打開を狙う目
――ピエリ式白光奥義〈蛇の檻〉
それは巨大な結界だった。
領域を区分するけど、空間を隔絶したり強制したりする力はなかった。ただより直接的で物理的な方式で空間を隔離する術式だった。
数千数万の棘が肌を刺すような感覚を覚えた瞬間、周囲で数多くの蛇の頭が顔を上げた。
魔力で作られた蛇の群れ。それらは私を攻撃もしたけれど、ほとんどは私じゃなく他のものを噛みちぎり飲み込んだ。
それは魔力だった。
――リディア式射撃術〈爆散の射線〉
リディアは魔力を吹き飛ばすのに特化した射撃を放った。
魔弾は壮烈に爆発しながら蛇の群れを吹き飛ばした。魔力を食う蛇もその威力には耐えられなかった。
しかし爆発した魔弾と壊れた蛇の魔力はそのまま残留し、新たに現れた蛇の群れが残留魔力を瞬く間に食い尽くした。すると爆散する直前よりもむしろ蛇の数が増えていた。
「まずは落とすことにしましょう」
ピエリは今の私の目でも追えない速度でリディアの後ろに移動した。
「!?」
リディアの反応は早かった。けれど後ろを振り向きながら『アーマリーウィング』で防御を構えるまでが彼女の限界で、振り下ろされるピエリの剣に耐えるのは不可能だった。
固有武装の異常な硬さのおかげでかろうじて直撃を防いだだけ。すさまじい威力がリディアを地面に落下させた。
「きゃああっ……!」
落下したリディアはすぐに体を起こした。そんな彼女に瞬時に接近したピエリが再び剣を振るった。
その瞬間私は魔力の蛇に噛みつかれるのも構わずピエリに突進した。剣と剣がぶつかり合い、衝撃が一瞬周囲の蛇を吹き飛ばした。しかし飛散した魔力を食い尽くした蛇たちが再び数を増やした。
「本当に二人で私を制圧できると思ったのですか?」
「もちろんよ……!」
ピエリは嘲笑を含んだまま剣を振るった。
魔力が巨大な蛇の形を描いた。いや、この大きさと威容はもはや蛇ではなく竜だった。
前世の世界で言われていた東洋の竜のような一撃が私を襲ったけれど、私はそれを始祖武装『天上の鍵』で防いだ。魔力がほぼ全部集中された剣身が巨大な蛇を割った。しかし余波だけでも体がずたずたに裂け、血が飛び散った。
私がその一撃を受け止めたおかげで後方のリディアは無事で、魔弾を撃つ余裕ができた。けれど彼女が放つ魔弾はすべて魔力の蛇に食われてしまった。
「ほう。この結界の特性を見抜いて剣身に魔力を集中させたのですか。対処法を素早く思いついたのですね。確かにこの結界は物に注入された魔力を奪う能力は強くない。ましてや始祖武装なら干渉は不可能でしょう」
そう言いながらもピエリはリディアの方を見て目つきで弧を描いた。決して友好的ではない微笑みだった。
「ですがそちらのリディアさんはダメですね。魔力を凝縮して作り出した魔弾など良い餌食に過ぎません。おまけにあなたの攻撃手段は魔弾と爆炎のみ。相性が余りにも悪すぎるのです」
「そんなことなんかわかってるよ……!」
リディアは強く言いながら『アーマリーウィング』をそのまま振り回した。硬くて強力な固有武装の本体が巨大な鈍器となって周りの蛇たちを破壊した。しかし絶え間なく再生成される蛇たちを一掃するほどの力はなかった。
一方私は無数の蛇に噛みつかれるのを歯を食いしばって耐えながら剣を振るった。
ピエリの一撃に耐えて負ったダメージは大きかった。再生の魔力で体を素早く回復させようとしたけれど、魔力の蛇たちはそれさえ奪っていった。それでも耐えられたのは蛇たちが再生の魔力を奪うよりも私の再生速度の方が速いおかげだった。
もちろんそれ以外にも打開策はある。
「リディア! 前後考えずに全力で撃ちまくって!」
私がそう叫んだ瞬間、リディアは他のすべてを置いて即座に無数の兵装を展開した。瞬く間に無数の魔弾が装填された。
その瞬間ピエリは眉をひそめると後ろに少し下がった。魔力は届くが刃が直接届くにはやや遠い程度の距離だった。
私とリディアを見つめる目から嘲笑が消えていた。一抹の油断も感じられなかった。
……素晴らしいね。
普通ならリディアが全弾発射しても、この結界で吸収すれば良いと考えるだろう。けれどピエリは私があえてそんな指示を出したことに理由があるだろうと即判断し、私の手を警戒する態度を取ったのだ。
その判断は正しい。そもそも私は〈蛇の檻〉のことをすでに知っていたのだから。
この結界は『バルセイ』でラスボスピエリの重要なパターンの一つだった。ゲームでもとても攻略しにくいパターンで、クリアするためには必ず乗り越えなければならない壁だった。そのためこのパターンを突破するためのプレイヤーたちの研究もとても活発だった。
その中でも私が選んだ方法は、真のゲーム廃人たちだけが選んだ極端な方法。
――リディア式射撃術『結火世界』専用奥義〈太陽の無限なる恵み〉
『アーマリーウィング』が展開した無数の武装。それに加え、〈結火世界〉に存在するありとあらゆる爆炎の宝石と天空の太陽から〈爆炎石〉の砲台が生えた。
世界全体から降り注ぐ絶滅の砲火が炸裂した。
私とリディアを攻撃する蛇が消えた。世界全体が敵を滅ぼすために咆哮する轟音と、それを食い尽くそうと必死になる蛇の群れがぶつかり合った。蛇たちは砲火の勢いに一時押されるかに見えたけれど、その魔力を食い尽くしながら逆に数と力を増していった末に結局逆転してしまった。
リディアの砲火が止んだ時にはすでに〈蛇の檻〉の力が手に負えないほど大きくなってしまった状態だった。
ピエリの〈蛇の檻〉は吸収の上限のせいで自滅する中途半端な術式ではない。たとえこの〈結火世界〉全体を食い尽くしても自滅するどころか結界の大きさと力をさらに増すだけ。そのため本来ならこのように砲火を浴びせる行為はただの自殺行為に過ぎない。
相手が私じゃなければ、ね。
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