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強靭なる強敵

「ぐっ……!」


 負傷を収める余裕はなかった。


 ピエリは振り上げた剣をすぐさま反転させて振り下ろした。そして私がその一撃を双剣で防いだ直後、彼の足が私の腹に押し込まれた。突然の衝撃に私は息を吐きながら吹き飛ばされてしまった。


 私はすぐさま『万壊電』の権能で雷電となって再び突撃したけれど、その短い瞬間さえピエリにとっては欠伸が出るほどの隙間だった。


 刹那の瞬間をさらに細かく刻み取るような連撃がリディアに浴びせられた。


 リディアは損傷した左腕を〈爆炎石〉の義手に置き換え、『結火世界』の防壁と剣術で応じた。ピエリは防御を易々と突破し、リディアの左腕を肩から完全に吹き飛ばした。


 するとリディアは切り離された左腕の義手を爆発させた。


「ふむ!」


 ピエリは魔力で再生させた左腕で爆炎と衝撃波を押し返した。圧倒的な腕力と魔力が前を開き、すぐさま彼の剣が突進した。


 しかしその時すでにリディアは跳躍力と爆発の衝撃波を利用して後ろに飛んだ状態で、彼女がそこに残しておいた三つの〈爆炎石〉だけが輝いていた。


 その爆炎石が爆発する瞬間、雷電と化した私がピエリの間近まで接近した。


 ――天空流〈三日月描き〉


 ――リディア式射撃術奥義〈常進の一線〉


 爆発を無視してそのまま突進してきたピエリをリディアの魔弾が襲い、同時に後ろから私の斬撃が呼応した。


 ――蛇形剣流『倍化』専用奥義〈三輪牙〉


 ピエリの斬撃が三つに分かれ、彼の体の周りを回った。その魔力の輪に魔弾と斬撃が触れると軌道が曲がった。私たちの攻撃はそれぞれ異なる方向に飛んでいってしまった。


 それだけでなく斬撃の輪が私たちの攻撃の魔力を一部奪い、それによってさらに増幅された斬撃が私たちに向かって放たれた。魔力の刃のうち二つが私に、一つがリディアに。


 同時にピエリは私に向かって走ってきた。


 ――天空流奥義〈五行陣・水〉


 ――蛇形剣流『倍化』専用奥義〈一大牙〉


 先に発射された刃を私が吸収して凝縮することとピエリが強力無比な斬撃を放つことはほぼ同時だった。


 直後に私は凝縮した魔力を〈五行陣・木〉に転換した。斬撃と斬撃がぶつかり、猛烈な暴風が私とピエリを押し戻した。しかし私もピエリも魔力の破片が体を切り刻むのを意に介さず、さらに足を踏み出した。


「体の硬さが私より劣るくせに無理をするのではありませんよ」


「あいにく今この戦い自体が無理なのよ。勝つにはもっと無理をしなきゃ」


 刹那にも満たない短い瞬間に刃が三合を交えた直後。激突の場に残留した魔力が大きく膨らんだ。


 ――紫光技〈傷痕の残響〉


 増幅された魔力が巨大な力場を形成した。その力場がピエリを押さえ込み、反対側では斬撃を受け流すことに成功したリディアが発射した魔弾が飛んでいた。


 しかしピエリは〈傷痕の残響〉が敵味方の区別なく物理力の力場であることを見抜き、あえて力場の内側に足を踏み入れた。ラスボスの強靭な肉体と魔力が力場の力に耐えた。


 ピエリが力場の中に飛び込むことで力場が彼を包み込むような形になり、リディアの魔弾の力が力場のせいで減衰された。


 ピエリはその魔弾を左手で掴んで砕いた。


 ――紫光奥義〈侵食の祭壇〉


 ピエリが魔弾に対応している間に私は術式を転換した。力場の力を変質させ、万物を侵食して崩壊させる結界に変えたのだ。


 もちろんこの程度でピエリに致命傷を与えることはできない。せいぜいごくわずかに動きを遅くする程度の牽制に過ぎないだろう。


 もちろん大きな効果があるとは期待していなかったし――私がそう考えていることをピエリも知っていた。


 ――天空流奥義〈五行陣・土〉


 ――蛇形剣流奥義〈四蛇牙〉


 ――リディア式射撃術奥義〈造陽の弾丸〉


 私が周囲の魔力を全て掌握して操る奥義を使い、リディアは熱気で万物を侵食して焼き尽くす魔弾を放った。私の掌握力が〈侵食の祭壇〉をさらに強化しただけでなく、リディアの魔弾の威力も補助した。


 それに対してピエリが放ったのは四回の斬撃だった。


 一つ一つが最大限に増幅された斬撃で、蛇形剣流の特徴である不可思議な軌道の極限を描き出した。それが〈五行陣・土〉と〈侵食の祭壇〉の領域を引き裂き、魔弾ごと熱気を斬り払い、華麗に蛇行しながら私とリディアを同時に狙った。


 巨大な蛇のような斬撃の追跡は止まらなかった。速度と歩法で避けてもすぐに頭を回しながら追いかけてきたし、まったく反対側に逃げても同じだった。奥義級の斬撃で対応しようとしても、激突するとすぐに弾き飛ばされた後また戻ってきて私を狙った。


 しかも〈四蛇牙〉は放たれた後は自ら動いて敵を追跡する奥義。ピエリはすでに斬撃とは別個に動いていた。あくまでも私に向かって。


 すでに知っている技、というよりも『バルセイ』で見た連携。ラスボス戦で最も厄介だったパターンだった。事実上ピエリの必殺技と言っても過言ではない。


 これを繰り出すのを待っていたけれど、安心することはできない。


 対応策は考えておいた。しかしそれを成功裏に遂行できるとは断言できない。知っていることと実行することは別物で、相手はこれまでの中でも最も厄介な敵なのだから。


 もちろん萎縮するつもりはない。準備はすでにできているのだから。

読んでくださってありがとうございます!

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