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突然の登場

【なっ……!?】


 テシリタは後ろを振り返った。


 光はテシリタの背後から飛んできて、テシリタを貫いて胸から飛び出した。


 そしてその光の先にはお姉様がいた。


 すでに意識を失ったお姉様の体を光が優しく包んでいた。まるで大きな水の玉に守られているかのような形でお姉様の体がふわふわと浮いていた。すでに意識を失っていたため反応はなかったけれど、なぜか安らかな顔をしていた。


【策を逆手に取るのがあんたたちだけの特権だって思わないで】


 テシリタのものではない声が亀裂の向こうから響き渡った瞬間だった。


【くっ、離せ……!】


【離させてみてよ。あんたの力でできるものならね】


 相変わらずテシリタを貫いている光の筋が一瞬強く輝いた。その直後テシリタの小さな体が亀裂の向こうの遠くへと引きずられていった。


【我が師匠の敵ごときが!】


 テシリタの魔法陣が発動し、光に引きずられていた体が止まった。すでに亀裂の向こうの世界の外にいるため、もはや亀裂に魔力を吸い取られて無力化されることもないのだろう。


 しかしどこからか飛んできた強大な魔力がテシリタの魔法陣をあまりにも簡単に打ち砕いてしまった。亀裂の向こうなのに感じ取れるほど圧倒的な力だった。


【なんだと……!?】


【生意気ね。天に昇ったばかりの眷属ごときが分をわきまえないなんて】


 亀裂の向こうの空間……というべきだろうか。世界の外だからか正常な時空間とは思えなかったけど、とにかく混沌の陽炎のように見える何かが動いてテシリタを捕らえた。まるで奇妙な力でできた巨大な手のようだった。


 その手がテシリタを瞬く間に遥か彼方へと連れ去ってしまった。抵抗する隙さえなかった。


 少し前まで私たちを圧倒していた敵のあっけない退場に驚く暇はなかった。


【この地を私の両足で直に踏むのは久しぶりね】


 テシリタと入れ替わるように、亀裂から一人の人影が姿を現した。


 テシリタとは違い、漆黒の邪毒に完全に覆われてシルエットしか見えない存在。何度も見てきた『隠された島の主人』だった。


 ただしその存在感は格が違った。


 まだ亀裂を越えて世界の中に入ってきてもいないのに、世界が激しく震えていた。物理的な地震程度ではなかった。大地だけでなく空気さえも、そして私自身さえも激しく震えていた。


 世界そのものが震えていた。その存在を恐れているかのように。


「本体か」


 ジェリアお姉さんがふと呟くのが聞こえた。


 そう、本体ならばこの圧倒的な存在感も納得がいく。少し前まで私たちの相手だったテシリタも世界の中で昇天したため本体そのものだったけど、今世界を震わせている『隠された島の主人』の圧倒的な力と存在感はそのテシリタ以上だった。


 ゆっくりと飛んで世界の中にようやく入ってきた邪毒神がふと嘲笑った。


【便法で来たから力を解放できずに抑えているだけなのに震えているなんてね。テシリタのような奴に負けなかったのは幸運だったと思いなさい】


「お姉様と私たちの奮闘を侮辱しないで」


 私が憤ると邪毒神の顔が私の方を向いた。


【それはテシリタが人間だった頃の感覚を捨てきれなかっただけよ。神の眷属でも宇宙一つを左右する程度の力はある。こんな惑星なんて、テシリタ程度でも指パッチン一回じゃ吹き飛ばせるよ。自分でそれを自覚していなかっただけ】


『隠された島の主人』の体がゆっくりと地面に降り立った。


 足が地面に触れる前から大地がより激しく揺れ、足下の地面が押しつぶされてひび割れた。ついに足が地面に完全に触れると耐えきれずに大地が崩れてしまった。


 邪毒神の本体が降臨したわりには邪毒特有の嫌悪感と違和感が全く感じられないのが不思議だったけど……邪毒以前に純粋に力と存在感だけで恐れるには十分な存在だった。


 ……その存在の妙な敵意が私に向けられているような気がするけど。


「それで? テシリタを追い払ってくれたのは有難いことだけれど、早く我が娘を返してもらいたいものよ」


 母上がまだ亀裂の向こうにいるお姉様の方を見ながら言った。


『隠された島の主人』は小さく鼻で笑った。


【そうするつもりなら最初から関わらなかったんだよ】


「何?」


【テリアは私が連れていく。役立たずのバカばかりのこんな世界に置いておくつもりはないよ】


「ふざけないで!」


 邪毒神の言葉を聞いた途端に叫んだ。


 手には最大出力で作り出した魔力の弓。周りには『万魔掌握』の力で自然の魔力を凝集させた魔力剣の軍勢。そのすべての照準を邪毒神に向けたまま、今にも発射しそうな勢いで奴を睨みつけた。


 しかし私の力などが脅威になるはずもなかった。


【ああ、無能で愚かなアルカ・マイティ・オステノヴァ。守りたいものばかりを常に失ってきた間抜けね。あんたはいつもそうだったんだ。多くの人を救うという理想に囚われていたけれど、必要な人も大切な人も守り抜けなかったね】


「え? いったいそれはどういう……」


【ま、気にしないで。知ろうが知るまいが変わりはないからね】


 私を非難する言葉に怒るよりも、意味不明の内容に抱いた疑問にちょっと気を取られた。


 その間にジェリアお姉さんが先に動いた。


 ――『冬天世界』専用技〈冬の牢獄〉


「ついに本性を現したか、邪毒神よ。テリアを連れ去って何をするつもりだ?」


 氷の牢獄が『隠された島の主人』を閉じ込め、ジェリアお姉さんが問答無用で振り下ろした『冬天覇剣』が肩を叩いた。その直後音もなく動いた母上の剣が奴の腕を狙った。


 しかし邪毒神は防御の姿勢も取らないまま、ただ体で斬撃を受け止めた。それだけでも何の傷もなかった。


【無意味な抵抗よ。テシリタのような間抜けにすら勝てない力が私に通用すると思う?】

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