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神威と反撃

 ――神法〈事象否定〉


 テシリタが異質な魔力を放った。


 私の斬撃がその魔力に触れると『万魔掌握』の力が反転した。周囲の魔力を吸い込んでいた力が逆に自身の魔力さえ押さえつけられず散り散りになって消えてしまったのだ。


 その魔力は近くにいた私にまで勢いのままに襲いかかった。


「ええいっ!」


 瞬間的に魔力障壁を張った。『万魔掌握』で模倣した特性はすべてを通過させる力。それがテシリタの魔力と触れると逆にすべてを防ぎ切る不屈の防壁に変わった。


【ほう。瞬時に力の特徴を見抜き対応する魔力を紡ぎ出したのか? 戦闘センスがいいな。未熟な者にとって成長とは重要なものだぞ】


 テシリタは冷静に品評すると、自身の足元に魔法陣を展開した。無数の黄金色の鎖が噴き出した。


【鎖一つ一つが事象を反転させる神器だ。触れるたびに反転され混乱させるのだ。単純に見えても思いのほか厄介だぞ】


 それぞれの鎖が蛇のように動きながら襲いかかってきた。


 私は『万魔掌握』の魔力を凝縮した魔力剣を強く握り、鎖二つが重なる瞬間を狙って振り下ろした。反転が二回重なれば元に戻るのではないかという考えだった。


 でも少し早く一つの鎖に先に触れた瞬間剣の魔力が突然火炎に変わって暴れだし、二つ目の鎖がその火炎を叩きつけると炎の触手が一斉に私に襲いかかった。


【敵の説明を鵜呑みにするのか? 戦闘の経験が積み重なり感覚が発展しても頭が愚かでは困るな】


 テシリタが呆れたように言った。


 突然の変化に戸惑ったけれど、魔力を奪われて作られた火自体は普通の火に近かった。すぐさま魔力を展開して防いだ。


 けれどその火を突き抜けてもう一つの鎖が飛んできた。それはまるで魔力障壁が存在しないかのように通過した。


 その鎖が私の腹を強打する直前、お姉様の方から強烈な魔力が噴き出した。


 ――『浄潔世界』浄化神剣専用奥義〈天上の処刑場〉


 お姉様の魔力が周辺一帯に浄化の領域を作った。〈浄純領域〉に浄化神剣の魔力が込められた破壊的な浄化だった。


 テシリタの黄金色の鎖と神槍がきしみながら鈍くなったが、破壊されるほどではなかった。


【人間の浄化力程度で神器を破壊できると思ったか?】


「思っていないけど?」


 お姉様がそう反論した瞬間だった。


 四方から魔力が膨れ上がった。お姉様の浄化の領域が神器を鈍化させ周囲の邪毒をことごとく消し去った瞬間、他の人たちの魔力が一気に感じられたのだ。


 お姉様と私が戦っている間も遊んでいるわけじゃなく、むしろ確実な必殺の一撃のために常に魔力を集め凝縮し磨き上げてきたのだ。


 みんなが放つことのできる最高の一撃が一斉に噴き出した。


【見えなかったと思ったか?】


 すでにテシリタの周囲には黄金色の鎖の一部で形成された防御壁が張り巡らされていた。それだけでなく鎖の防御壁の表面に浮かんでいる無数の魔法陣の照準があらゆる方向の私たちに向けられていた。


 テシリタの金色の眼光が光った瞬間だった。


 ――『万魔掌握』専用終結奥義〈静かな夜空のたった一つの星明かり〉


 周囲のすべてが闇に染まり、すべてが冷たくなり静かになった。そしてすべてのものの光に代わるかのように私の魔力剣だけが燦然と輝いた。


『万魔掌握』の魔力集束力を極限まで高めた奥義。魔力だけでなく、物質そのものを除いたほとんどのものを強奪し集束する奥義だった。


 洗練された技芸も、複雑な術式も私は未熟だ。もちろんその未熟さを克服するために常に鍛錬と練習を重ねていたけれど、短期間でお姉様に追いつくには程遠い。


 だから私にしかできないことを極限まで磨き上げることを選んだ。


『万魔掌握』と『浄潔世界』の力を混合した奥義を鍛錬するのもその一環だったし、これもまた同じ。ただ『万魔掌握』の力を極大化することで戦況を私に持ってくる技だった。


 テシリタの力まで奪うことは不可能だったけれど、みんなが放った渾身の奥義の力をすべて吸収して一つにまとめることは可能だった。


 すべてを凝縮し鋭く磨き上げ、テシリタの防御さえ突き破る一撃を放つ。


「はあああああっ!!」


 すべてが凝縮されて燦然と輝く魔力を、すべてが見えず聞こえなくなった周囲で唯一輝く漆黒と黄金に向かって放った。


【もう一度言おう。見えなかったと思ったか?】


 テシリタはすでに私の一撃が飛んでくる方向に向かって正確に鎖と魔法の防壁を構築していた。


 未来を見る神の目。すでにすべてを先んじて予見し対処する力が、私のこの攻撃さえも先んじたのだ。


 しかし私は絶望しなかった。


「ええ」


 ――テリア式邪術〈驕慢の視線〉


 ――天空流奥義〈五行陣・水〉


 静かな闇の中でお姉様の声が響いた直後だった。


 放った魔力の軌道が歪み、闇の中のどこかに吸い込まれていった。テシリタが防壁を立てた方向とは違う側だった。


 魔力の光が邪毒の剣に吸い込まれていく光景が見えた。


 お姉様は集束された魔力に自身の魔力を注ぎ込んだ。お姉様の紫光技とイシリンさんの力が魔力をさらに変質させ、どこか異質な気配を漂わせた。


 ――テリア式天空流『邪毒の剣』専用奥義〈赤天の影〉


 異質な魔力を手に握ったお姉様がその力をテシリタの方へと振るった。


 テシリタはその攻撃には先に対処できなかった。しかし大したことはないといった様子で冷静に黄金色の鎖を移動させ、同時に五つの魔法陣を重ねて展開した。


 魔力と魔力がぶつかり合い激しい爆発が起こった。

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