神眼への対応
華やかに散る魔力を貫き、黄金色の鎖が一筋お姉様へ飛んできた。
「お姉様!!」
私は最速の速度で突進してから剣を振り下ろした。固く凝縮された魔力剣が鎖を防いだ。
その瞬間、鎖はあっけなく砕け散った。
いや、砕けたのではない。触れた瞬間に鎖の輪がすべて分離して散らばったのだ。まるで初めから私の防御を予想していたかのように。
その輪の一つ一つから魔力が流れ出し、魔法陣を描き出した。何なのか正確に解読することはできなかったけれど、そのすべてが各々異なる魔法陣だということだけは何とか見て取れた。
――神法〈位相貸与・創造乱立〉
多くの魔法陣が各々異なる何かを吐き出した。あるものは火や雷のように分かりやすい現象を生み出し、あるものは魔剣や魔槍のような魔道具を作り出した。それらすべての狙いが三割は私へ、残りすべてがお姉様へ向けられていた。
――『冬天世界』専用技〈神竜の鱗盾〉
ジェリアお姉さんの氷が私とお姉様の前に展開された。
降り注ぐ魔力が氷の盾を引き裂いた。しかし、わずかな時間を稼ぐ間に他の人々の力が次々と展開された。
そのほとんどがただのごくわずかな時間稼ぎに過ぎない。けれど、そのわずかな時間すら私とお姉様には十分なものだった。
もちろん、それはテシリタもよく知っている事実だった。
【貴様らをオレが忘れたとでも思ったか?】
みんなの防御が弾き返したテシリタの魔力と術式。それらが再構成され、非常に巨大な立体魔法陣を形成した。
――神法〈天罰宣言〉
立体魔法陣の内側の空間に万物を分解する魔力が溢れ出た。私たち全員を含むほど巨大だった。
そこに私とお姉様の周りに落ちた鎖の輪が光り、さらに一つの魔法陣を描き出した。それが私とお姉様に注がれる分解の力をさらに増幅させた。
「イシリン!」
【任せて】
お姉様は邪毒の剣を地面に突き立てた。
――第七世界魔法〈赤天の恵み〉
イシリンさんの力が広大に広がった。
テシリタの立体魔法陣の中全体を覆うほど広範囲だった。しかも畏怖の念を抱くほど圧倒的な魔力だった。今までお姉様を通じて蓄積してきた魔力を全て使い果たしたんじゃないかなって思いが浮かぶほどだった。
でもその圧倒的な魔力でさえテシリタの立体魔法陣の力を相殺するにとどまった。しかも魔法陣が生み出す破壊の力を直接相殺しただけで、魔法陣自体は依然として稼働していた。そのため、その力を防ぐためにイシリンさんの力も引き続き展開しておく必要があった。
つまり、その間は邪毒の剣の使用が封じられたということだ。
【さぁ見せてみろ。まだこの目に映らぬ未来をもたらすことができるかどうかをな】
テシリタの背後に三つの魔法陣が展開され、黄金色の槍が三本現れた。さっきの槍もまだ残っていたため、合計四本だった。
お姉様の浄化力がまだ残っていたため邪毒の妨害はなかった。でもそのために攻撃に出られたみんなの気勢を、反撃に特化した黄金色の槍が逆に押し返してしまった。閃光が瞬き、血しぶきが噴き上がった。
ジェリアお姉さんは侵食技と神獣の力を総動員して何とか初撃を相殺した。トリアは槍に貫かれた周辺部位を肉体から分離して捨て、自身の体に混入されている無数の魔物の遺伝子を利用して肉体を変形させ傷を塞いだ。他にも神のような剣術と魔力制御で初撃を受け流した母上や、莫大な力を利用した力業で耐え抜いた私など、金色の閃光の初撃を耐え抜いた人は何人かいた。
けれどそんな私たちでさえ二度目の閃きを防ぎきれず、瞬間的に無力化された。
そんな中で唯一閃光を二度とも防ぎきったのはお姉様だけだった。
初撃は母上と似たような方法で。そして跳ね返ってきた閃光が二度目の攻撃を仕掛けてきた瞬間、お姉様は邪毒の剣の後ろに隠れた。そして柄を手に握り力を込めて邪毒の剣で二度目の閃光まで防いだ。
しかしテシリタの破壊の領域は依然として続いており、それを相殺するためにも邪毒の剣を回収することはできない状況だった。
それを確認したテシリタが手を伸ばしながらさらに別の魔法陣を描こうとした瞬間だった。
――『天上の鍵』権能発現〈記憶降臨〉
――紫光技〈歴史再現模写〉
お姉様の魔力が大きく膨らんだ。
始祖武装で魔道具の能力を再現する一方、紫光技の技の中でも〈記憶降臨〉と類似した効果を持つ〈歴史再現模写〉によって生み出した魔力剣を左手にて握った。
再現された権能は両方とも邪毒の剣。
始祖武装である『天上の鍵』はともかく、たった一つの術式に過ぎない〈歴史再現模写〉で邪毒の剣を再現できるはずがない。本来なら。
しかしお姉様は邪毒の剣を握って金色の閃光を防御する瞬間、イシリンさんの魔力を大量に受け取った。その魔力を媒介に、限りなく本物に近い邪毒の剣を再現したのだ。
目的はただ一つだけ。
「はああっ!」
光のような勢いで駆け出したお姉様の剣がまだ描き切れていない魔法陣を斬り裂いた。魔力によって肥大化した斬撃がテシリタまで襲った。
テシリタは金色の眼光を不快そうに歪めた。魔法陣は遅いと判断したのか、握った拳がそのまま伸びてお姉様の魔力波を叩き潰した。
【面倒くさいな。人の威を借りてオレの神眼を避けるのがそんなに楽しいのか?】
「好きなように言いなさい。何であろうとあんたを倒せるのなら私はいくらでも利用してあげるわ」
その瞬間テシリタがニヤリと笑った。邪毒が姿のほとんどを覆っていて表情を見分けること自体が難しかったけれど、口から漏れ出る金色の光彩が荒々しい三日月を描いたのが見えた。
【倒す? 面白いことを言うものだ。ではやってみろ】
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