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ピエリとの戦い

 ……それに特に絶望的な状況というわけでもないからね。


 ピエリに突進して剣を振るう。その過程で、懐にある魔道具を魔力で取り出して剣の軌道に置いた。自然と魔道具が剣で切られ破壊された。


 それをトリガーとして発散された〝信号〟にピエリが気づいたようだったけれど、彼が反応する前に私の猛攻が続いた。


 ――天空流奥義〈五行陣・火〉


 一瞬に圧縮された無限の猛撃。本来剣を振るうという行為で防ぎきれる攻撃じゃないけれど、ピエリはハイレースオメガの究極の身体能力に加え、自身の『倍化』で斬撃の数を増やす方法で完全に相殺してみせた。


 いや、すでに相殺を超えていた。


「っ!?」


 激しくぶつかり合う魔力の嵐を突き抜けて刃が飛び出した。すぐさま反応して避けたけれど、刃が首筋をかすめた。


 その瞬間危うく倒れそうになった。


 別に毒だとかそれに似た魔力のようなものが込められていたわけではない。ただ肌と刃がわずかに触れたその瞬間、あまりにも巨大で圧倒的な魔力を感じて体が自然と屈服しそうになった。


 それを量だけは負けない魔力と意志力で克服し、対抗するための最適な手を一瞬で演算する。


 ――紫光技特性模写『倍化』・『無限遍在』


 ピエリとケイン王子の特性を模写。私自身のすべての能力を三倍に増幅させ、私と同等の力を持つ分身を作り出した。


 分身と私、合計八人が四方から襲いかかる状況でもピエリは平然としていた。


「見え見えの手ですね。これが貴方の全てのはずがありませんでしょう。次の手を期待します」


 ピエリは余裕の笑みを保ちながら剣を振るった。


 余裕すぎるあまり殺気すらほとんど込められていない攻撃。それでも比類なく鋭く速かった。七体の分身が瞬時に両断され、最後の一撃を本体である私自身がかろうじて防いだ。衝突の轟音と衝撃波が周辺一帯を荒らした。


 ――紫光技〈虹の熔鉱炉〉


 両断された分身たちが一斉に溶け出した。分身を形作っていた魔力すべてが紫光技の力で様々な特性を帯び、それが混ざり合って大爆発した。


 直接的な攻撃はもちろん、精神に干渉したり法則をひっくり返したりなど、ありとあらゆる権能が混ざり合った魔力の牢獄だったけれど――。


「紫光技なら当然使える戦術ですね。六十点です」


 ピエリの一撃が魔力を払いのけた。


 傷一つなく現れた彼の次の攻撃が私を直接狙った。


 刃が私の体を切り裂いた――と見えた瞬間だった。


「魔力の幻ですか」


 ピエリは虚像が魔力に変わって散るよりも早く体を回した。空中に舞う魔力を踏んで彼の後方を狙った私だったけれど、振り返った彼の剣が奇襲を易々と防いだ。


「さぁね、全て幻なのかしら?」


 もう一度八人の私がピエリに襲いかかった。


 一部は虚像、一部は分身。そして本体である私を含めたすべてが周囲のありとあらゆる器物、あるいは舞い散る魔力、あるいは魔力で固めた空気を踏んで飛び回った。天空流の得意とする空中機動に分身まで重なり、目を惑わすには格好の手段だった。


 本来ならラスボスとして覚醒したピエリには通用しそうにない小細工だけれど、今の私なら違う。


 ――天空流奥義〈五行陣・金〉


 ――テリア式邪術〈怒りの態勢〉


 ――紫光技〈死が沈んだ刑場〉


 分身たちを媒介に巨大な魔力を展開し、それを基盤に敵を束縛して殺す術式を展開した。束縛に特化した特性まで模写して。


 今のピエリには一瞬動きを止める程度の効果しかなかったけど、その刹那の瞬間に私と分身たちが一斉に斬撃を放った。


「ふっ!」


 ピエリは短い気合とともに力で束縛を破壊し、少し遅れたなどまるで何でもないかのようにそれ以上の速さですべての攻撃を打ち払った。


 しかし束縛を振り払っても私の攻撃に対応するために力を発揮しなければならず、それはごく短いけれど確かな隙となった。


 彼の攻撃を防ぐのに私は守勢に追い込まれたけれど……そもそもピエリの隙を突くのがあえて私の役割である必要はない。


 ――アルカ式天空流奥義〈暴政の太陽〉


 こちらは距離という概念を無意味にするのには世界一の御方を父に持っているのだから。


 ピエリの頭のすぐ上で突如として転移門が開き、巨大な魔力の塊が彼に向かって降り注いだ。


 天空流の〈太陽描き〉にアルカの『万魔掌握』の力が混ざった奥義。本来魔力の破片を太陽風のように撒き散らして周囲を攪乱するのが〈太陽描き〉だけど、アルカの〈暴政の太陽〉は攪乱を超えて周囲の魔力をことごとく奪い取る。


 ピエリの体から魔力を抜き取ることは不可能だけど、周囲に撒き散らされた魔力はすでにすべて〈暴政の太陽〉を増幅させる養分となっていた。


 それに加えて私も分身たちとともにピエリを攻撃しかけた。


「悪くありませんね」


 ピエリは右手の剣で〈暴政の太陽〉を直接防ぎ、空っぽの左手に魔力を集中させて私の攻撃を防いだ。そして『倍化』の力で自分自身の〝数〟を一つ増やして作り出した分身で私の分身たちを瞬時に屠った。


 けれどピエリの分身が本体である私を攻撃する瞬間、突如開いた転移門が分身の攻撃を飲み込んだ。


 ――ジェリア式狂竜剣流『冬天世界』専用終結奥義〈冬天の証明〉


 直後ピエリの分身のすぐ横に転移門が開き……予想より何倍も強力な応報が浴びせられた。


 ジェリアの最強の一撃に、先ほど転移門が吸収したピエリの分身の攻撃まで加わった一撃。それがピエリの分身を一瞬で薙ぎ払い、ピエリ本体まで狙った。


 ピエリもそれには脅威を感じたのか眉をひそめると、新たに作った分身に〈暴政の太陽〉の防御を任せてから自らジェリアの一撃に立ち向かった。

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