神威への対抗
――アルカ式射撃術『浄潔世界』専用奥義〈天上の純粋な道〉
テシリタの力が作り出した邪毒の隙間を、アルカの浄化の矢がさらに引き裂き大きく開いた。
本来ならばその一発で道を開くのは不可能だっただろうけど、テシリタの力が自ら邪毒を引き裂いたおかげで一気に突破できる隙間ができたのだ。
「やっと出発線に立ったな」
その道を瞬き一度するよりも早く踏破した者はジェリアとトリアだった。
とっくに最前線にいた私とイシリンは少し下がり、二人の氷と炎風が同時にテシリタを襲った。相反する二つの力だったけれど互いに干渉しないよう絶妙に調整された連携だった。
【なかなかやるじゃないか】
テシリタは手を素早く振るうだけで二人の攻撃を払い除けた。そして私がそれを認識した時にはすでに小さな体躯がジェリアの胸へと突っ込んで拳を突き出した後だった。
ジェリアの腹部へテシリタの拳が放たれた。ジェリアはすでに予想していたかのように『冬天世界』の防御の氷を腹に集中させたけれど、氷が砂糖菓子のように砕けジェリアの体が遠くに飛ばされた。
――『万魔掌握』特性複製『転移』
その場所に交代するようにアルカが現れた。
両手にはすでに『浄潔世界』に他の特性まで混合した魔力剣を持っており、テシリタの周りに展開された数多くの魔力の柱が巨大な弓に変わっていた。巨大で数多くの矢がテシリタに降り注ぎ、トリアの炎風が矢と混ざり合った。
テシリタはそれも拳で対処しようとしたけれど、その瞬間彼女の足元が崩れた。シドが『地伸』の力で足場を崩したのだ。その中からケイン王子の拘束結界の糸が噴き出し、ロベルの『虚像世界』が感覚を欺いて攻撃の位置を攪乱した。
テシリタの力ならばただ大規模に魔力を放出するだけでそのすべてを消し飛ばすことができただろうけど、彼女はそうしなかった。
【ちょっと試してみよう】
自然に噴き出していた邪毒を両拳に集中し、すべての矢と炎風を拳で迎撃していった。拘束結界の力など紙切れのように引き裂かれていった。節制された動きが神速の連撃として展開された。
崩れた足場を魔力で補強し、ロベルの幻影など知ったことかというように正確にすべての攻撃を突破。それをただ二つの拳だけでやってのけたのだ。
【そろそろオレも感覚が掴めてきたな】
鋭い蹴りが風を切った。
国一つくらい地図から綺麗に消し去っても不思議ではないほどの力。それが芸術的に圧縮され制御されて発せられた。鋭い線を描くような魔力がテシリタの周りを荒らし、彼女に近く接近していた全員がその力に耐えきれずに吹き飛ばされてしまった。
ジェリアとケイン王子の最大の防御に加えそれぞれの防御手段を展開したけれど、テシリタの一撃はそのすべてを引き裂いてしまった。それでも防御のおかげで死亡は免れたけどジェリアとトリアは一時的に戦闘不能になるほどの重傷だった。
しかし瞬間的に『転移』で避難していたアルカはすぐに再び戻り、力を蓄えていた私が全速力で突っ込んだ。
――テリア式邪術〈驕慢の視線〉
――天空流奥義〈五行陣・木〉
――天空流終結奥義〈月蝕〉
範囲は正直に刃が届く分だけだが威力だけは絶対的な〈月蝕〉を極限まで増幅させた一撃。この距離で発揮できる私の最強の攻撃手段だ。
もちろん私だけじゃなかった。
――アルカ式天空流『万魔掌握』奥義〈万物を映す鏡の刃〉
――第七世界魔法〈赤天の宣告〉
アルカは『万魔掌握』で習得してきたすべての特性が絡み合った斬撃を。
イシリンは法則を捻じ曲げるほどの現実操作で具現した絶対の破壊を。
そのほかにも空間を飛び越えるシドの暗殺術、ケイン王子の結界魔獣の力が凝縮された砲撃、〈幻影実体化〉の力で最大の攻撃手段を形象化したロベルの雷槍まで。互いを妨げない奇跡に近い連携で最大の威力が集中された。
その瞬間テシリタが小さく笑う声が聞こえた。
【感覚を掴んだと言ったはずだ】
――神法〈神の威厳〉
テシリタの足元に魔法陣が展開された。
その瞬間言い表しがたい強烈な重圧感が周り全体に降り立った。それは単に心理的なものではなく物理的にほとんどすべての攻撃を押しつぶして壊してしまった。
その中で唯一領域そのものを切り裂いた私の〈月蝕〉だけはテシリタの手のひらが直接防御した。彼女の手のひらに浮かび上がった魔法陣が次元を切り裂く刃を確実に受け止めたのだ。
けれど私の双剣をそれぞれ受け止めるためにテシリタも両手を使わなければならなかった。
――ベティスティア式天空流奥義〈五行木象一刀両断〉
――第七世界魔法〈赤天竜破〉
稲妻のように接近してきた母上が至高の斬撃を放ち、イシリンが上から魔力砲を撃った。
母上の斬撃は私の〈月蝕〉のようにテシリタの物理力を持つ威圧を切り裂き、イシリンの魔力砲は威圧ごとテシリタを吹き飛ばす勢いで襲いかかった。
その瞬間テシリタが体を大きく回転させた。
【代わりに行ってみたまえ】
あまりに速くて反応する暇もなかった。
刃を受け止めた手のひらでそのまま剣を掴み、剣ごと私をイシリンの方へ投げ飛ばした。その直後自由になった両手を両側に伸ばし、片手で母上の斬撃を防ぎ片手は魔力砲を吐き出した。
「ちっ!」
私は危うく二つの魔力砲が衝突する前に抜け出した後、地面に着地するやいなや〈五行陣・水〉に切り替えた。再び周囲を覆い始めたテシリタの邪毒がすべて私の左の剣に吸い込まれてきた。
――『浄潔世界』専用奥義〈天の器の聖剣〉
『浄潔世界』の魔力が剣を包み、集中された魔力をすべて純粋な魔力に変えた。
そうして左手の剣に膨大な魔力を集約する一方、右手に握った『天上の鍵』には浄化神剣の力を降臨させた。
一方母上とイシリンを遠くに弾き飛ばしたテシリタが私を振り返った。
【世界に拒絶される感覚はかなり息苦しいが……それでもこの程度なら思ったより気に入ったぞ】
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