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太陽の砲火

「突然の急襲だなんて、まったく風流のないものをやってくれるのね……!」


「あいにく、そんなことを楽しむ段階はもう過ぎたのですよ」


 十回、二十回、さらに百回を超えて。瞬時に繰り返される剣撃を余すところなく受け止めながら、反撃を繰り出す隙を探そうと目を光らせた。


 一合一合ぶつかるたびに衝撃が爆発した。周囲の溶岩など既にとっくに飛び散ってしまった。しかし衝突の余波はさらに大地を削り取り、私たちは砕かれて凹んでいく大地ではなく魔力の足場を踏みしめて戦った。


「見直しても感嘆に値する力ですね。今の私の剣をここまで追い付くとは」


 ピエリは消耗が感じられない傲慢な微笑みを浮かべた。


「ですが周りに何もない今は、私にも遠慮する理由はありません」


 ピエリはその言葉通り、徐々に剣の気勢を高めていった。極限の技巧に特化した蛇形剣流に力と速度まで加わると、全ての剣撃を完璧に受け止めるのは不可能だった。


 でも持ちこたえるのが不可能なわけではない。私の防御からこぼれる攻撃は致命傷にならない程度に体で受け、治癒と再生関連の特性を模倣して負傷を取り除く形で対処できるのだから。


 指示や協議はなかったけれど、あえて言葉で伝えなくても既にリディアが動いていた。


 ――『結火世界』侵食技〈結火世界〉


 周囲の風景が変わった。


 溶けて砕けてガラス化した大地が消え、固いが熱い赤い土の大地が足元に広がった。そして草や木の代わりに大地を飾るのは赤い宝石。太陽のような熱気を帯びた、いや熱気そのものが結晶化したそれは『結火世界』の魔力の塊だった。


 空いっぱいに明るく輝きながら燃え盛る太陽が熱気を吐き出す中、その太陽を背にして翼を広げたリディアがいた。


 ……ちょっと、翼?


 そのとき初めて私はリディアの武装である『アーマリーキット』も、始祖武装である『無限の棺』も見えないことに気づいた。


 その代わりに彼女の背中に並んでいたのは比較的細長い鋼鉄の棺の列。いや、棺というよりも柱に近いかしら。まるで翼のように広がったそれらから途方もない魔力が感じられた。


 その翼が燃え上がると、その一部が開いて機械仕掛けの部品が溢れ出た。


 ――リディア式固有武装『アーマリーウィング』権能発現〈太陽の進撃〉


 機械仕掛けと不可思議な炎が結合して無数の武器を作り出した。ほとんどは銃や大砲のような火器の形だったけれど、弓や巨大な弩のようなものもあった。


「信じて撃つよ」


 リディアの短い一言の直後、全ての武装が一斉に火を噴いた。


 ……固有武装まで既に覚醒していたっては思わなかったけど!?


『結火世界』の力が凝縮された無数の魔弾が台風の中の豪雨よりもはるかに圧倒的な勢いで降り注いだ。


 地上に向けた無差別的な絨毯爆撃が私とピエリを飲み込んだ。


「っ……!」


 ――天空流奥義〈万象世界五行陣・金〉


 確率観測と現実操作の権能を絨毯爆撃の回避にのみひたすら集中した。砲火の中でもピエリの位置と状態だけは見失わなかったけれど、協攻を成立させる余裕までは無かった。


 思う存分注ぎ込めと言ったのは私だったけれど、これは私が想定した以上よ……!


 生き残るだけでも大変な砲火だったけど、それだけにピエリにも脅威的だった。


「ふぅっ!」


 ――蛇形剣流『倍化』専用奥義〈五頭竜牙・昇天の舞〉


 斬撃の嵐が五つの竜の頭となった。


 昇天するように突き上がった頭々が舞いながら絨毯爆撃を飲み込んだ。頭の内三つが火力に耐えきれず霧散したが、その三つを犠牲にして進んだ二つがリディアに向かって大きく口を開いた。


 リディアは右腕を伸ばした。まだ展開されていない柱の内二つが斬撃の竜を狙った。その先が開き、太陽のように灼熱の魔力とともに巨大な魔弾が発射された。


 竜さえも一撃で貫く勢いで発射された魔弾と、全てを寸断する斬撃の竜。二つの激突は激しい魔力の爆発を残して相殺で終わった。


 その間に私は既にピエリに向かって剣を振るっていた。


 絨毯爆撃を除去するためにピエリがかなり広い領域をカバーしてくれたおかげで私の方にも余裕ができた。そしてピエリが奥義を放つ隙を突いて踏み込んで攻撃したのだ。


 しかしピエリは素早く剣を戻して私の一撃を防いだ。それどころか空っぽの左手から私に向かって魔力が噴き出した。


 ――白光技〈姦悪なる毒蛇の鎖〉


 無数の魔力の鎖が放たれた。その先は毒蛇の頭に変わっていた。


 私は鎖でできた毒蛇の群れを無視して体を突き出した。


 毒蛇数匹が私に噛みつこうとした瞬間、空から降り注いだ魔弾が毒蛇たちを正確に貫いて消滅させた。


「はあっ!」


 ――天空流〈三日月描き〉


 よほどの奥義さえ断ち切る斬撃を間近で放つと、ピエリは舌打ちしながら剣に魔力を集中させた。蛇形剣流から〈三日月描き〉と同質の斬撃が放たれ、二つの魔力が激突して砕け散る隙を私とピエリの剣が同時に掻き分けた。


 力と剣術の対決は依然としてピエリの優位。けれどリディアの砲撃の様相が変わった。広い地域をまるごと破壊する絨毯爆撃から、ピエリをピンポイントで狙って火力を集中する形へと。


 しかもピエリが剣を振るう瞬間に魔弾が彼の剣を叩きつけて軌道を歪めてしまう瞬間さえあった。


「煩わしいですね」


 小さいが非常に強力な魔力が凝縮された魔弾が飛んできた瞬間、ピエリはそれを左手で受け止めた。


 防御ではなかった。左手を適当に犠牲にしてリディアの射撃を無効にし、そうして得た刹那の瞬間を利用して私に向かって奥義級の斬撃を放ったのだ。


 私はそれを防いだけれど、力が強すぎるあまり受け流すことはできず、大きく後退せざるを得なかった。


 その間にピエリは左手を瞬時に再生した。さっき私がしたように、わざと体で受け止めて治療する戦略だった。


 直後、彼は魔力を展開した。

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