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真の目的

【どうしてそう思ったのかな?】


『アルカ』は私を試すような口調で尋ねた。


「理由はいくつかあるけれど、一番大きいのは動機と方法よ。私をそこまで救いたがって、実際にいろいろ試してみたであろう人は他にいないはずだから。それに、こうして実際に私が生きている世界がある以上、『バルセイ』が単なるゲームであるはずがないじゃない。そのストーリーに基盤があると考えるのが道理でしょ?」


 まぁ、他のことよりもまず『テリア』としての私自身に未練と負い目を持つ人はアルカ以外にはいないだろう。


『バルセイ』の私には味方はいなかった。好意的に思ってくれて助けようとした者たちさえ私の手で打ち払ったのだから。幼い頃から私の境遇を気の毒に思ってくれていたロベルでさえ、結局『バルセイ』の本編に至っては私のことを諦めるほどだったのだから。


『バルセイ』の私にとって世の中のすべてのものは二つに分類された。一つ目は敵。そして二つ目は悪謀と甘言で丸め込んで思いのままに操る傀儡たち。


 そんな中で唯一『バルセイ』の私を見捨てなかった人が主人公のアルカだった。


 アルカは姉を更生させられると信じていた。いや、信じていたというより不可能だとしても努力し続けたという表現が正確だろうか。とにかく最後の最後までアルカは諦めようとしなかった。中ボステリアを討伐したのは本当にもはや取り返しのつかない事態になったからだったが、それさえも殺そうとせずに逆にやられてしまうバッドエンドがあるほどだった。


 もちろん今の現実には私を大切にしてくれる人たちが多いけれど、その誰かが邪毒神となって戻ってきたというのは現実味が薄すぎる。邪毒神として昇天することはさておき、今の私の人生は『バルセイ』の知識を基に動いているのだから。


【……私が『バルセイ』のアルカだっていうのは本当に気分の悪い例えだけど、とっても正確な表現でもあるんだよね】


『アルカ』は深く重い溜息をついた。


 私を見つめる瞳にはありとあらゆる感情が混ざっていた。ようやく到達したことが嬉しいようにも、結局こうなってしまったことを悲しんでいるようにも見えた。


【正確には私はアルカだった何かって言うべきかな。もう人間のアルカだった頃の記憶はぼんやりしてるの。術式で過去の『時間』を抽出して『バルセイ』を作った時も、正直自分のことだって実感はあまりなかったんだ。それに、あの軟弱で無能なバカと今の私は価値観が違いすぎるからね】


『アルカ』は露骨な不快感で眉をひそめた。


【今の私はアルカがしそうなことはできない。思い出すだけで吐き気がしちゃうくらいだからね。逆にアルカも今の私の道をたどることはできないと思う。もう目的のためには手段も方法も選ばない私の道は血まみれだから。罪悪感も全然。そして何よりも……】


「人間だったあなたを捨てたからなのかしら?」


【……どうして分かったのかな?】


『アルカ』は鋭い眼差しで私を見つめながら詰問した。


 そうね、どうして分かったのだろう。


 実は根拠も推論もなかった。ただふと思い浮かんだだけ。まるで昔から知っていたけれど単に忘れていたことが今ふと思い出されたような感じだった。私自身さえそれをなぜ知っているのかが明確ではなかった。


 この感覚さえも私の()()()()の手がかりだと思うと気分が沈んだ。


 とにかく、今の『アルカ』は人間だった自分を捨てた。『隠された島の主人』として世界の時間を巻き戻したとしても、それだけじゃ決して解決できない矛盾の穴があったのだから。


 それはつまりアルカの不在。


 アルカは神として昇天した。そのため彼女の時間は世界の枠を超えてしまった。いくら世界の時間を巻き戻しても、神となった者の種まで作り直すことはできないのだ。


 だから『アルカ』は神として肥大化した自分の魂から、人間としての本質を切り離して世界へ戻した。それが今のアルカなのだ。


 一方『アルカ』は私の表情と態度を見て答えがないことを察したようだった。目を一度強く閉じてから開き、少し落ち着いた表情で自分の腰に手を当てた。


【とにかくおめでとう。二つ目の質問で正解にたどり着いたんだから、三問答を早く終わらせられそうだね。欲しい答えを得たんだから……】


「ちょっと待って。一人で何を勘違いしているのかしら?」


 私がそう言うと『アルカ』は眉間にしわを寄せた。その表情だけで「もう三問答は終わったじゃない?」という疑問が十分に伝わってきた。


 私は微笑んだ。挑発するように、挑戦するように、私の本当の意図をついに明かすために。


「三問答で主題の質問を置いて答えを得ると言ったけれど、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()わよ」


『アルカ』は一瞬驚いたように目を見開いた。その表情に気づきが走り驚きが驚愕へと徐々に変わり、ついには唇を噛みしめながら私を睨みつけた。


 その眼差しは単なる感情的な威嚇ではなかった。まるで光線のように濃い魔力を放ちながら私を物理的に圧迫した。


 でももう遅いよ。


「最後の質問権を使うわ」


 言いながら私の魔力のほとんどとイシリンの力まで動員して一つの術式を展開した。


 それは三問答の術式をさらに強化し堅固に固めるもの。


『アルカ』は力を使えば術式を打ち砕けると言った。それは嘘ではないだろう。でも私の力にイシリンの力までほとんど注ぎ込んで術式を強化すれば、たとえ奴が力で打ち砕こうとしても数秒程度は持ちこたえられる。


 たかが数秒。しかし私が最後の質問を投げかけるには十分な時間。


 三問答の目的だと掲げた質問と各種条件はただ奴を三問答に引き込むための罠にすぎなかった。私の目的は最初から三問答の強制力を利用してこの最後の質問を投げかけることだった。


 緊張感のせいだろうか。時間の流れが非常にゆっくりになったように感じられた。私自身の唇が動くのをその遅くなった時間の中で認識しながら、アルカとみんなに謝罪した。


 ごめんね、みんな。


 これを口にしたら……私はもう戻れない。

読んでくださってありがとうございます!

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