過去と信念
「……そうでしょうね」
別に期待はしていなかった。
ピエリが変節してからすでに三十年以上が経っている。すでに苦悩も後悔もすべて経た後、心が固く凝り固まってもなおお釣りが来るほどの時間だ。決心も悩みも今更揺らぐほど浅はかなものではないだろう。
それでも言わずにはいられなかった。
「それでも、あなたは長い間人々を守ってきたじゃないの。その人たちに刃を向けながら何も感じなかったというの? あなたの献身はすべて嘘だった?」
「無駄な話をしていますね。今さら遅すぎる説得でもするつもりですか?」
ピエリは強い力で私を吹き飛ばした。その直後、突然現れて襲いかかってきた蛇たちが私の手足を縛った。
単なる物理的な束縛ではなかった。蛇一匹一匹に魔力を封じる力が込められた拘束術式だった。
正直、力で振り払えないほどではない。しかし私を拘束したピエリの方に攻撃の意思がなかった。むしろ会話を続けようとする様子が見えたので、私も一時抵抗を止め、眼差しだけで彼を睨みつけた。
ピエリはそんな私を見て何を思ったのか、目を細めて遠くを見つめた。
おそらく今彼が見ているのは目の前の光景ではないだろう。物理的な距離よりはるかに遠い過去が彼の視線を奪っているということを、わざわざ聞かなくてもわかった。
「……何も感じなかったとは言えませんね。過去に騎士として努力したのは私の本心でしたから」
ピエリは自分の左手を見下ろした。
長い間民衆の敵たちの血で染まり、今は守ってきた民衆の血で染まってしまった手を。
「報いを求めたことはありませんでした。私の変節が知れ渡ってから、私の心理を勝手に推測し捏造した新聞記事も見ましたが、そんな連中の浅はかな主観で覗き見られるほどの俗物性は私にはありませんでした。むしろそんなものがあれば、まだ楽だったでしょうがね」
新聞記事か。私も見たことはあった。ピエリが報酬をもらえなかったから裏切ったとか、欲しいものを与えられなかったから騎士を辞めたとか。
正直、半分以上は彼を単なる刺激的なゴシップネタとして消費しているに過ぎなかった。しかし大衆とは時に真実よりもそういった刺激にしか目を向けない者たち。目の前に上手く編集された〝真実〟があれば、それが本当に事実かどうかなどはそれほど重要ではない。
しかしピエリはそういったこと一つ一つに一喜一憂する者ではなかった。
「以前の私なら気にもしなかったでしょう。むしろ私が道化となることで人々に笑いを与えられるのなら、喜んでそんな立場を買って出たでしょう。しかしアルキン市防衛戦以降、私の視線も変わりました」
ピエリの目に怒りが宿った。
何も感じなかったわけではないが、その怒りが向かうのは自分が事実とは異なる非難を受けているという点ではなかった。
「この国の民はもうダメなのです。四大公爵家が与える恩恵に安住することも、世の中の真実を見ることなくただ気分よく編集された現実だけを楽しむことも、結局は同じ文脈です。この国の民には自分の主観で真実を把握し判断することはもう不可能なのです」
すでに知っていた事実だった。ピエリはこの国の支配層の……正確にはフィリスノヴァ公爵と王家によって被害を受け、それを民衆が見て見ぬふりをするのを見て変節を決意したのだから。
彼はそのすべての原因が四大公爵家と王家の支配体制そのものにあると考え、それを覆すことでこの国を変えることが目標だけれど……前世の記憶がある私としては正直残念だ。四大公爵家がなくても、この国の支配体制が違っていても民衆というのはさほど変わらないということを前世の歴史で知っているのだから。
しかしそれを説明する方法もないし、説明したところでどうせ意味もない。
「だからといって、人々の犠牲を引き起こすことに躊躇いがないのは人間として失格だわ」
「以前は私にも躊躇いがありましたが、もうすべて終わりました。どうせこの国の民はもう取り返しがつきません」
「もっと平和的な方法を選ぶことはできなかったの?」
「そうするには長い年月をかけて教育と啓蒙が必要でしょう。ならばその長い年月の間、今の民だけでなくこれから生まれる子供たちまで苦しむでしょう。そんな様子を見ているくらいなら、むしろ今の民を犠牲にしてでも未来の子供たちを救うつもりです」
「よく言うわね。あなたのせいで父や母を亡くして生まれもしなかった子供たちの前でもそう言えるのかしら?」
その言葉にはピエリも眉をひそめるだけで、きちんと答えることはできなかった。かといって自分の道を曲げるほどではないだろうけど。
『バルセイ』でも彼が自分の信念を語る部分はあった。アイロニーなことに、彼は変節しながらも人のために尽くすという根本は変わっていなかった。ただ悲劇的な出来事を経験したせいでその思想が極端に走り、その結果今を見られなくなっただけ。
もちろんだからといって彼が悪でなくなるわけではない。彼自身は自分を必要悪くらいに思っているかもしれないけど、彼がしようとしていることはただ自分の憤懣を血にて洗う悪行に過ぎない。
だから同情も参酌もするつもりはないけど……胸の中から湧き上がる感情が一つあった。
「……羨ましいわね。間違っているとはいえ、まだ信念を語れるなんて」
「何ですか?」
思わず漏れ出た言葉だった。ピエリは理解できなかったように問い返したけれど、私はその疑問に答えなかった。
少し前の私ならこんな感情を感じる理由に気づかなかっただろう。いや、そもそも感じもしなかったかもしれない。
しかし今の私は理解していた。こんな感情を感じる理由も、……これから私が何をすべきなのかも。
もちろん今はそれを後回しにしなければならない時だ。
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