強い眼差しで『アルカ』を睨みつけながら一歩近づいた。すると彼女はびくりと驚いて後ずさりした。
「一つ聞くけれど、私を神崎ミヤコとして転生させてからまた元に戻したのは以前の私が同意したことだったの?」
【……え、ええ。理由も過程もすべて適切に説明したよ】
「そうでしょね」
【……?】
以前の私についての明確な記憶はない。
でも奇妙な実感と感情があった。まるで雨の中を歩いていてズボンの裾が徐々に濡れていくように、私も知らないうちに知らなかったものが私の心の中で蘇っていた。記憶が蘇るわけじゃないけど、私自身が何をどう感じたのか……かすかながら分かった。
だから気づいた。あの時の私が『アルカ』の提案をどう感じ……何を予想したのかを。
「もしかしてあの時私は言わなかったのかしら? 結局無駄になるでしょうって」
【……】
『アルカ』の表情を見ると、やっぱり引っかかる部分があるようだ。
それを見ると、さっきから胸の中で湧き上がっていた感情がどんどん強くなっていった。
それは――怒り。
「あのね。以前の私はいったいどれほど邪悪で厚かましかったのかしら? 知らないけれど、相当自分勝手で恥知らずだったようね。あなたのその方法を何とも思わずに受け入れて喜ぶと思ったのだから」
【そうじゃないよ!】
『アルカ』は初めて感情を込めて声を張り上げた。
そういえば『隠された島の主人』としての彼女を知って以来、こんな風に声を荒げるのは初めて見た。
それだけ動揺しているのだろうか。それなりの確信を持っているのは分かったけれども。
【生前多くの人々を悲嘆と絶望に陥れたのは事実だよ。でも私の手で討伐されて、私が邪毒に侵食されたって共に戦って……お姉様の魂とたくさん話をした】
『アルカ』の表情が緩んだ。過去を思い出してほんの少し微笑む姿は昔の……今の世界の中にいる私の妹アルカに似ていた。
しかし今の私はその姿を冷淡に睨みつけるしかなかった。
【お姉様は後悔してた。自分が大きな過ちを犯したこと、それが自ら背負うべき罪であることも理解してたんだよ。だからお姉様も私に感謝してくれてた。お姉様が再び『テリア』として世界に戻ることができれば、その時こそ贖罪の機会を持てるはずだからって】
不思議だ。
私の愛しい妹と同じ顔、同じ声で似たような愛情を向けているのに……私自身が感じるものがこれほどまでに違うなんて。
むしろこれほどまでに私の心を揺さぶる『アルカ』に……数えきれないほど長い歳月が過ぎたのに、まだ自分の未熟さをそのまま持ち続けているこの子に、良くない意味で敬意を感じるほどだ。
「あの時の私が望んだのが贖罪だったのなら、私から贖罪の機会を奪うべきじゃなかったわね」
中でぐつぐつと煮えたぎっていた怒りがついに口から漏れ出た。
「あなたは私の恐ろしかった記憶を消し去り、それを単なる一歩引いて眺める情報なんかに貶めたわ。私が私の罪を覚えていられないようにし、それを償わなければならないという考えすら持てないようにしたのね」
私が怒っていたのはその部分だった。
私は罪を犯した。そして罪の意識を持っていた私が贖罪の機会を望んでいたとしたら……『アルカ』が私を再びテリアに戻すと言った時、喜んだだろうことも容易に想像できた。
テリアに戻るということは、私が再び罪人の座に戻るということ。ならばその罪人の座で贖罪できると思ったはずだから。
しかし『アルカ』は私の記憶を消した。
『バルセイ』という手段を通じて、私が経験した悲劇と罪をただ『未来に起こるかもしれなかったこと』という形の知識にしてしまい、私自身が『テリア』として経験した生々しい記憶を私の頭の中から吹き飛ばしてしまった。そのせいで私はそれが自分自身の過去であり罪であることを自覚できなかった。
神崎ミヤコの記憶は残っていた。それが転生後も記憶を保存できるってことを証明している。そして……私の中に『バルセイ』の記憶を持つ『私』がいるということは、すなわち私の魂に過去がはっきりと刻まれているということを意味する。
今週中にもう一度二回更新すると申し上げておりましたが、一体何度目かわからない不祥事が発生したせいで時間を奪われてしまいました。
何とか個人的な連休期間中に更新が途切れることだけは防ぎましたが、結局一月中に残りの二回更新回数を減らすことは実現できませんでした。申し訳ありません。
二月中には必ず全て消化するようにいたします。




