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『聖女』の力

「ではどうやって阻止すればいいのだ?」


 ジェリアの質問だった。


 当然出るべき質問だったので、答えもすでに考えておいた。

「昇天したテシリタはこの世界の存在ではなくなるわ。その時点からテシリタは異物となり、彼女の全てが邪毒獣以上にひどい拒絶を受けることになるのよ」


 そこまで言っただけなのに、聞いていた父上が「ふむ」と言って口を開いた。


「世界の外へ追放するということだね?」


「……さすが父上ですわね。いきなり核心を突かれるなんて」


「どういう意味?」


 一瞬で結論に飛躍したせいで、リディアをはじめ何人かはまだ理解できていない様子だった。


「昇天したテシリタは邪毒獣などよりはるかに強大な存在だわ。それゆえに世界が存在自体を猛烈に拒絶し、世界との繋がりが弱いの。時空の亀裂を近くで開いてしまえば外へ追い出されちゃうほどにね」


「邪毒神の分身を始末するのと同じだな。世界の反発を利用して戻れないように追い払うということか」


 ジェリアが整理してくれたおかげで説明の手間が少し省けたね。


 要点は今説明した通りだ。テシリタはすぐに人間の力では絶対に勝てない存在になるだろうけど、そのテシリタでさえ世界の法則を拒むことはできない。出口を開いてしまえばすぐに追い出されることになり、自力では二度とこの世界に戻ってくることができなくなる。それが『バルセイ』でラスボスのテシリタを倒した方法だった。


 ……ただしそれをそのまま再現するだけじゃ問題がある。


「でも結局テシリタは下位神のような存在になるんだろう。それなら内部から逆に再召喚することも可能じゃないのかな?」


 またしても父上が核心を突いてきた。


 そう、問題はその部分だ。『バルセイ』では状況自体が切迫して混乱していた。だから安息領でもテシリタが世界の外に追放された時の対策を準備できなかった。


 しかし筆頭が『バルセイ』の情報を知っていることが明白な今はこっちの戦略も当然読まれているはずで、追放されたテシリタを再び召喚する方法を準備しておく可能性が高い。


 もちろん昇天したテシリタは下位とはいえ神的存在となり、彼女の本体を再召喚することはほぼ不可能だ。そんなことができたなら、テシリタではなく筆頭の本体をとっくに呼び寄せていただろうから。しかし存在の一部を分身として降臨させるだけでも大きな脅威だ。


 しかしその前に、まずテシリタを一度追放することからが大きな難関だ。そしてそのためには……絶対に譲れないものが一つある。


「まず一つお願いいたします。テシリタとの戦いでは必ず私が先頭に立ちます。これは譲れません」


「テリア?」


 母上の眉がピクッと上下し、強烈な眼差しが私に注がれた。


 けれど今回ばかりは私も負けじと言わんばかりの気勢で応じた。


「昇天したテシリタはほぼ邪毒神に近い存在ですわ。しかも敵対的であることを考慮すると、過去に邪毒竜として降臨して自ら死を受け入れたイシリンよりもさらに大きな脅威です。母上は無限の邪毒を撒き散らす神を相手に私が立ち向かう以外の方法を提示できますの?」


「……それは」


 母上も、そして絶え間なく情報を検討し戦略を構想していたはずの父上もこの言葉には反論できなかった。

他の人たちも同じだったけれど、もう一度くぎを刺しておくために私はさらに言葉を続けた。


「『浄潔世界』の世界権能は無限に邪毒を浄化する肉体そのもの。つまり私自身の肉体に限っては、私は神が相手でも邪毒に侵食されません。言い換えれば、神的存在が撒き散らす無限の邪毒の前で生き残れる存在は私以外には存在しませんよ」


『バルセイ』でテシリタ討伐戦が厄介だった最大の理由がこれだった。


 端的に言えば、昇天したテシリタの力はバルメリアのすべての時空亀裂が完全に暴走した時の総和より大きい。テシリタの降臨だけで大陸が消滅したほどだったから。


 そしてその莫大な邪毒は生物と無生物を問わずすべての存在の接近を阻む。この世界でただ一人、私を除いて。


 でもこう言っておけば必ず反論が出るだろう。


「いいえ。お姉様だけを立たせるわけにはいきません。そんなことはできません」


 そう、こうやって。


 唯一強硬な調子でこの方針に反論できる存在。この場で、いやこの世界でそんな人はたった一人。アルカだけだ。


 彼女は私の前に立って自分の胸に手を当てた。


「私はすでに『万魔掌握』でお姉様の『浄潔世界』を習得しました。テシリタの前に立つための条件が『浄潔世界』なら、私もお姉様と同じように資格を持ってますよ」


「あなたが習得したのは『浄潔世界』の魔力だけよ。たとえ『万魔掌握』だとしても、〈浄潔世界〉を魔力消費なしで展開するのは不可能よ。魔力を消費しなければならないあなたが私と同じ線に立てると思う?」


「『万魔掌握』は自然の魔力をほぼ無限に利用できて、『浄潔世界』は浄化した邪毒を魔力に還元して使用できるでしょう。浄化に消費される魔力程度は補完できるんじゃないんですか? そもそも私が立ち向かえなかったのなら、お姉様が死んでた『バルセイ』ではどうやってテシリタと戦ったんですか?」


 良いところを突くね。


 確かにアルカの言う通りだ。アルカもテシリタを相手に最前線に立つ資格はある。


 しかしテシリタの邪毒を正面から受けて戦おうとすれば、莫大な邪毒を浄化しながら同時に魔力を変換し再び浄化に投資する過程が繰り返される。何も意識せずに邪毒を無視できる私とは場合が完全に異なる。


 実際『バルセイ』でアルカは自分のすべての力と制御力を総動員してテシリタの邪毒を受け止めるだけで精一杯で、ゲームでの戦闘はアルカを除いた残りのメンバーだけで進行した。


 その違いを説明する考えはもちろんあるけれど……そもそもアルカの反論も既に予想していたことで、当然答えも既に準備していた。

読んでくださってありがとうございます!

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