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激戦の真ん中

 ピエリは私の行動を警戒しながらも、隙なく魔力を集中した。砲火を食らって膨れ上がった蛇の群れの半分ほどが彼の剣に集まってきた。


 その瞬間、私は動いた。


 ――テリア式邪術〈驕慢の視線〉


 ――天空流奥義〈五行陣・土〉


 周辺一帯の魔力を完全に掌握し、私の手足とする奥義が蛇の群れを束縛した。


〈驕慢の視線〉の権能まで加えて、本来なら絶対的な優位を誇ったはずの奥義。それでもピエリの支配力を完全に無力化することはできず、ただ魔力の蛇たちを停止させるのが限界だった。しかし蛇たちを吸収して攻撃に活用しようとしていたピエリの意図を阻止するには十分だった。


 私はすぐさま五行陣を転換した。


 ――天空流奥義〈五行陣・水〉


 掌握し支配するのではなく、完全に強奪し凝縮することにのみ特化した奥義。自由度はないけど、魔力を奪い集束させることにのみすべてを集中する奥義であるため、今回は通じた。


〈蛇の檻〉が生み出したすべての蛇たちが一瞬にして私の剣に吸い込まれてきた。


 そして一撃。


 ピエリが吸収し凝集させたすべての魔力が私の一撃となった。単純で絶対的な威力を放つ刃をピエリは剣で防いだ。


 速度も力も依然として優位。けれど〈五行陣・水〉が膨大な魔力を吸い込んで作り出した鋭さはまさに想像を超えるものだった。


「むっ!?」


 ピエリの剣の方が魔力に耐えきれずにぽっきりと折れ、刃の勢いがそのまま彼の胸元を切り裂いた。


 剣身が切断される瞬間にピエリが後ろに半歩下がったため致命傷には至らなかった。けれど剣を失い、軽いとはいえ膨大な魔力が込められた刃による傷は簡単には治らない。それが彼の隙となった。


 それでもピエリの対応は迅速だった。


 ――『倍化』専用技〈長さ倍化〉


 ピエリは魔力を薄い膜のように凝縮させた左手の掌で私の剣の側面を押して一撃をいなし、折れた剣に『倍化』の魔力を集中させた。『倍化』の権能が剣の長さを伸ばすように魔力の刃を形成した。


 折れた形状のまま長くなったため突きには適していなかったけれど、斬るためならば問題なくなった剣が私の肩を狙った。


「ふん!」


 私は斬撃に対応しなかった。ただリディアを信じて攻撃を続けるのみ。


 リディアが放った支援射撃を飲み込もうと魔力の蛇が現れたけれど、継続中だった〈五行陣・水〉が蛇を吸い込んだ。リディアの魔弾がピエリの剣を弾き飛ばし、その間にさらに突っ込んだ私の剣がピエリの右脇腹をかすめた。


 狙いが外れたわけではない。ピエリが体をひねって致命傷を避けたのだった。


 このままリディアの支援射撃とともに攻勢を続ければピエリを追い詰められる――という安易な考えはさすがにしなかった。


「面倒ですね」


 ピエリの対処法は単純明快だった。


 支援射撃が邪魔ならば、支援射撃が届く前に行動を完遂するほどの速度で先んじる。ラスボス化した彼だからこそ可能な暴論を実現したのだ。


 リディアが一発撃てば、その一発が近づいてくる間に剣と手を五回は振るった。そして魔弾を弾き飛ばしてまた私への攻撃を続行した。リディアが瞬時に数多くの魔弾を雨のように浴びせかけても彼の対応は変わらなかった。


 そうこうするうちに彼はさらに変奏を加えた。突如『倍化』の力で分身を作り出して側面を狙ってきたのだ。


 私がそれに対処するとピエリはすぐさま分身を消し去り、自身の力と速度を二倍に増して攻撃パターンを変化させた。そしてそれさえも対応してしまえば今度は再び身体能力を元に戻し、蛇のように軌道が華麗な剣術で攪乱した。その最中に突如速度が三倍に倍化された奇襲が私の肩口を浅く切り裂いた。


 蛇形剣流の変幻自在な剣術と『倍化』の力を積極的に加減する方式で具現化する技巧の極限。ラスボスの絶対的な力を得たにもかかわらず、依然としてピエリは自分の最大の長所を捨てず、それが彼をより脅威的な存在にしていた。


 その猛攻に耐え抜いたのは、ひとえに〈五行陣・水〉で凝縮した膨大な魔力量の差のおかげだった。


「はあっ!」


 ピエリが少し大きく剣を振るった瞬間、それを弾き飛ばして作り出した隙を利用して地面に剣を力強く突き刺した。そして剣に集束されたすべての魔力を解放した。巨大な魔力の爆発とともに〈蛇の檻〉が砕け散った。


 ピエリが左手で爆発の衝撃波を払いのけ、私に突進しようとした瞬間だった。


 ――『灰色の猿』専用結火剣術〈紅蓮の鎖〉


 大きなマチェテを掴んだリディアがピエリの後方を奇襲した。


 ピエリの剣撃は強力だったけれど、リディアはすでに始祖武装『武神の指輪』の力で剣の性能を極大化していた。一撃では力で劣るはずだったけれど〈紅蓮の鎖〉の連鎖爆発がピエリの一撃を防ぎ、その間に『アーマリーウィング』から飛び出した銃口が火を噴いた。十六発の魔弾がピエリの全身に叩き込まれた。


「悪くはありませんが、全然足りません」


 ピエリは『倍化』の力で身体の強度と防御力を極大化することだけで魔弾の砲火を受け止めた。


 リディアは近接と魔弾を併せ持つ猛烈な攻勢を仕掛け、私はそんなリディアに呼応しながら鋭く致命的な剣撃を何度も振るった。しかしピエリはそのすべてに対処し、時折繰り出される反撃が私やリディアをかすめた。


 でもラスボスピエリでさえ、私たちに致命傷を与えられるほどの攻撃を振るう隙はなかった。


 状況をこのまま続けても勝算は乏しい。けれど簡単に敗北するほどでもなく、ピエリとしても引き延ばされるのは望まないだろう。


 そのため状況を変化させる一手を考え、それを実現するために同時に動いた。

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