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筆頭の素顔

 オレは失敗した。


 オレの師匠は常に任務を遂行した後に無事に帰還しろと強調された。オレもそれを当然だと思っていた。性能の良い道具は使い捨てで終わってはならないのだから。


 一次的な任務目標は達成したが、このままではオレの命がここで終わるところだった。師匠の言いつけを結局破ることになったのだから、失敗した道具であるオレに怒りをぶつけても不思議ではない。


「申し訳ございません」


「そう、もっと申し訳なさそうにしなさい。今キミに怒っているんだからね」


 師匠は前に手を伸ばした。その指先から何の前触れもなく莫大な魔力が噴き出した。


「師匠…… 力を使われるのは……」


「キミは黙って叱られる準備だけしていなさい」


 敵が襲いかかってきたが、師匠の強大な魔力がすべて弾き返した。ただ魔力で障壁を張っただけなのに、まるで巨大な結界が一帯全体を覆ったかのような威圧感と魔力量が防御を超えて敵を制圧していった。


 師匠は魔力の壁が堅固であることをもう一度確認してからオレの方に向き直った。


 師匠の魔力がオレを優しく包み込んだ。ゆっくりとオレの体が宙に浮き上がり、頭が師匠と同じ高さまで上がった。オレが子供の体型なので足がかなり高い空中に浮いた感じになった。


 師匠の手がオレの胸に触れると、妙に暖かい魔力の気配とともに傷が急速に癒えていった。


「かなりの絶技だね。ワタシでさえ外傷を治すことはできても魔力の流れに残った傷は簡単には治せないよ。しばらくは大人しくしていなさい」


「申し訳ございません。任務を完璧に遂行できな……」


「それよりワタシの言ったことを正しく守る気さえなかったことを反省してもらいたいものよ」


 何を言っているのか理解できなかったが、師匠はオレを地面に下ろすと手を伸ばした。師匠の手がオレの大きな帽子を脱がせた。


「ワタシの帽子、ちょっと返してもらえるよ」


「師匠?」


 師匠は帽子を握っていない手を頭に持っていった。その手がそのまま師匠のフードを脱がせた。


 これまでオレ以外の人間の前で一度も晒したことのない素顔が現れた直後、いっそマント自体を脱ぎ捨てて全身が露わになった。


 溢れ出る金髪。眩しいほど真っ白な肌。師匠を敬愛してやまないオレの主観を差し引いて見ても、あえて超えるものはないと断言できる美貌。服装は今のオレの服装をそのまま大人用にリデザインしたような感じだったが、師匠の官能的な体つきのせいか印象がまったく違った。


 師匠はオレから回収した帽子を頭に被り、脱いだマントを魔力で操作した。マントが一塊になると一つに溶けて混ざり合いながら変形した。やがてマントは大きな水晶球に変わった。


「さあ。これからはこのワタシが直接相手してあげよう」


 声も魔力でいつも変調していた普段と違って今は師匠の本来の声だった。美しくも妙に神秘的な声だった。


「何の自信で直接現れたのかしら? もう力を直接使えないはずでしょう」


 テリアの奴が師匠の魔力の障壁の前に立った。彼女の〈選別者〉が撒き散らす威圧が師匠の魔力の圧迫を相殺していた。


 よく見ると倒れていたベティスティアをいつの間にか他の奴が回収して後退していた。シドと言ったか。


「力を使えば使うほど『隠された島の主人』が逆に力を使える余地を与えることになるのじゃなかったかしら?」


「あの奴の支援を期待しているのなら、諦めた方がいいよ。奴は来られないからねぇ」


 師匠の水晶球が小さく光った直後だった。


 ――神法〈魔法創造〉・〈暴君の視線〉


 師匠の前に複数の魔法陣が展開され、破壊の閃光が複数発敵を攻撃した。


 その攻撃で死んだ者はいなかったが、誰一人完璧に防ぎきれなかった。強力な威力に重傷を負うか、少なくとも武器が折れて押し戻されたのだ。


「くっ……!?」


「まぁ、これは教えても構わないから特別に言ってあげる。ワタシと『隠された島の主人』が互いに勝手に力を使えないのは、本質的にワタシも奴も世界の外の本体から力を引っ張ってきて使ったからよ。言わば邪毒を使うようなもので、力を使えば使うほど世界の均衡に影響が出る。『隠された島の主人』は崩れた均衡の天秤を戻す形で力を使ったというわけよ」


 師匠の水晶球がまた光った。


 ――神法〈魔法創造〉・〈神縛の鎖〉


 無数の魔力の鎖が一帯を完全に覆い尽くす勢いで噴き出した。


 敵たちは鎖に束縛されずに防御したが、鎖の力と量に耐えきれずに大きく後退した。すると師匠は鎖を操作して広い領域を占拠し支配する形で展開した。


「でもワタシは奴と違ってこの世界に肉体を持っている。だから邪毒ではなくこの世界の魔力を直接生産できるよ。量は途方もなく少ないけど、それを長い間集めれば使えるレベルにはなるからね」


「そのような手段を簡単に教えてもよろしいの?」


 テリアの奴が遠くからそう言った。師匠を挑発しようとしているのか、あるいは情報を収集しようとしているのか。


 師匠はふっと小さく笑った。


「どうせ奴なら見た瞬間に気づくよ。それに知っても真似できない方法だしねぇ。まぁ、こちらもこの力ではワタシの本来の力を正しく使うことは不可能だけど――」


 師匠の水晶球がまた光り、魔法陣が展開されて敵をさらに押し返した。


 いつの間にか確保された広い領域の中で師匠は鎖を操って、ピエリと他の八賢人たちを回収した。


 そうしながらも師匠は余裕で笑いながら言葉を続けた。


「ワタシの愛しい弟子のおかげで効率的な力の使い方もかなり研究されたからね」


「愛し……!?」


 師匠の口から想像もしなかった言葉が飛び出したせいで咳き込みそうになった。


 そんなオレの心を知ってか知らずか、師匠は強烈な視線を敵たちに向けた。


 収まるどころかますます強くなる怒りの気配とともに、師匠の水晶球が巨大な魔力を吐き出した。

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