表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

763/891

圧倒と予測

 でも私たちが何かを実際に成し遂げる前にテシリタが行動するのが早かった。


【ふむ】


 テシリタが短く息を吐いた瞬間、膨大な邪毒があらゆる方向に向かって噴き出した。


 ――『浄潔世界』専用技〈浄純領域〉


 私が〈浄潔世界〉の肉身を前面に出すと同時に浄化の領域を展開した。けれど私の肉体はさておき〈浄純領域〉は急速に縮小した。浄化が通用しなかったわけではなく、邪毒の量があまりにも膨大で浄化の速度が追いつかなくなってしまったのだ。


 でも領域を維持できなければ、私はともかく他の人たちは邪毒の中で耐えられない。


「くっ……!」


 領域を維持するために魔力を注ぎ込んだ。同時にアルカも『万魔掌握』で模倣した『浄潔世界』の魔力で私を補助した。私たちの魔力が重なり合い、一時的ではあるけれど堅固に耐える浄化の領域を作り出した。


 テシリタはそんな私たちを見てから、わずかに嘲笑を漏らした。


【ただ漏れ出ないように抑えていた力を解放しただけだ。こちらは攻撃すらしていないのにその有様とはな。その程度でまともに戦えるのか?】


「あんたの知ったことじゃないわ!」


 私が宣言すると同時にケイン王子が結界を展開した。私とアルカの浄化の魔力を結界が受け取って更に拡張した。いつの間にかテシリタを包む広大な浄化の結界が形成された。


 しかし数十メートルの津波さえも物ともしないほどの勢いで放出される邪毒は結界を嘲笑うかのように溢れ出し、私とアルカ以外はまともに前進することもできずにいた。


 テシリタに同意するのは腹立たしいけれど、これではまともに戦えるはずがない。


 ――天空流〈彗星描き〉


〈浄純領域〉を維持したまま、体だけを急加速させて突っ込んだ。


 突進の勢いと魔力をそのまま受け継いだ剣をテシリタに叩きつけたけれど、テシリタは片腕で平然と受け止めた。刃が少しも効かなかった。


 もちろん奥義でもない突進技程度でテシリタにダメージを与えられるなんて期待もしなかった。


 ――『浄潔世界』専用奥義〈悪性不許浄潔円環〉


 テシリタの周囲を包むように形成された浄化の輪が強力な『浄潔世界』の領域を形成した。単純な浄化の力じゃなく、侵食技である〈浄潔世界〉の一部を外部に展開する特殊な術式だった。


 もちろん侵食技のごく一部だったため〈浄潔反転〉に比べれば微々たる水準だったけれど、テシリタの邪毒がケイン王子の結界を突破して外に漏れ出すのを防げるようになる程度の抑制力はあった。


 ケイン王子は効果を確認して直ちに結界を収縮させた。結界内部にはまだ邪毒が溢れ出ていて他の人が結界内に進入することはできなかったけれど、結界の外には漏れ出さなくなったため結界の前まで接近することは可能になった。


 これに加えてアルカが『浄潔世界』の矢で道を切り開けば突破口を作れるけど……それはテシリタも知っていた。


【突破口を開いて攻撃路を確保するのは悪くない判断だな。だがそれだけでは物足りぬという自覚はあるのだろう?】


 小さな魔女の体が急加速した。


 目視すらできない速度で拳が繰り出された。見て反応したら絶対に遅れるほどの速度だったけれど、未来を見通す〈五行陣・金〉の力で危うく遅れずに対応した。


 しかしテシリタの恐ろしい力が破壊の威圧となって噴き出した。それを何とか受け流すことには成功したけれど、その力がそのまま〈悪性不許浄潔円環〉とケイン王子の結界を一気に破壊した。それでも溢れ出た力が他の人たちにまで届くほどだった。


「ちっ……!」


 私は急いで〈悪性不許浄潔円環〉を復旧し、ケイン王子も他の人たちと共にテシリタの破壊の余波を防御する一方でアルカと協力して再び浄化の結界を展開した。


 テシリタの力なら私たちがそう対応する前に次の攻撃をすることができただろうけど……彼女はついさっき自分が繰り出した拳を見下ろした。邪毒のせいでよく見えないけど、何か眉をひそめたようだった。


【……ふむ】


 何か気に入らないような呟きが漏れ出た直後、テシリタは目の前の私に向かって矢継ぎ早に手を振るった。


 ある時は拳。ある時は掌打。ある時は手刀。そして時には蹴りまで。弟のサリオンから学んだ極拳流のあらゆる技を繰り出し、叩きつけ、振り上げた。そのたびに圧倒的な力が破壊力を振りまいた。


 しかしその力が一定ではなかった。ある時は正面から受け止めても防げるほどの威力だったし、ある時は最初の攻撃と似たような水準でもあった。力の振幅があまりにもひどくて見当がつかなかった。


 自分の力を試しているのだ。


【まったく適応できぬものだな。急に存在の格と力が大きくなりすぎた上に、世界が絶えずオレを拒絶するのを突き破って力を発揮しようとすると程度を知るのが難しいのだ】


 そう言ったテシリタは指を曲げた。まるで獣が爪で引っ掻こうとするような姿勢だった。


 いや、〝ような〟ではなかった。


【ふぅむ!】


 テシリタの爪が一瞬漆黒の閃光を放った。


 大げさな動作で振るわれた爪の軌跡に沿って、世界に巨大な線が刻まれた。五つの巨大な爪痕が大地を、空間を、空の雲さえも引き裂いてしまった。


 文字通り世界を引き裂く爪痕。あまりにも広大な範囲と恐ろしい威力が私たちのすべての術式を破壊した。けれど力が適切に制御されなかったせいで狙いが外れ、私たちの誰にも直撃しなかった。のみならずテシリタ自身が噴き出していた膨大な邪毒さえ引き裂かれて一時的に空間が開いた。


 もちろん世界を引き裂くほどの威力は直撃しなくても余波だけで必殺の威力だったけれど……そもそもここまでの過程すべてが『バルセイ』でも見せていたパターンだった。


 つまり、対応方法も前もって決めておくことができたということよ。

読んでくださってありがとうございます!

面白かった! とか、これからも楽しみ! とお考えでしたら!

一個だけでもいいから、☆とブックマークをくだされば嬉しいです! 力になります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ